前原経財相、円安進行は「総論として歓迎」
[東京 22日 ロイター] 前原誠司経済財政担当相は22日午前の閣議後会見で、最近の円安について「総論として歓迎する」と述べた。ただ同時に、投機的な動きや貿易赤字の長期化による構造変化の可能性などを注視したいとも表明した。
経財相は、最近の円安進行に関する質問に対し「為替は両面を考えないといけない」として、円高が輸出産業や観光分野に悪影響を与える半面、燃料など輸入価格が低減する好影響もあると分析。ただ「トータルで考えれば、日本の円は実体以上に強く見られていた。国際通貨基金(IMF)も言っているように、高く評価されすぎてきているのではないか」と指摘し、最近の円安を歓迎する意向を示した。
同時に「(為替市場で)投機的な動きの情報も耳に入ってくる。輸出減少に伴って貿易赤字が常態化しないかとの懸念もある。今までこれだけ莫大(ばくだい)な財政赤字を抱えながら低金利で推移してきたのは、国民が国債を引き受けていることと同時に、経常黒字が大きな要因だった。構造変化していないかしっかり分析し、その可能性も踏まえて注視することが大事」だと話した。
外国為替市場では円が広範に下落。この日の取引で、円は対ドルで一時82.59円と7カ月半ぶり安値を、対ユーロで106.27円と6カ月半ぶり安値を更新した。
<貿易赤字、EU向け輸出減が主因>
財務省が21日に発表した10月貿易赤字が5490億円と10月として過去最大の赤字を計上したことに対しては、季節調整済みの輸出数量でみると、自動車輸出の減速が大きかった中国を含むアジア向けより、欧州連合(EU)向けの落ち込みが大きいとの分析を披露。「マイナス幅拡大に寄与したのは、欧州向けの輸出が減ったこと」だと指摘した。
その上で、欧州の債務危機や景気減速、米国で減税措置の失効と歳出の自動削減開始が重なる「財政の崖」問題、中国の成長鈍化などに言及し「それぞれの国がしっかり経済対策を取りながら、いい回転に持っていけるよう努力したい。日本も日銀との協力、経済対策をしっかり打ち出す中で役割を果たしたい」と話した。
<安倍自民総裁の国債めぐる発言修正、懸念払拭>
自民党の安倍晋三総裁が21日の政権公約発表会見で、日銀の建設国債引き受け案を「日銀が買いオペで市場から買う。直に日銀が買うことを言っているわけではない」と発言を修正したことには「他党の公約を批判する立場にない」としながらも「建設国債の直接引き受けをやらないのは当たり前の話。これをやると財政規律がゆがむ」と評価。「市場から買うなら今とどう違うのか疑問ではあるが、(直接引き受けの)懸念は払拭された。結構なことではないか」と述べた。
<TPP、首相の所信表明に沿った公約を>
環太平洋連携協定(TPP)をめぐる党内論議については「国を開くことは覚悟が必要。プラスもあればマイナスもある。交渉でいかにプラスを取れるか。始めから敗北主義で交渉に入ったらやられる、米国の言いなりになる、ということでは本当の交渉にならない」として、交渉参加の必要性を重ねて強調。衆院選で掲げる政権公約(マニフェスト)では、TPPや域内包括的経済連携(RCEP)を進める方針を示した野田佳彦首相の所信表明に沿った表現になるとの見通しを示した。
(ロイターニュース 基太村真司;編集 田中志保)
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