毎日フォーラム・ファイル:原発事故 難航する「指定廃棄物」最終処分場
2012年11月16日
◇15年3月までの建設にあせる政府、候補先地元は猛反発
東京電力福島第1原発事故の影響で、1キロ当たり8000ベクレル超の放射性セシウムに汚染された「指定廃棄物」。この最終処分場建設計画が、各地で行き詰まっている。環境省はこれまで、栃木県矢板市、茨城県高萩市に候補地を提示したが、地元側から猛反発を受け、全く先が見えない。工程表で示した2015年3月までの建設は、極めて難しい状況だ。
環境省の担当者は「安全面は保証できるので(最終処分場建設は)理解してもらえると考えていた。当初思っていたより厳しい」と頭を抱える。
指定廃棄物は、放射性物質汚染対処特別措置法に基づき、発生した都道府県内で国が処分する。8月3日現在、岩手=315トン、宮城=591トン、福島(旧警戒区域と旧計画的避難区域は除く)=3万1993トン、栃木=4445トン、群馬=724トン、茨城=1709トン、千葉=1018トン、新潟=798トン、東京=982トン、の計9都県4万2575トンが指定されている。
指定廃棄物のうち、1キロ当たり10万ベクレル以下は防水措置を施した上で、管理型処分場に埋め立てる。同10万ベクレル超の廃棄物は遮断型構造の処分場で処分する。最も量が多い福島県内では同10万ベクレル超は、除染後の汚染土壌などを一時保管する中間貯蔵施設に保管する。
環境省によると、1キロ当たり8000ベクレル超の廃棄物でも、埋め立て終了後の処分場周辺の住民の追加被ばく線量は、健康に対する影響を無視できるレベルの年0・01ミリシーベルト以下にできる。近隣住民については、200メートル四方で深さ10メートルの土地に1キロ当たり10万ベクレルの廃棄物を埋め立てた場合、70メートル離れた屋外で1日の20%(4・8時間)を過ごさないと追加被ばく線量は一般人の被ばく量の上限である年1ミリシーベルトを超えないという。
環境省は当初、指定廃棄物の処分は、既存施設の活用を想定していた。しかし、施設のある自治体や運営業者、近隣住民から理解が得られず、一時保管施設などに廃棄物が保管されたままになる状況が各地で相次いだ。
そのため今年3月、自前の処分場がなかったり、特に処分が行き詰まっている場合は、国有地などに12年9月までに建設場所を選定し15年3月をめどに建設する工程表を公表。現在、候補地を提示した栃木、茨城両県のほか、宮城、群馬、千葉の3県でも最終処分場を建設する方針を示している。