日本経済新聞

11月24日(土曜日)

日本経済新聞 関連サイト

ようこそ ゲスト様

コンテンツ一覧

書家、柿沼康二さんが「書」の魅力について熱い言葉で語る新コラム、11月27日(火)朝スタート。

東京ふしぎ探検隊

西武新宿駅はなぜ遠いのか 幻の東口乗り入れ計画

(3/4ページ)
2012/11/23 6:30
小サイズに変更
中サイズに変更
大サイズに変更
印刷
リプリント
共有

■西武新宿線の起点は高田馬場駅だった

西武新宿駅の線路脇には「2K」と書かれた杭が打ち込んである
画像の拡大

西武新宿駅の線路脇には「2K」と書かれた杭が打ち込んである

 悲運の駅、西武新宿。ホームを歩いていたら気になるものを見つけた。「2K」と書かれた杭(くい)が線路の横にあったのだ。この杭は距離標(キロポスト)といって、起点からの距離を示している。2Kは2キロという意味だ。発着駅なら「0(ゼロ)K」のはず。西武新宿駅は新宿線の起点ではないのか? 西武鉄道に聞いた。

 「新宿線の起点は高田馬場駅です。西武新宿駅よりも開業が早かったのです」

 旧西武鉄道が「東村山―高田馬場」間で開業したのは1927年(昭和2年)。当時は村山線と呼ばれていた。旧西武鉄道はその後、池袋線を運営していた武蔵野鉄道と1945年(昭和20年)に合併し、西武農業鉄道となった。翌46年には西武鉄道と改名する。

西武新宿線最大のターミナル、高田馬場駅。JR山手線、地下鉄東西線と乗り換えが可能だ
画像の拡大

西武新宿線最大のターミナル、高田馬場駅。JR山手線、地下鉄東西線と乗り換えが可能だ

 一方、西武新宿駅の開業は1952年。村山線では長らく高田馬場が発着駅だったため、戦後の新宿への延伸後も起点は高田馬場駅のまま変わらなかったのだ。

 駅の利用者数を見ても、高田馬場駅が新宿線最大のターミナルであることがわかる。西武鉄道によると、高田馬場駅の乗降者数(2011年度、1日平均)は約29万人。これに対し西武新宿駅は約17万人だ。やはり乗り換えの不便さが響いているようだ。ちなみに西武鉄道全体では池袋線の池袋駅が約47万人で最も多い。

■西武線の都心乗り入れが遅れた理由

西武線といえば黄色い電車。西武新宿駅が発着駅となっている
画像の拡大

西武線といえば黄色い電車。西武新宿駅が発着駅となっている

 西武鉄道の歴史について調べていたら、前出の鉄道愛好家、森口さんが興味深い話を教えてくれた。都心乗り入れを巡る秘話だ。

 西武鉄道は1983年(昭和58年)に地下鉄有楽町線との直通運転を始めた。1960年代から始めていた他社と比べ、都心への乗り入れはずいぶん遅かった。なぜか。先ほども登場した西武鉄道の元常務、長谷部氏が今度は雑誌「鉄道ジャーナル2007年1月号」でこんな裏話を披露している。

 「西武グループの創業者である堤康次郎、我々は”大将”と呼んでいましたが、大将と東急の五島慶太氏との確執が原因だったのです」

画像の拡大

 「都心乗り入れをすれば、なんらかの形で五島氏や、その息のかかった運輸官僚と関わることになります。五島氏が深くその設立に関わった営団と協議することすら、大将にとっては耐え難いことでした。ですから都心に乗り入れること自体が西武社内ではタブーでした」

 ではなぜ、方針が変わったのか。長谷部氏は続ける。

 「郊外鉄道と地下鉄各路線との相互乗り入れが具体化する中で、西武社内では『このままでは他社から取り残されるのでは』という別の危機感が徐々に生まれていったからです」

 同社はまず、地下鉄東西線との直通化を希望した。しかし東西線は既に中央線との話がまとまりつつあり、「当局から相手にしてもらえなかった」(長谷部氏)。曲折の末、実現したのが地下鉄有楽町線との直通だったという。

  • 前へ
  • 1ページ
  • 2ページ
  • 3ページ
  • 4ページ
  • 次へ
小サイズに変更
中サイズに変更
大サイズに変更
印刷
リプリント
共有
関連キーワード

新宿駅、西武鉄道、JR、東急電鉄、京王電鉄、プリンスホテル、ルミネエスト、京王百貨店、堤康次郎、五島慶太、駅探、ナビタイム、ヤフー

新路線計画が続々

変わる道路網

実は奥が深い「日本」問題

バブルに踊ったあの場所はいま

【PR】

【PR】

東京ふしぎ探検隊 一覧

西武線といえば黄色い電車。西武新宿駅が発着駅となっている

西武新宿駅はなぜ遠いのか 幻の東口乗り入れ計画

 日本一のターミナル、新宿駅。JRや私鉄、地下鉄が集結するこの駅で、ひときわ離れているのが西武新宿駅だ。なぜ、一路線だけ離れているのか。調べてみると、過去に何度か乗り入れ計画があったことがわかった。新…続き (11/23)

新宿駅北側にある「角筈通路」は旧青梅街道。数少ない東西通路の一つだが、狭い

構内に大空間 新宿駅、東西通路が変える人の流れ

 日本一の利用者を誇る新宿駅で、東口と西口を結ぶ「自由通路」の工事が始まった。構想から30年以上を経てようやく実を結ぶ大事業は、線路による東西の分断を解消し、人の流れを大きく変える可能性を秘めている。…続き (11/9)

JR新宿駅の南口(左)と建設が進む交通結節点(右)。中央を走る甲州街道の整備は最終段階を迎えている

新宿南口、線路上に巨大ターミナル 「大新宿駅」が実現

 1日の利用者が約340万人と日本一多い新宿駅で、大工事が進んでいる。南口では線路の上に人工地盤を設け、改札や広場、タクシーやバス乗り場を備えたターミナルができる。商業施設のある高層ビルも建設予定だ。…続き (10/26)

【PR】

モバイルやメール等で電子版を、より快適に!

各種サービスの説明をご覧ください。

TwitterやFacebookでも日経電子版をご活用ください。

[PR]

【PR】

ページの先頭へ

日本経済新聞 電子版について

日本経済新聞社について