藤田孝典委員(困窮者支援・NPO法人ほっとプラス)は、新しい支援機関の法的位置づけに関して、懸念を示した。新しい窓口に、生活保護開始を決定する権限が与えられなければ、困窮者を支援の枠組みに乗せることができないからだ。藤田氏によれば、このために必要なのは、福祉事務所に十分な人員配置を行うなどの機能強化である。この点に関しては、委員たちの間で議論となった。主に懸念されたのは、福祉事務所だけが強大な権限を持つ可能性である。
岩田正美委員(社会学者・日本女子大学)は、まず、資料に対して、
「私、『参加と自立』と言ってきたのに、『参加』が落ちています」
と指摘し、
「やる側・供給側の視点が強いです。自己決定を最優先させる理念をはっきりさせておかないと、お尻を叩いて自立させるだけになります」
と言う。なぜ、それではいけないのか。岩田氏によれば、困窮者は社会に参加できない状態が長く続いて自尊感情を失っていることが多いので、支援とは、自尊感情の回復プロセスを含むものでなくてはならない。
岩田氏が過去に行ったインタビュー調査の1つでは、施設にいる元ホームレスの1人が、
「何かメニューがあって、自分の知らないところで決められて、自分は今、ここにいます」
と語ったという。岩田氏は、新しい相談窓口が、そのようなものになる懸念を表明した。そして、困窮者本人による参加の重要性を強調した。
議論の中では、
「かつて、生活保護世帯の家計指導をケースワーカーが行なっていた時代があった。かつては本当に指導のためであったが、今は少しでも余裕があれば剥がすためになっている」
など、生々しい実態も語られた。委員たちは少なくとも、議論のプロセスの中で、このような事実を共有して結論へと向かっていた。