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「危険区域」に住宅次々 気仙沼市、“例外”認める
 | かさ上げや建物の基礎を高くすることで新築が認められた高橋さん=気仙沼市本吉町 |
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宮城県気仙沼市で、津波などの災害に備えて住宅建築を制限する「災害危険区域」に住宅を再建する動きが出ている。想定される津波の高さや住宅の構造によって、市が例外的に建築を認めているためだ。「住み慣れた場所に戻りたい」という被災者の要望は切実。ただ建築可能な地域の明確な線引きはなく、市には戸惑う市民から問い合わせも相次いでいる。
「ようやく元の場所に戻れる」。災害危険区域に指定されている気仙沼市本吉町大谷東地区で15日、自宅の上棟式を終えた高橋永二さん(55)が声を弾ませた。 想定される津波の高さは地面から約1メートル。震災前より40センチ盛り土し、70センチの基礎部分も設けることで建築が認められた。来年1月にも完成する。 地区には流失を免れた住宅が点在し、修繕して再び暮らし始めた住民も多い。市内の仮設住宅で母親(76)と暮らす高橋さんは「津波がまた来る恐れはあるが、知り合いが多く住み慣れた場所で生活したい」と語る。 市は津波のシミュレーションに基づき、防潮堤などを整備しても浸水する13.8平方キロを災害危険区域に指定し、居住用建物の建築を原則禁止した。ただ平地が少ないことから、浸水想定がおおむね1メートルを下回る地域では、かさ上げや、鉄筋コンクリート造りといった強固な構造などを条件に例外を認めている。7月の区域指定以降、既に4件を承認した。 宮城県内では、仙台市や名取市が危険区域内での建築を全面禁止。東松島市と山元町は危険区域(津波防災区域)を津波の高さに応じ3区分し、一定の高さや強度があれば新築を認めている。 地域区分なしに建築を認めているのは気仙沼市だけ。建築可能な地域は明示しておらず、市には「自分の土地は建築が可能か」「どんな構造ならばオーケーか」といった照会が続いている。 災害危険区域の指定は、個別移転の補助が受けられる「がけ地近接等危険住宅移転事業」などの前提となるため、市は全域一括で指定を急いだ経緯がある。 市は「生命と財産が守られることが最低限の条件。建築の可否は個別に相談してほしい」と呼び掛けている。
2012年11月22日木曜日
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