◇九州場所<13日目>
単独トップの横綱白鵬(27)=宮城野=が大関稀勢の里を一方的に押し出し、12勝1敗とした。14日目に白鵬が勝つか、ただ一人3敗となった平幕旭天鵬が負ければ、白鵬の4場所ぶり23度目の優勝が決まる。稀勢の里は4敗目。新横綱日馬富士(28)=伊勢ケ浜=は大関鶴竜に寄り倒され、3連敗で4敗目。鶴竜は勝ち越した。かど番大関の琴奨菊は関脇妙義龍に寄り切られて7勝6敗。かど番を脱した大関琴欧洲は関脇豪栄道に引き落とされ5敗目を喫した。
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右から張って稀勢の里の懐に飛び込むと、白鵬は矢のように鋭く前に出た。
4場所ぶり23度目の優勝に王手をかける一番は、やはり白鵬は強かったと思わせるに十分な会心の相撲だった。
14日目の結び前に鶴竜に勝つか、その前の取組で旭天鵬が負ければ優勝が決まる。まず逃すことはないだろうが、横綱はさらりと「(優勝が)近づいたというか、最近忘れましたから。何とも言えないけど」とはぐらかした。
「優勝が当たり前という思いはあるが、こうなると優勝がすべてじゃないとも思う。優勝って大変なんだ。何か自分で見つけて、取り組んでいかなくては」。そう語っていたのは今場所前。空白の3場所は自身を見つめ直す時間になった。
体調は決して万全ではない。11日目の朝から稽古を休んでいる。師匠の宮城野親方(元幕内竹葉山)は「風邪をひいていて、鼻がつらくて頭が痛いようだ。きのうも夜の10時にお風呂に湯をためて、足湯をして体を温めていた。昔から蓄膿(ちくのう)みたいなものもあるし。ほとんど横になっている」と説明。睡眠時無呼吸症候群の治療器具を使っているが、息苦しくなるので外しているため疲労も蓄積されていく。
日馬富士が目の前で4敗目を喫した。「多少ねえ、負けられないプレッシャーはあった。勝ててよかった」。体調不良であっても負けないのはさらなる成長の証し。「お酒は(日馬富士より)オレの方が弱いんだよ。吐く方(白鵬)かって」と場所前に冗談を言っていたが、相撲が強いのはやはり白鵬だった。 (岸本隆)
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