国会でようやく政策論議がはじまった。ところが、2月4日の衆議院予算委員会で信じられない光景に出くわした。その日、テレビ放映はなかったが、今や国家審議はインターネットで見ることができる。
そもそも新聞やテレビは国会論戦では事前の配付資料がないために、重要な経済問題もほとんどスルーされ、面白い議論もほとんど報道されていない。その一方、たとえば「社会保障と税の一体改革」といった役所側から資料がもらえる話は、所詮政府内検討に過ぎず、ねじれ国会では成立可能性がないのもかかわらず、大々的に報道している。マスコミは政府の広報機関のようだ。
4日、柿沢未途衆議院議員(みんなの党)が与謝野馨経済財政担当大臣に対して質問した。与謝野大臣は、名目成長率に頼る経済は悪魔という発言をしているが、スウェーデン経済の名目経済成長率5%、インフレ率2%をどう思うかと聞いたのである。これに対して、与謝野経済財政担当相は「政治はインフレに頼ってはいけない」と驚くことにスウェーデン経済運営を否定してしまったのだ。
なぜか報じられないスウェーデンの「経済成長」
社会保障のモデルとしてスウェーデンはしばしば登場する。しかし、先進国の中でもスウェーデンがまともなマクロ経済運営によって経済成長をしていることには言及されない。
その一つの事例が、2008年9月に起こった世界金融危機への対応である。すぐに、スウェーデン中央銀行であるリクスバンクは、大胆な金融緩和を実施しバランスシートを3倍以上に拡大した(下図参照)。
中央銀行のバランスシートの拡大による通貨増(ベースマネー増)は、まずインフレ率予想の増加になって、実質金利が下がり設備投資需要が拡大したり、通貨安になって輸出が伸びたり、株式等資産市場が活況になり消費が増えたりする。ベースマネー増に対して物価はすぐには上昇せずに、遅れて上昇する。これを経済学ではラグという。
スウェーデンの場合、物価への効果のラグは1年ほどであり、上図のバランスシートの動きを1年だけに右に移行させると、物価の上昇とぴったり重なる(下図参照)。これを見ると、スウェーデンがデフレに陥らなかったことがわかる。
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