危険急傾斜地:広島市が宅地造成許可 「法規制なく」

毎日新聞 2012年11月24日 02時30分(最終更新 11月24日 02時49分)

造成許可が出された山林(中央)=広島市南区で、本社ヘリから後藤由耶撮影
造成許可が出された山林(中央)=広島市南区で、本社ヘリから後藤由耶撮影
急傾斜地崩壊危険箇所の崩落対策が長年放置されている山林(中央)=広島市で2012年11月4日、本社ヘリから撮影
急傾斜地崩壊危険箇所の崩落対策が長年放置されている山林(中央)=広島市で2012年11月4日、本社ヘリから撮影

 土砂災害で民家に被害が及ぶ危険があるとして、広島県が国の基準に基づき「急傾斜地崩壊危険箇所」として公表していた広島市内の山林に、同市が09年、宅地造成工事の許可を出していたことが分かった。県は03年に防災対策のための測量をしていたが、土地取引を巡って住民ら地権者間で訴訟に発展。事業が止まっている間に、地権者の一つの宗教法人が市に工事の許可申請をし、認められていた。急傾斜地崩壊危険箇所での宅地造成は法的に規制されないが、防災対策事業が始まった後の造成許可は異例だ。

 県などによると、土地は同市南区丹那(たんな)町の山林の一部約7ヘクタール。02年の全国調査で危険箇所として公表された。角度30度以上の斜面に全長約150メートル、高さ2.6〜19・4メートルのコンクリート擁壁を建設し、斜面下の約25戸を土砂災害から守る計画で、国から約250万円の補助金も支出された。

 しかし、防災対策を進めることを前提に地権者の住民から土地を寄付された宗教法人が04年、斜面に墓園(約0.5ヘクタール)を造成すると表明。07年には計画を変更し、斜面上部に新しい寺を建設する案を公表した。住民らは08年12月、宗教法人を相手取って土地の返還請求訴訟を広島地裁に起こした。

 県は03年に測量を済ませた後、造成工事を法的に規制できる「急傾斜地崩壊危険区域」に指定する準備を進めていたが、宗教法人の造成計画を受けて「地権者の同意が取れない」として事業を凍結。宗教法人は08年9月に造成工事を市に申請したため、住民らは提訴とともに造成計画に反対する請願書も市議会に提出。しかし申請は09年8月に許可された。市議会はその約4カ月後、請願を採択した。市側は県の防災対策を認識していたが、「法的に拒否できなかった」と説明する。

 訴訟は今年10月の最高裁判決で、住民側の全面勝訴が確定した。造成工事は事実上できなくなり、宗教法人は「今後の対応は未定」としている。

 崩落防止対策を求めてきた地元住民グループは「危険と判断された土地は造成させない仕組みがあれば、裁判もせずに済んだ」と憤る。県に改めて防災対策の実行を求める構えで、県砂防課は「要望があれば検討する」としている。

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