◇九州場所<10日目>
(20日・福岡国際センター)
横綱白鵬(27)=宮城野=は関脇豪栄道をはたき込み、全勝で単独トップを守った。新横綱日馬富士(28)=伊勢ケ浜=は豊ノ島を下手投げで退け、ただ一人1敗。豪栄道、豊ノ島と千代大龍の3人が2敗で続く展開となった。大関対決はかど番の琴欧洲が稀勢の里を寄り倒し、ともに7勝3敗。かど番大関琴奨菊は舛ノ山の突き落としで4敗目を喫した。大関鶴竜は豪風をはたき込んで7勝目。十両は栃乃若が全勝で単独首位。
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日に日に増す立ち合いの鋭さ。日馬富士は低く突き刺さるように当たって右を差し豊ノ島の上体を起こし、相手の首投げを払いのけ、豪快に下手投げで転がした。
わずか2秒8の決着に「自分が中に入ったので相手は投げを打つしかないから。いい相撲をとってます」と自画自賛。師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)も「だんだん立ち合いが良くなってきた」と上昇ムードに太鼓判を押した。
この日、4日ぶりに朝稽古に姿を見せると、稽古場に置いてある福岡入りしてから描き始めた2枚の油絵に日付とサインを入れた。富士山に紅葉したもみじがかかる縦1・6メートル、横2・2メートルの壮大な作品も完成した。
芸術肌の新横綱の腕前はセミプロ級。その評判を聞きつけた後援会関係者から「ぜひ私にも絵を描いて欲しい」と依頼が殺到しているという。
横綱にとって絵画は、勝負の合間の落ち着ける空間。「楽しみながら描ければいい」。それが最近は「あちこちから頼まれてプレッシャーだよ」とこぼし、ここで今場所の断筆宣言。残り5日。3場所連続優勝へ“勝負モード”に突入する。
1敗をキープし、V争いは全勝の白鵬との2横綱による一騎打ちムードが高まってきた。「自分のことで精いっぱい。1日一番集中してやる」。自らに言い聞かせるように語気を強めた。 (竹尾和久)
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