≪姉とお葬式≫ -いわきのぞみさんより- 

['01.11.30受信/'01.12.05掲載]

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今日、姉が死んだ。

原因は両親を亡くした時と同じ・・・突然の交通事故だった。
早い時期に両親を亡くしてから今日まで、二人暮しをしてきた。

やさしかった・・・。時には親のように厳しく・・・でも暖かかった。
ここまで明るく生きてくる事が出来たのは、姉と2人だったからだと思う。
そんな事を思い出すと、ボクの頬を大粒の涙が伝う。

ボクの胸の中にポッカリと開いた穴は、とてつもなく大きくて、、
冷たくて暗い穴だった。

姉を失ったと言う現実・・・・それはボクにとって、
とてつもなく大きな事。考えた事もなかった。。。

違う!これからの生活の不安からの不安なんかじゃない。
ただ姉だからじゃない。一人の女としても、姉は ボクの大事な人だった。

出棺の直前、棺の置かれた白い部屋には
ボクと姉貴しかいなかった。

「姉さん・・・か・・・」

すでに、ボクの涙は枯れ果てていた。
だけど、その安らかな顔を見ると、まだ姉を失ったことが信じられなかった。

姉はこうして自分を癒す事で、耐えて来たのだろう。
ボクは姉を怨む事は出来ない。姉の魂をいやしてやろう・・・

そう思った瞬間、ボクは魂を悪魔に売り渡していた。


「お待たせしました。霊柩車が到着しましたので、ご遺体を移動します、、、」

その声へのボクの返事も待たないで、警察の霊安室から棺が運び出される。

【はい、、、】

「ご遺体は まちがいなく 弟さんですね。お姉様?」

【、、、はい、、、そうです、、弟のアキラです、、、】

わたし、、いいやボクの顔を被って、僕の肉体を着たままの[姉]が
横たわる棺が警察の霊安室から運び出されていく・・・

さよなら姉さん、、
さよなら、、僕の人生、、、

姉さん、、、ねえさんは辛い事があるとあの古ぼけたカメラで作った
[ボク]を着て外出してはストレスを発散していたんですね。
そして・・・交通事故・・・

さよなら姉さん、、さよならボク・・・

ボクは、降りしきる雨に白足袋が濡れるのもかまわず まとわりつく
喪服のすそを気にしながら、黒いリボンがかかった自分の遺影を胸に
だいて霊柩車の助手席に乗った。

今日は姉とボクのお葬式・・・

<完>


サイファーさんの主催サイト[カラフル]投稿作品です。
この物語に登場する[カメラ]についてはサイファーさんの
秀作[カメラ]をお読み下さい。きっとあなたも欲しくなる・・・
−のぞみ−


あのサイファー様の名作「カメラ」へのオマージュ第二弾♪BR> お師匠さまの作品としては、異色の長さ(いえ、短さ?)の中にBR> 凝縮された想いが、読む人の心を揺さぶらずにはいられません。BR> さ、ハンカチを持って、「言の葉」へ〜♪BR> ところで・・・あの「カメラ」譲っていただけません?BR> −綾乃−

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