日本一のターミナル、新宿駅。JRや私鉄、地下鉄が集結するこの駅で、ひときわ離れているのが西武新宿駅だ。なぜ、一路線だけ離れているのか。調べてみると、過去に何度か乗り入れ計画があったことがわかった。新宿の私鉄を巡る秘話を追った。
■西武新宿からJR、乗り換えに6~9分
西武鉄道の黄色い電車を降りて駅ビルから外に出ると、JR新宿駅が遠くに見えた。JR改札までゆっくり歩いて6分ほど。人混みの程度や信号によってはもっとかかるかもしれない。
乗り換え検索サイト、「駅探」で調べてみると、西武新宿駅からJR新宿駅までは徒歩7分。「ナビタイム」では8分、「ヤフー!ロコ」では9分だった。駅探では分速60メートルで計算しているといい、乗り換え距離は420mということになる。
なぜこれほど遠いのか。西武鉄道に聞くと「昔のことでよくわからない」とのこと。同社には社史がなく、過去のいきさつについては伝わっていないようだ。
何か手掛かりがないか。「鉄道未成線を歩く 私鉄編」(JTBキャンブックス)などの著書がある鉄道愛好家の森口誠之さんに尋ねたところ、西武鉄道の常務がかつて鉄道雑誌のインタビューで詳しく語っていることがわかった。
図書館で入手したその雑誌、「鉄道ピクトリアル」の1992年5月号増刊「特集 西武鉄道」では西武鉄道の長谷部和夫常務(当時)が興味深い話を披露している。一部を引用しよう。
■西武新宿駅は仮の駅だった
「西武新宿は当初仮駅だったのです」
長谷部氏によると、西武新宿駅はひとまず仮駅として設置し、駅前整備を待って国鉄新宿駅まで延長する計画だったという。
西武新宿駅が開業したのは1952年(昭和27年)。まずは現在の場所に簡単な駅舎ができた。この辺りには戦前、西武軌道という路面電車があり、新宿駅東口まで延びていた。国鉄への乗り入れは、この軌道跡を利用することになっていた。
1950年代後半になると、駅前の整備が進み始める。駅舎を取り壊し、「新宿民衆駅ステーションビル(現ルミネエスト)」の建設が始まった。西武はこのビルへの接続を予定していたのだ。新宿歴史博物館が編さんした「ステイション新宿」によると、鉄道はビルの2階に乗り入れ、改札も2階の予定だった。同館には当時の設計図の写真が残っている。
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