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今月2日、原子力規制委員会の専門家グループが大飯原発で現地調査を行いました。
向かったのは地面を掘って地層の断面を見るトレンチ調査の現場です。
トレンチ調査が行われた場所は2か所。
いずれもF-6と呼ばれる断層が通っているとされる地点です。
原子炉に近いほうのトレンチではF-6が確認されました。
かつて矢印で示した方向に動いたことが分かっています。
問題はF-6が、いつ動いたのか。
関西電力は断層の隙間にある粘土に注目。
その硬さを手がかりに活断層とは見られないと主張しました。
断層が動くと岩石どうしが摩擦で細かく砕け隙間に粘土が出来ます。
この粘土は断層が長い間、動かないと固まっていくとされています。
関西電力は粘土が硬いことからF-6は12万年から13万年前よりも古く活断層とは見られないとしました。
「写真を示していますが、粘土のほうはご覧のように固結(こけつ)しています。
活断層の様相は呈していない。」
一方、専門家グループの複数のメンバーは、粘土はそれほど硬くないと関西電力とは異なる見解を示しました。
「あまり安定はしてない。」
メンバーの1人、渡辺満久さんは粘土は固まっておらず、F-6が活断層である可能性は否定できないとしています。
東洋大学 渡辺満久教授
「非常にやわらかいし、つるつる滑りそうだし。
あれだけ見たときに、ぎゅっと潰されたら動くのではないかと。」
原子炉から離れた海側のトレンチでも活断層の可能性を示すものが発見されました。
地層のずれです。
青い線より下の部分は数億年前に出来たとされる古い岩盤。
その上の地層は12万年から13万年前より新しい時代に出来たと見られています。
ずれが上の地層にまで及んでいることから活断層の可能性があります。
この地層のずれについて関西電力は、原発の施設から離れた場所で起きた地滑りが原因だと説明しました。
「ちょっと右横ずれもしている。
こう、ずれているみたいになっている。」
現地調査を受けて行われた専門家グループによる評価会合。
メンバーの中からも地滑りでも説明がつくという意見が出ました。
立命館大学 岡田篤正教授
「このような構造は地滑りに見える。」
地滑りの見立てです。
山の斜面で地滑りが発生。
岩盤が割れ、上の地層ごと隣に乗り上げました。
その断面です。
乗り上げた岩盤が地層のずれを作り出しています。
その後、新しい地層が堆積したというのです。
一方、ほかのメンバーからは活断層の可能性を指摘する意見が相次ぎました。
東洋大学 渡辺満久教授
「私はこれは活断層であると判断しました。」
信州大学 廣内大助准教授
「先ほどの構造を地滑りで説明するのは難しいのではないか。」
活断層の見立てです。
岩盤に横から力が加わり、地面の一部が隣に乗り上げます。
その後、新しい地層が堆積します。
断面を見ると、地滑りの場合と同じような地層のずれが見られます。
評価会合は関西電力の主張する地滑りの可能性もあるが、活断層とも考えられるという見解を示しました。
さらに専門家グループからは関西電力の調査結果の信頼性に疑問の声が上がりました。
焦点となったF-6は原発の安全上重要な配管と交差しています。
関西電力は原子炉に近いほうのトレンチでF-6を確認。
ところが、その延長線上でボーリング調査を行ったところF-6は見つからなかったといいます。
この結果から、関西電力はF-6は配管の付近で途切れていると主張しました。
これに対し専門家グループからは疑問の声が上がりました。
産業技術総合研究所 重松紀生主任研究員
「ちょっと不十分な掘削計画ではないかという印象をもった。」
なぜ関西電力の主張に疑問の声が上がったのか。
およそ40年にわたって断層の調査を行ってきた金折裕司さんは次のように指摘しています。
山口大学 金折裕司教授
「断層というのはひとつの面がずっとつながるわけではなくて、ステップとかいって、ちょっととんでいるわけですね。
もしくは湾曲してたり曲がったりして、形態が必ずしも直線的ではない。」
ボーリング調査で確認できなくても、断層が続いている可能性があるため、さらなる調査が必要だというのです。
2回にわたって行われた評価会合。
「やはり疑問が残る。
調査の不備があったと思います。」
規制委員会は関西電力に対し、F-6の実態を正確に把握するための追加調査を求めました。
原子力規制委員会 島崎邦彦委員
「F6の実体がどういうものなのか、疑問が出ているのが現状。
まとまった結論を得るために、早急に追加調査をする必要がある。」