2012年11月2日(金)

中国進出に揺れるアフリカ・マラウィ

中国 胡錦濤 国家主席
「中国はアフリカ諸国に200億ドルを投資、融資します。」

中国がアフリカでの存在感を増しています。
アフリカ南部の内陸国マラウイ。


国民の大半が農業に従事。
その国の姿が今、急速に変わり始めています。

5年前に中国と国交を樹立。
中国からの援助や投資が拡大し、豪華な建物が次々と建設されています。

マラウイ政府スポークスマン
「両国の間の貿易が活発になればなるほど両国の利益につながる。」





一方で、中国の進出は、地元住民とのあつれきを引き起こしています。

商店主
「中国人が商売を始めてから経営が悪化しました。」

中国が進出を強めるアフリカ。
その最前線に迫ります。

アフリカで影響力高める中国

傍田
「来週の共産党大会を経て最高指導部が交代する中国。
この10年間の胡錦濤体制のもとでアフリカでも急速に存在感を増してきました。
中国のアフリカとの貿易の総額は90年代に比べて20倍にも増え、経済的な結びつきを一段と深めています。」

鎌倉
「アフリカ諸国の中でもこの数年、中国が積極的に進出している国の1つがマラウイです。
どんな国なのか、まず黒木さんからです。」

黒木
「マラウイはこちら、アフリカ大陸の南部、内陸部に位置しています。
1964年に旧宗主国のイギリスから独立しました。
国土の広さは日本の3分の1ほどで、人口はおよそ1500万人、国民の80%が農業に従事しています。
1人当たりの所得はおよそ300ドルで、世界で最も貧しい国の1つです。
2007年にはそれまで続けてきた台湾との関係を断って、中国と国交を樹立しました。
アフリカ諸国の中では最も新しく中国と国交を樹立した国です。
今、そのマラウイは中国からの多額の投資や援助により、急速に資源開発やインフラ整備が進んでいます。」

鎌倉
「中国が進出してわずか5年。
大きく変わり始めたマラウイを取材しました。」

中国のアフリカ進出 ねらいは資源

マラウイの首都、リロングウェです。
街の中心部にある国会議事堂。
30億円の建設費は全て、中国が出しました。

小林記者
「私の後ろに見えるこの豪華な国際会議場も中国の支援で立てられたものです。」




中国が多額の投資を行う背景にはマラウイ国内に埋蔵されている豊富な資源があります。
国土の20%を占めるマラウイ湖です。
莫大な量の石油が埋蔵されていると指摘されています。
中国企業も石油の探査契約の獲得に動いていました。

マラウイ中部にあるこの鉱山では携帯電話の部品に使われるタンタルや、発電所のタービンなどに使われるニオブなどのレアメタルが埋蔵されています。

「むこうに地質サンプルを保管しています。」

調査を進めているのは、オーストラリアに本社がある会社です。
鉱山開発のノウハウをもつこの会社の株の過半数を去年(2011年)、中国の国営企業が取得。
先行する欧米に割って入るかたちで資源獲得に乗り出してきました。
この鉱山では早ければ3年後にも生産が開始され、大半が中国に向けて輸出される見通しです。

投資の拡大に伴って、個人で商売を始める中国人も急増しています。
4年前にオープンしたこちらの商店。
経営者は、広州から一家で移り住んだ李兆栄さんです。
店には日用品やおもちゃ、家電製品など中国製品ばかりが低価格で売られています。

店の客
「他の店よりも安いよ。」

店の客
「見た目はいいし、安いから、質が悪くても買っちゃうのよ。」

李兆栄さん
「マラウイの人たちにも手が届く値段の商品を輸入しています。
買うように仕向けるのが、中国人のやり方です。」

中国のアフリカ進出 地元の反発も

一方で、中国の急激な進出は地元の人たちとの軋轢を引き起こしています。
この女性は、今年(2012年)8月まで中国人の商店で働いていました。
しかし、あまりに給料が安く、休みもなかったため仕事をやめたといいます。

「私の月収が交通費込み2千円で、彼らは1日で25万円以上稼いでいるのよ。
私たちは安月給で働かされ搾取されたとしか思えないわ。」




首都から100キロの小さな町にも中国人の商店が急速に増えています。
町にあるおよそ50軒の商店のうち、3分の1はすでに中国系です。
多くが本来必要な政府の許可を取らずに店を開いたと指摘されています。

中国系の店の隣の雑貨店です。
売り上げは以前の半分に落ち込んでしまいました。

雑貨店経営者
「中国人の資本力にはかないません。
ここ3年、大勢の中国人が進出し、経営は悪くなる一方だよ。」



去年7月、マラウイ人の不満が爆発する事件がおきました。
インフレなど政府の経済政策を批判するデモの矛先が突然、中国系の商店に向けられ、暴徒化したデモ隊に襲撃されたのです。
こうした事態を受け、政府は今年7月、規制を強化、外国人の出店を4つの主要都市に制限しました。

無許可の中国人に店をたたむよう求めるとともに、労働条件の改善も指導しています。
しかし、一部の商店では規制が強化されたあとも、中国風の文字を消すなどして営業を続けていました。

マラウイ政府スポークスマン
「我々は中国人を拒否しているわけではありませんが、投資をするからにはその国のルールに従うべきです。」

高まる影響力 中国の戦略は

鎌倉
「取材にあたった小林記者がヨハネスブルクにいます。
アフリカへの進出を拡大させている中国が、これまで開発が進んでいなかった小国のマラウイにまで手を伸ばしているその理由はなんでしょうか?」

小林記者
「1つには、経済成長を続ける上で不可欠な天然資源の獲得があります。
アフリカでは、石油などの主な資源の開発には欧米の企業が多数進出しています。
後発の中国は、まだ、そうした欧米の企業による開発が進んでいない国や地域を主なターゲットにして進出を図っています。
マラウイはまさにそういう国の1つです。
もう1つには、10億人というアフリカの巨大市場に中国製品を販売するためです。
ここ南アフリカでもここ数年、大量の中国製品が出回るようになっています。
さらに、国際社会での発言力を高めたいという思惑もあります。

アフリカには、胡錦濤国家首席や次の最高指導者への就任が確実視されている。
習近平氏ら最高指導部のメンバーが次々と訪れています。
各国に対して援助や投資を行うことで、国連などの場で中国を支持する国を増やす狙いがあります。
マラウイが5年前に台湾との国交を断絶し、中国と国交を結んだというのは、まさにこうした中国の働きかけの結果といえます。」

アフリカ 中国 今後の関係は

傍田
「その中国のアフリカ進出、現地との摩擦もかなり起きているようですけれども、この点は今後どうなっていきそうですか?」

小林記者
「摩擦はアフリカ各地でおきているものの、両者はすでに切っても切れない関係になっています。
アフリカ側にとって、歴史的につながりの深いヨーロッパの景気が落ち込み投資や援助が先細りするなかで、中国なしにはもはや経済がなりたたないという状況になっています。
中国にとっても成長しつつあるアフリカは資源の獲得先として、また、製品の販売先として、さらには国際社会の場で支持してくれる存在として重要となっています。
中国も最近では、ハコモノばかりではなく、医療や教育、農業技術指導など一般の人たちの利益につながる分野での支援にも力を入れるようになっています。
アフリカと中国は国家レベル、そして民間レベルで関係を深める中で、様々な課題に直面しながら、新たな関係の模索を続けています。」

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