- ― まず初めに、パチンコ・パチスロ業界の現状を教えてください。
- 江川 全体的に見て市場環境は芳しくありません。遊技場は昨年まで減少の一途をたどっています。一方で店舗の大型化が進んでいるため、ホール減少による設置台数への影響は何とか小さな範囲で踏み止まっています。しかし規制緩和により設置台数が増加しているパチンコ機に比べ、パチスロ機は規制変更の影響を強く受け、設置台数は減少しています。
- ― パチスロ機の場合、どの程度売れたらヒットといえるのでしょうか?
- 江川 現況では1万台以上販売すればヒットといえますね。当社としても作る以上、まずそこを目指しています。
- ― パチスロ機の規制が緩和される予定はあるのでしょうか?
- 江川 警察庁に対し、業界団体が規制緩和を求めて積極的に働きかけています。しかし、そもそも4号機(規制前の機種)の射幸性が高すぎたことに起因する規制強化のため、当分緩和されることはないでしょう。少なくとも2009年内は、現在の規則で作らざるを得ません。
- ― どのような規制があるのでしょうか?
- 江川 例えば「短時間で規定以上メダルを出してはならない」などの規制があります。そのため、各社とも似通った機械になりがちですが、制作側は新規性や出玉設計などにおいて、セールスポイントを出せるよう四苦八苦しています。
- ― メーカーごとの戦略があるのですね。
- 江川 はい。やはり、各社ともに限界まで出玉性能を求めて制作していますので、保通協(保安電子通信技術協会)という試験機関の審査になかなか適合しないのが実情です。適合しない限り販売できませんので、上場メーカーでも発売延期による業績への影響が発生する場合もあります。
- ― カプコンの保有する人気タイトルやキャラクターは有利に働くのでしょうか?
- 江川 遊技機である以上、人気を左右するのはあくまで出玉性能だと思います。ホールに行っても、メダルが出ない台に座って遊ぶ気にはなりませんよね。やはり玉が出る機械に人は集まります。しかし、出玉が制限されている以上、タイトルやキャラクターの持つ「話題性」は大きな付加価値となります。カプコンに限らず、パチンコ・パチスロともに版権作品を元にした製品が数多く出ていることがその証明でしょう。そのため、カプコンの作り出す、知名度の高い人気キャラクターやタイトルブランドの起用は大きな話題を呼ぶのではないでしょうか。また、コンシューマ用ゲームとパチスロのユーザー層には共通する部分も多いと思います。パチスロユーザーの中心は20〜30代の若者ですし、遊技機のなかでも技術介入性が高く、高年齢者向けではありません。加えて、機械ごとに仕様が異なるため、勝つためには攻略方法の勉強も必要になります。
- ― 人気タイトルを投入することでユーザーの興味を惹き、パチスロ機にも触れていただくという訳ですね。
- 江川 プロモーションという意味ではその通りですね。しかし、コンシューマ用ゲームとは遊び方が異なりますので、単純にキャラクターを使用するのではなく、パチスロ機ならではの楽しさを機械に盛りこむことが重要です。タイトルだけで人気が出るとは思っていませんが、まず触れてもらわなければ始まりませんので、パチスロへの入口としてタイトルの持つ知名度や人気は有効でしょう。
- ― パチスロ機ならではの面白さとはどのようなものでしょうか?
- 江川 機種ごとに様々な仕様が施されている、施せること。何と言ってもインタラクティブ性があって自分で当たりを引き当てた感が強くあることですね。一旦打ち出したら引き込まれてしまうような、「当たりがくるのではないか、いつまで続くのか」という緊張感が魅力です。その際に流れる映像やサウンドによる演出効果も魅力の一つであり、当社が得意とする部分でもあります。