“最後のセーフティネット”の意味を再確認した
「生活困窮者の生活支援の在り方に関する特別部会」
社会保障審議会・生活保護基準部会と、同・生活困窮者の生活支援の在り方に関する特別部会では、年内に結論を取りまとめる予定であったが、それら部会の結論提出は、衆議院選挙後、新政権の意向が明確になるまで見送られることとなった。11月15日、厚生労働省がそのような方針を明らかにしたからである。
Photo by Yoshiko Miwa
前日の11月14日、生活困窮者の生活支援の在り方に関する第10回特別部会が、東京都内のホテルで開催されていた。そこでは、セーフティネットのあるべき姿と実現の可能性が検討された。
第10回特別部会では、過去9回の議論の振り返りと追加の議論が行われた。当初、11月中に報告書がまとめられ、第11回特別部会で最終的な検討が行われる予定であった。議論は、予めまとめられた資料に沿って行われた。
まず最初に、新しい生活困窮者支援の基本的な考え方が議論された。
最初に、特別部会で議論していた新たな生活困窮者支援システムが、生活保護制度と相反するものではないことが確認された。さらに、両者を貫く理念の必要性が議論された。その理念とは、「人間が、人間として尊厳をもって暮らすことを支援する」というものである。新しいシステムは、既存の生活保護制度と有効に組み合わせられて、同じ目的のために総合的に機能するものである。このことは、生活保護受給者に強引な就労指導を強要することを意味しない。生活保護受給者でも、尊厳をもって精神的に自立した生活を営むことが可能でなくてはならない。もちろん、経済的自立ができれば、さらに望ましい。
委員たちの間から、異論はなかった、宮本太郎部会長(政治学者・北海道大学)も、その理念を報告書に含めたいと語った。
「自立しろ」と言えば自立できるのか
生活困窮者支援の難しさ
では、新しい生活困窮者支援システムは、具体的にはどのようなものだろうか。現在、公的機関に限っても福祉事務所(生活保護)・社会福祉協議会(貸付)・ハローワーク(就労支援)と3つに分かれている窓口を、1つに統合した新しい窓口である。生活困窮者は、健康問題・人間関係問題など、多様な問題を抱えていることが多い。多様な立場の専門家や支援者たちが関わり、1つの窓口で総合的な支援を行えるようにすることが目標とされている。