- ― CS品質管理室には何名が在籍しているのでしょうか?
- 小林 社員20名、契約社員40名、パートタイマーの方を加えると全体で約300名が在籍しています。だいたい春頃に新人を採用して教育を開始し、業務の最盛期となる夏および秋に備えています。
- ― 少数精鋭の社員と多数のパートタイマーとで業務を進めているのですね。
- 小林 パートといってもいわゆる「一時雇用」ではなく、勤続年数の長いメンバーが多いんです。品質管理の仕事は誰もがすぐにできる訳ではなく、どれだけ長く経験を積んでいるかが非常に重要です。他社(バグチェック会社やソフトメーカー)ではスタッフを登録制にしているところもあると聞きますが、ノウハウや経験を蓄積して初めて成り立つものですので、当社では技術や経験を習得したパートタイマーが契約社員や社員に昇格してもらうことが多いです。
- ― 具体的な業務内容を教えてください。
- 小林 まず主軸となるのが、開発中のコンシューマ用ゲームソフトが正常に動作するかどうかを確認する「バグチェック」です。他には「チューニング」も行います。
- ― チューニングとはどのような業務でしょうか?
- 小林 バグチェックをしているスタッフは最低でも1日7時間、長くて10時間以上もゲームに触り続けています。そのようなスタッフが、商品をより面白くするために、物足りない部分を指摘したり、改善点を提案する業務です。言うなれば、商品の品質を「維持する」バグチェックに対して、商品の品質を「高める」仕事でしょうか。改善点の提案といっても画期的なアイデアを出して劇的にゲーム内容を進化させる訳ではなく、あくまでも部分的な調整を行うものです。例えば「この武器の攻撃力は10ですが、12にした方がバランスが良いですよ」というように、小さな改善点を少しずつ積み重ねることで全体としてのクオリティを上げることが目的です。
また、意見を出すことは「要望」ではなく1つの「提案」ですので、開発側の協力があって初めて成立します。幸い当社は理解のある開発スタッフに恵まれているので、意見も積極的に取り入れられています。「ユーザーを満足させる為にはどうすればよいのか?」を常に考えるのがチューニングという仕事ですね。 - ― 他にはどのような業務がありますか?
- 小林 「モニタリング」という業務もあります。部内メンバーにアンケートを取る、マーケティングのような業務です。CS品質管理室には10代から30代の人間が所属していますが、「ゲーム好きな300人」という人数を活用しない手はないだろうということで始めました。
例えばゲーム内容やタイトル名など、様々な項目でアンケートを募り、市場に出す前のユーザーの意見として抽出することができます。 - ― コアユーザー層に対するマーケティングが手軽にできるわけですね。
- 小林 そうですね。ただし、300人全員がゲームを好きという訳ではありません。中には車が好きだという人もいますし、デジタル家電に精通している人もいます。様々な個人の意見を集結することで意見の幅も広くなりますので、試作品の完成時などに意見を集めれば、その後の制作に対する良い指標になります。また、雑誌の記事等に対しての意見を直接プロデューサーに報告することもあります。全てが実際に反映される訳ではありませんが、プロモーション活動に対する1つの参考としてご提案することが多いですね。
- ― ユーザー目線で開発側へ意見を出すのですね。
- 小林 はい。おそらく当社の中で最もゲームユーザーが多い部署ですので、そういった意見は出しやすいと思います。
- ― ユーザーの目線と開発者の目線とでは、やはり異なるのでしょうか。
- 小林 そうですね。私たちはゲームに触れた時の感じ方がユーザーと極めて近いため、非常に厳しい意見も出ます。数千円を支払って面白くないゲームを買った時のショックは大きいですからね。
- ― 国内だけでなく、海外向けタイトルのチェックも行うのですか?
- 小林 欧米やアジアへ向けたタイトルも担当しています。海外版の場合は手元の資料とゲーム画面を見比べてチェックするのですが、もし資料に不備があった場合、私たちでは言語の間違いに気付かず進めてしまいます。しかしネイティブの方にお任せすると資料の間違いから指摘ができ、総合的な品質向上に繋がるので、最近では積極的に海外の協力会社にお願いするようにしています。
- ― コンシューマ用ゲームソフト以外にも担当している商品はあるのでしょうか。
- 小林 ゲームソフトの他にも攻略本やCD、DVDなどキャラクターコンテンツグッズのチェックも担当します。元となるゲームに深く関わっていて最終的に効率的なチェックを行えるため、包括して担当しています。