太陽の党と合併した日本維新の会が「野合」批判にさらされ、神経をとがらせている。両党の政策合意には、太陽側への配慮から、橋下徹代表代行が強くこだわってきた「脱原発」が明記されず、企業・団体献金の禁止にも経過措置が盛り込まれた。橋下氏は「国民の関心がある事項については完全に合意した」と強調して火消しに走り、衆院選の実動部隊となる地方議員の間では批判への理論武装が進むが、次々とトップダウンで決まる方向転換に、不満もくすぶっている。
■原発「石原氏も了解」
「小異を捨てて大同につく、と安易に使うが、小異ではないものまで捨てるのは野合だ」。民主党代表の野田佳彦首相は、維新と太陽の合併発表当日の17日、政策的な違いを抱える両党の合流を痛烈に批判した。
18日、札幌市内で開かれた維新擁立候補の出馬表明会見。政策合意から「脱原発」が抜け落ちていることに関し、さっそく記者から質問が飛んだ。
「原発の安全基準を厳しくし、電力自由化で他の発電コストを下げれば、必然的に脱原発に向かう」。同席した維新大阪市議は“模範解答”で切り返した。
「2030年代までの原発全廃」に意欲を燃やしてきた橋下氏は、原発再稼働容認としてきた太陽との合併後も「原発ゼロの表記は外したが、30年ごろに原発依存度は限りなくゼロになっていく」と強調する。
だが、維新の代表となった石原慎太郎氏は「原発反対の民意にこびたらポピュリズムになりかねない」と言及。ツートップの発言には明らかに温度差がある。
「外には『2030年代にはなくなる』と言ってほしい。安全基準強化については石原代表も了解していることを発信してもらいたい」。20日、維新大阪市議団の坂井良和団長は、市議たちに強く要求した。
■企業献金禁止も妥協
企業・団体献金禁止に関しては「経過措置として上限を設ける」ことが、合意文書にただし書きとして盛り込まれた。
企業献金の禁止は、既成政党との違いを強調する維新にとって金看板だった。橋下氏は9月の日本維新結党に向け、「特定の団体に縛られない個人献金型の政党を目指し、政治を劇的に変える」と高らかに宣言。このとき合流した国会議員たちは「火の車になる」と困惑しながらも受け入れた経緯がある。
この方針転換には、さすがに落胆の色も見える。維新地方議員の一人は「献金のしがらみがなく、既得権益に切り込むのが維新の売りだったが、昔からの議員がいる太陽に譲歩する形になった」と悔やむ。
■かすんだ“純化路線”
党分裂の深手を負い、逆風の中で衆院選を迎える民主党は、主義主張が異なる寄り合い所帯と批判を集めたことを教訓に、候補者公認にあたって「党議を踏まえて活動する」という文言を入れた公認申請書への署名を求める“純化路線”を打ち出した。その結果、消費税増税などに反対する鳩山由紀夫元首相が不出馬、政界引退を表明する事態に至った。
これとは逆に、大阪の地域政党から出発して“純化路線”を貫いてきた維新は、国政進出にかじをきってから「選挙互助会」「野合」との批判を浴びる。
維新大阪市議団幹部は「石原氏を必要としていた橋下氏が『許容範囲の妥協』と判断したのだろう」と理解を示すが、別の地方議員は「重要なことがトップだけで決められている」と疎外感を口にした。