後工程1~ダイシング
前章までで、半導体製造の前工程は終わりです。
付加価値としてはこれでほぼ8割程度にはなるのですが、もちろん最終的にパッケージとなって製品化されるまで、気は抜けません。
後工程の最初の難関がダイシングです。
ウェハーは現在直径が200~300ミリもあり、せいぜい1辺が10ミリそこそこのチップとは比べものにならない大きさです。
つまりたくさんのチップ用の前処理を、まとめて一度に済ませてきたわけで、当然その個々のチップを分割しなければなりません。
これがダイシング(ダイスのように切り分ける)と呼ばれるのです。
いわばピザを扇形でなく縦横に切っていく感じです。
具体的な工程ですが、まずシリコン基板が厚すぎる場合、そのままだと切りにくいので厚さ300ミクロン程度まで削り取ります。
もちろん成膜やリソグラフィしてきた側とは反対側をです。
続いて縦横に切るわけですが、たとえば縦方向に完全に切ってしまうと、次に横方向に切る際にずれが生じて切りにくくなります。
そこである程度の厚さまでしか切らないハーフカットというやり方もあります。
しかし主流はすべて切るフルカットで、その場合はバラバラにならないようウェハーをテープで固定します。
このテープには面白い性質があり、普通は粘着しているのですが、紫外線を当てるとその粘着力がなくなるのです。
つまり粘着するかどうかをコントロールできるのです。
実際に切るには、ダイヤモンドの粉を埋め込んだ、厚さ約10ミクロンの円形の刃を使います。
これをダイサーあるいはダイシング・ソーといいます。
切る際にはこの刃を毎分何万回転もさせますから、当然大量の熱が発生します。
それがトランジスタに悪影響を与えないようにするため、冷却のために水を流しながら切ります。
この冷却水1つとっても、単純ではありません。
純水だと静電気を発生させやすいので、多少抵抗率を下げて静電気を抑えるといった工夫が取られることがあります。