未解決問題のなかには、何百年経っても解決の糸口がつかめず、敬遠気味になってしまっているものもあるのだとか
今年9月、京都大学の望月新一教授が、長年の未解決問題とされていた数学の「ABC予想」を証明する論文をインターネット上に公開した。論文が正しければ、大きな功績となるだけにその動向が注目されている。
ところで、今回のように、学者が予想したまま未解決になっている数学の問題は他にもあるのだろうか? 『たけしのコマ大数学科』(フジテレビ系)などで解説をつとめる数学ライターの中村亨さんに聞いてみた。
「このような未解決問題は数多くありますね。有名なもののなかでは『コラッツの予想』や『ゴールドバッハの予想』などが分かりやすいのではないでしょうか。『コラッツの予想』は1937年に、『ゴールドバッハの予想』は1742年にその予想がされ、多くの学者が取り組んでいますが、いまだ証明には至っていません」
ここで少し数学の時間…。「コラッツの予想」とは、「1、2、3のような自然数に対して、(1)その数が偶数の場合は2で割る、(2)その数が奇数の場合は3をかけて1を足すという操作を考える。この時、どんな自然数nから始めても、出てきた値に応じて(1)もしくは(2)の計算を繰り返していくと、最終的に1に到達する」というもの。
「ゴールドバッハの予想」は、「6以上のすべての偶数は、2つの奇素数の和で表すことができる」というもの。6=3+3、8=3+5などがその例だ。(素数とは1と自分自身しか約数を持たない数のことで、奇素数は奇数の素数)。
「未解決問題のなかには、100万ドルの懸賞金がかけられているものもいくつかあり、それらは『ミレニアム懸賞問題』と呼ばれています。また、ポール・エルデシュという数学者は、存命中、様々な未解決問題に数ドルから1000ドルまで懸賞金をかけており、今でもその問題を解いた学者は遺産を管理する団体から小切手をもらえます」
今回の「ABC予想」は多額の懸賞金がかけられているわけではないが、「ABC予想」を証明できれば、その他の様々な未解決問題が芋づる式に解ける可能性が高いという。ただし今回は、望月教授の編み出した新たな概念を用いた証明になっているため、「検証には1年以上かかるのでは?」とのこと。
「専門誌などに論文を投稿した場合は、編集部で査読者を指名し、論文に誤りがないかを確認します。疑問点などがあれば投稿者と直接やりとりしていきますね。専門誌に投稿しない場合でも、類似のテーマの研究者が勉強会を催し、内容を吟味していきます。専門誌に掲載されても数年経ってから論文の間違いが見つかることもありますよ」
誤りが発見された有名な例は「フェルマーの最終定理」。1993年、300年以上にわたり未解決だったこの問題をアンドリュー・ワイルズという学者が証明したと発表したが、その後、論文の誤りを指摘された。しかし翌年にその誤りを修正した論文を再度発表し、見事に解決。発表してからも苦難は多いようだ。
とはいえ、論文を発表するまでには、何度も有識者と途中経過を確認するのが普通で、今回の「ABC予想」も解決にかなり近いことは確か。日本人学者の偉業達成を期待したい。
(有井太郎)
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