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今月の有料放送はハズレが多いです…が、「海賊ベラミーの財宝を探せ!」は秀逸でした。 何より、映像がいいよ! この番組は、実在した海賊「ブラック・サム・ベラミー」ことサム・ベラミーの短い生涯を紹介するとともに、彼の海賊船「ウィーダ号」の沈没という過去と、沈没地点の海底探索という現在を交互に描き出していくもの。 サム・ベラミーはイングランドの出身。当時、交易拠点として栄えていたプリマスの港に家族で引っ越した時から、彼の運命は海とともに流転することになります。 時は18世紀初頭、大航海時代からは少し外れているものの、「大海賊時代」真っ盛り。 クビになった海兵、私掠船を降りた船員たち… 技術と戦闘力を持ちながら国にお役ゴメンを言い渡されてクビになった海の男たちの多くは、生きるすべとして海賊行為を選びます。家柄も資本も誇れない若者たちにとっても、船乗りは手っ取り早く稼いで出世も出来る職業。そしてカリブは、新大陸へと向かう小型貿易船の集まる絶好の海賊スポットだったのです。 盛り上がってきましたね! ホーンブロワーシリーズなどを見慣れている人にはそれほどでもないかもしれませんが、船での生活や船ロケがいい感じでした。そして映像だけではなく内容もよく作ってあった。 海賊船では身分の上下は存在せず、皆が平等であり、進路や船長を投票で決めるという民主主義が機能していて、さながら一つの船が小国家のようだったこと。 華々しく思われる海賊ですが、栄養失調や不潔な生活から来る病、戦闘による死傷がつきもので、長生きは出来なかったこと。 儚く激しく生きる職業、それが海賊。掟は絶対。残酷にして寛大、自由にして孤独。 当たれば一攫千金、外れれば惨めな死。捕まれば絞首刑。 相反する事実のコントラストが描き出されます。 黒髪だったことから「ブラック・サム」と呼ばれ、海賊行為を行っていたわずか数年の間に何十隻もの船を奪い恐れられ、かつ、当時には珍しく捕虜に寛大であったことで知られるサム・ベラミー。彼の物語は人気があるらしく、「海賊のプリンス」と呼ばれたり、映画化されたりしているらしいですが、さもありなん。 そもそも海賊になった理由が、新大陸のケープコッドで出会った女性「マリア」と結婚するのに資金が必要だったから。そして短期間で莫大な富を得るものの、マリアのためにケープ・コッドへ船を返す途中、航路を誤り嵐の中で座礁。船は財宝とともに、300年後の今もケープ・コッドの沖に眠っている…。 悲劇的な運命と恋愛がらみのネタで、そりゃあハリウッドも食いつきますって。(笑) 「ワンピース」ではあんまりいい役はもらえなかったみたいですが。 おまけに、サムの海賊団には史上最年少の海賊、11歳の少年「ジョン・キング」も乗っていたんですと。 フワンの元ネタはここか…?! ジョンがどうして海賊になったのかというと、ブラック・サムの襲った船に母と一緒に乗っていて、海賊の仲間に入れてくれ、と強く望んだからだそうな。裕福な家庭の出身だったはずなのに、少年はなぜ母親を捨ててまで海賊の仲間に入ろうと思ったのか。海賊にあこがれて仲間入りとか。ネタ的にはおいしすぎます。 しかし彼もまた、ウィーダ号や船長と運命を共にすることになりました。大砲に付着したコンクリージョン(錆が海中で化学変化を起こしたようなもの)の中から発見された小さな靴と靴下、そして中に入った足の骨。それが荒くれの世界に憧れた少年の最期を物語ってくれます。うーむ、切ない。 そしてこの動画のもう一つのハイライトが、「奴隷交易」。沈んだウィーダ号は元は奴隷交易のために作られた船だったそうです。 18世紀初頭、イングランドを出航し、アフリカで交易品を下ろしつつ奴隷を購入、植民地の働き手とするためにカリブに運んで売っぱらい、イングランドに戻る。という三角交易が行われていました。 と、いうことは、船襲ったら積荷が人間ってことも在り得るのか…。 なんという世界。 ブラック・サムは、奴隷であっても、黒人であっても平等に扱い、殺される宿命にあった脱走奴隷も船員として仲間に加えていたそうな。もちろん船での投票にも参加可能。黒人に最初に人権を与えたのが海賊(=国家の法に従わない、ならずもの)だったという、歴史の皮肉。正しいことは、時として、道を踏み外した者の中からも生まれてくる。 ウィーダ号が海に消えてほどなくして、海賊の被害を重んじた海軍の本気の掃討作戦によって海賊たちは次々と捕えられ、大海賊時代は終わりを告げたようです。それは確かに、儚くも短い、海の男たちの激動の時代だったのです。 私は海賊に憧れることも、彼らの行為を美化することもしません。ゲームの大航海でもPK(海賊)に襲われる側の立場ですしね ^^; 実際に今、海賊に出会ったら、迷惑だしヤメレと思うに違いないでしょう。 が、もしも18世紀初頭というその当時、新大陸の発見と入植、一攫千金のチャンスというその"時代"の、その"場所"に生きていたならば。彼らの選んだ道は、その当時、その場所では"仕方が無い"、あるいは"必要な悪だ"と思えるかもしれません。 番組の内容は↓たぶんこれと、ほぼ同じ。 |
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