性同一性障害:性別変更、「父」と認めず 夫婦、即時抗告へ−−東京家裁

毎日新聞 2012年11月03日 東京朝刊

 心と体の性が一致しない性同一性障害のため戸籍の性を女性から変更した東大阪市の会社員の男性(30)とその妻(30)が、第三者から精子の提供を受けてもうけた男児(2)について、会社員を父と認めないのは不当だと訴えた家事審判で、東京家裁(松谷佳樹家事審判官)は31日、夫婦の申し立てを却下する決定を出した。夫婦は決定を不服として即時抗告する方針。

 会社員は08年、性同一性障害特例法に基づき性別を変更したうえで結婚。翌年、人工授精で男児が生まれた。出生届を出そうとしたが、実子と認められなかったため取り下げ、無戸籍の状態が続いていた。

 夫婦が今年1月、本籍のある東京都新宿区に改めて会社員を父とする出生届を出したところ、同区は職権で父親の欄を空白にした戸籍を作った。このため、夫婦は3月に戸籍の訂正を求める家事審判を申し立てた。

 決定によると、家裁は「会社員は特例法に基づいて男性に性別変更したので、男性としての生殖能力がないことは戸籍の記載から客観的に明らかで、嫡出子(実子)とは推定できない」と判断。このような夫婦の場合は「特別養子縁組をすれば、子の法的保護に欠けるところはない」とした。

 2日の記者会見で、会社員は「特例法で男として扱うことにしたのだから、父としても同じ扱いを受けたい」と述べた。【丹野恒一】

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 ■解説

 ◇「親子」明確化、法整備が急務

 民法772条は「妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する」(嫡出推定)と規定している。仮に実子としない戸籍を作ろうとするなら、嫡出否認の裁判を起こす必要がある。しかし今回の決定は性同一性障害で性別変更した父の場合は裁判をするまでもなく法的な父子と認めないとした。

 申し立てで夫婦が問題としたのは、生まれつきの男女の夫婦との違いだ。男性に不妊の原因がある場合に精子提供を受けて行う非配偶者間人工授精(AID)では、出生を届け出る際、AIDで生まれたと言う義務はないため、遺伝的つながりはなくても戸籍上は実子だ。一方、性同一性障害で性別変更した場合は、戸籍にそれが分かる記載があるため実子にならない。生殖医療と性同一性障害に詳しい石原理・埼玉医科大教授は「生殖医療の発達で、さまざまな家族のかたちが生まれている。親子関係を明確化する法整備を急ぐべきだ」と話す。【丹野恒一】

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