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生活保護のリアル みわよしこ
【政策ウォッチ編・第3回】 2012年11月22日
著者・コラム紹介バックナンバー
みわよしこ [フリーランス・ライター]

「新仕分け」で生活保護基準引き下げへ
保護費削減賛成派が知らない日本社会に及ぼす悪影響
――政策ウォッチ編・第3回

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 藤田孝典委員(困窮者支援・NPO法人ほっとプラス)は、新しい支援機関の法的位置づけに関して、懸念を示した。新しい窓口に、生活保護開始を決定する権限が与えられなければ、困窮者を支援の枠組みに乗せることができないからだ。藤田氏によれば、このために必要なのは、福祉事務所に十分な人員配置を行うなどの機能強化である。この点に関しては、委員たちの間で議論となった。主に懸念されたのは、福祉事務所だけが強大な権限を持つ可能性である。

 岩田正美委員(社会学者・日本女子大学)は、まず、資料に対して、

 「私、『参加と自立』と言ってきたのに、『参加』が落ちています」

 と指摘し、

 「やる側・供給側の視点が強いです。自己決定を最優先させる理念をはっきりさせておかないと、お尻を叩いて自立させるだけになります」

 と言う。なぜ、それではいけないのか。岩田氏によれば、困窮者は社会に参加できない状態が長く続いて自尊感情を失っていることが多いので、支援とは、自尊感情の回復プロセスを含むものでなくてはならない。

 岩田氏が過去に行ったインタビュー調査の1つでは、施設にいる元ホームレスの1人が、

 「何かメニューがあって、自分の知らないところで決められて、自分は今、ここにいます」

 と語ったという。岩田氏は、新しい相談窓口が、そのようなものになる懸念を表明した。そして、困窮者本人による参加の重要性を強調した。

 議論の中では、

 「かつて、生活保護世帯の家計指導をケースワーカーが行なっていた時代があった。かつては本当に指導のためであったが、今は少しでも余裕があれば剥がすためになっている」

 など、生々しい実態も語られた。委員たちは少なくとも、議論のプロセスの中で、このような事実を共有して結論へと向かっていた。

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みわよしこ [フリーランス・ライター]

1963年、福岡市長浜生まれ。1990年、東京理科大学大学院修士課程(物理学専攻)修了後、電機メーカで半導体デバイスの研究・開発に10年間従事。在職中より執筆活動を開始、2000年より著述業に専念。主な守備範囲はコンピュータ全般。2004年、運動障害が発生(2007年に障害認定)したことから、社会保障・社会福祉に問題意識を向けはじめた。現在は電動車椅子を使用。東京23区西端近く、農園や竹やぶに囲まれた地域で、2匹の高齢猫と暮らす。日常雑記ブログはこちら


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急増する生活保護費の不正受給が社会問題化する昨今。「生活保護」制度自体の見直しまでもが取りざたされはじめている。本連載では、生活保護という制度・その周辺の人々の素顔を知ってもらうことを目的とし、制度そのものの解説とともに、生活保護受給者たちなどを取材。「ありのまま」の姿を紹介してゆく。

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