毎日フォーラム・ファイル:原発事故 難航する「指定廃棄物」最終処分場
2012年11月16日
建設候補地は、地形や地質、住宅や公共施設、農地からの距離などを点数化し、現地確認をして決定する。評価途中では公表せず、一つに絞られた段階で、横光克彦前副環境相が当該自治体に赴いて直接報告する方法を取った。自治体には当日か前日に連絡をした。横光前副環境相は、「省内でもさまざまな方法を検討したが、複数出した瞬間にどこでも反対運動が起こり、より調整が難しくなると考えられる」と説明した。
しかし、地元側は「寝耳に水」と、この方法に強く反発した。
9月3日に横光前副環境相からの突然の訪問を受け、国有林への最終処分場建設を提示された遠藤忠矢板市長は「風評被害で苦しんでおり、市民感情としてとうてい受け入れられない」と拒否した。同27日、同じく市内の国有林への建設を求められた高萩市の草間吉夫市長は「被災市なのに、なぜ決まったのか。市としては断固反対する」との姿勢を示した。
建設反対運動は激しさを増している。9月24日には、矢板市の官民一体組織「指定廃棄物最終処分場候補地の白紙撤回を求める矢板市民同盟会」が設立された。さらに10月10日、草間高萩市長が、矢板市の遠藤市長を訪れて会談。候補地の白紙撤回を求め、事務レベルでの情報交換など、共同歩調を取ることで合意した。
草間市長は「国がやりやすい方法を取れば、市町村は単なる国の下請け機関になる」と怒りをあらわにし、「矢板市より先に国から説明を受けることは一切考えていない」と話した。遠藤市長も「反対同盟とともに選考過程や安全性の問題を検証した後だ」と強調した。
建設地を提示できていない他県でも、事態は深刻だ。千葉県は柏市などで、焼却業務の一時休止が繰り返されている。打開策として千葉県は6月、焼却灰の一時保管施設を、我孫子市と印西市の市境にある下水処理施設内に建設することを決めた。しかし、地元住民らの反発が激しく、森田健作知事が細野豪志前環境相に「国が最終処分場を造るまで」との約束を取り付けたものの、地元合意のないまま建設工事に着工した。
環境省は「打つ手がない」状況だ。
最終処分場の建設は、放射性物質汚染対処特措法では住民同意を得なくても可能だ。しかし、細野氏からこの難題を受け継いだ長浜博行環境相は「強行に建設するような、受け入れ側を無視することはできない。時間と労力はかかるが、地元に丁寧に話をしたい」とあくまでも住民同意が前提との姿勢を示す。ただ、長浜環境相は「候補地を地元に伝えるタイミングが遅いと批判を受けたが、早く伝えれば解決しやすいわけではない。誠心誠意やる」と話すのみで、具体的な案は示せていない。