警備局
大規模・無差別テロの惨状が日々報じられていますが、日本では、テロを「テレビの中の話」と考えている方も多いのではないでしょうか。しかし、我が国は決してテロと無縁ではありません。オサマ・ビンラディンとされる者の声明等で、日本は攻撃対象として名指しされており、アル・カーイダ関係者が国内に潜伏していた事実も明らかになりました。イラクや東南アジアでもテロが相次ぎ、邦人が犠牲となっています。今、テロの防止は国家の喫緊の課題であり、日本がテロ対策を講じる上で中心的役割を果たすのが、インテリジェンスと危機管理を担う警備警察なのです。
警備警察は、日本の社会体制を暴力で破壊する活動や、日本の国益を侵害する行為を防止・摘発し、国の安全と秩序を維持することを責務としています。その具体的な業務として、国際テロ組織・極左暴力集団・右翼等によるテロの防止、外国機関によるスパイ活動の摘発、要人の安全確保等を挙げることができます。また、万が一、テロや災害が発生した場合に、被災者の救助、住民の避難誘導、事態の鎮圧等に当たることも、警備警察の重要な任務です。そして、警察庁警備局は、警備警察に関する制度の企画・立案、情報の総合分析、都道府県警察の活動の調整等を全国的な見地から行っています。 昨今の厳しいテロ情勢を踏まえ、現在、警察庁警備局では、情報収集・追及検挙・警戒警備の3つの活動を柱として、様々なテロ対策を推進しています。例えば情報収集の分野では、平成16年に外事情報部を、昨年は国際テロリズム情報官を設置して体制を強化するとともに、外国機関や都道府県警察から得た情報、人工衛星の画像等を分析し、その結果を諸対策に活用しています。また、テロリストの発見・検挙や、原子力発電所・公共交通機関等の警戒警備は都道府県警察の業務ですが、警察庁はこうした活動に関し、捜査方針や部隊運用に関する指示、装備資機材の整備等を行っています。このほか、政府では、平成16年12月に決定した「テロの未然防止に関する行動計画」に基づき、テロの防止に必要な法制の整備に向けて様々な検討が行われています。警察庁は、テロの手法等に関する専門的知見を活かして、こうした新たな制度設計に積極的に参画しています。その結果、例えば、テロに悪用され得る核物質の防護対策を強化するため、平成17年5月に法律が改正され、原子力発電所等の職員等に守秘義務が課されるとともに、警察庁職員によるこれらの施設への立入検査等が可能になりました。 また、ひとたび緊急事態が発生すれば、警察庁警備局は一転して危機管理の現場と化します。私自身、新潟県中越地震、在イラク邦人人質殺害事件等への対応に従事しましたが、発生直後から、緊迫するオペレーション・ルームで情報の集約・分析を行うとともに、関係警察に対する部隊運用の指示、被災地や海外への部隊派遣の調整、官邸への状況報告、報道機関への説明等に奔走し、文字どおり寝食を忘れて事に当たりました。 このように、警察庁警備局は、「霞が関」と「第一線」の両面を兼ね備えた、大変やり甲斐のある職場です。国の安全と秩序に直結する事案を扱うだけに、常に正確な情勢認識と迅速・的確な判断が求められ、重い責任が伴うことも確かですが、自己の職責を全うすることができたときの喜びは一入です。国益を思い、見えざる敵と対峙する気概を持つ皆様を、心からお待ちしています。 |