定期試験が終わると気が抜けるのは生徒だけではない。先生だって少しはラクになる。 けれど、その直後にやってくる「進路相談」のことを考えると気が滅入ってしまう。そんな悪魔が囁き始めるのが、採点という作業。 わたしの受け持つ古典の試験は、こともあろうことか、最終日だった。 しかも最終日はタイヘン。放課後から部活動が再開するから。もちろん、女子テニス部顧問として顔を見せるだけでは済まされるわけもなく、それなりの指導をしなければならない。もっとも、テニスは高校・大学と楽しんだし、それに年頃の女のコたちとふれあうのは楽しかったりもするのだけど。 でもね、こうやって、学校と関わってばかりだとプライベートの時間がなくなるよねぇ。卒業してからも付き合っていた彼とは、春にそれでサヨナラ。 「オレよりも仕事のほうが大事なんだろ」 だって。アンタだって大学にいた頃さんざん「バイトだから」ってデートしなかったくせに。っントに、オトコってわがまま。 それから楽しみは学校。といっても、職場に気になるような男性がいるわけでもないし、もちろん生徒にもいない。 ただ生徒たちと触れ合っているのが楽しいのだ。だからこそ、「先生」という仕事を選んだんだけどね。 そりゃあ、少しは欲求不満は溜まってくる。でも、まだ耐えられそう。これからどんな出会いがあるか分からないし。 結局、きょうは最後まで部活動に付き合った。試験の採点は、ウチに持ち帰ってすることに。教師の仕事に終わりはない。 家族と顔を揃えての夕飯。久々に身体を動かしたせいもあって、ごはんが進む。久々の開放感で、話も弾んだ。 けれど、十歳も年下になる弟タクミの箸はさほど進んではいなかった。 タクミは、わたしが受け持つコと同じ中学三年生。もちろん学校は違うんだけど。 早年生まれのタクミは、同じ学年のコと較べて、少し小柄で、少し弱々しく映るけれど、華奢でスマートとも言える。顔は誰に似たのかかわいいし。まぁ、コトバの使いようによって印象が違ってくる。 で、そんな弟も思春期というムズカシイ年頃。感情の浮き沈みが激しい。浮かれている時は、ある程度はよいものの、沈んだ時は何をしでかすか想像もつかない。突然ナイフを振り回すことだって十分に考えられる、そんな年頃でもある。親にしてみても教師にしてみても生命がけの時期だ。 いまのタクミの場合、普段は明るいだけに、この気の落ちようは家族である以上に教師としても心配。あとで、話を聞いてあげようかな。ウチのコたちの参考になるかもしれないし。 わたしだって、教師になってようやく二回目の夏。後輩ができたとは言え、まだまだ「新米」。勉強することはたくさんある。タクミはいいサンプルだ。 タクミは浮かない表情のまま、静かに「ごちそうさま」と口にして、さっさと二階にある自分の部屋に行ってしまった。 わたしは、ゆっくりとごはんを摂って、リビングで寛いでから、自分の部屋で採点を片付けることにした。 と、その前に。 タクミの部屋の前で早くおフロに入るように行っておかなければ。 すると、いちおう聞いているんだなという感じの生返事が、扉越しに聞こえた。 それからタクミの隣にある自分の部屋に入り、さっそくとばかりにバッグから採点道具一式を出して机に向かう。 さて、始めますか。 三〇人のクラス六つ分。まる、ばつの繰り返し。流れ作業だ。一つのクラスが終わるごとに採点表をまとめる。 ふと時計を見た。十時。半分終わった。ふぅ……。 休憩しますか。 階下へ行ってシャワーを浴びる。それからキッチンに行き、冷えた麦茶で喉を潤す。あっ、おせんべい見っけ。いただき。 隣の部屋は両親の部屋。おフロの前は灯りが漏れていたけど、いまはもうふたりとも寝たみたい。音が出たらまずいから、二階で食べよっと。 そうだ、タクミにも持って行ってやろう、さっきのことも気になるし。 トレイに、麦茶を入れたボトルとグラスを、それとさっきのおせんべいの入った袋を載せて階段を静かに上る。 タクミの部屋のドアの前に立った。静かだ。 ノックする。返事がない。でも、ドアの隙間からは光が漏れているから、起きてるはず。このコは明るいところでは寝付けないからね。 「お姉ちゃんよ、入るわよ」 ドアの鍵は掛かっていなかった。 タクミは、ベッドに寄りかかり、ひざを抱えてTVを見ていた。けれど、ホントにTVを見ていたのかは疑問だ。音は小さく絞られて、ただ付けていたという感じがしたから。 「どうしたの、浮かないカオをして」 ……、無言。 「なんか悩みがあるんだったら、お姉ちゃんが相談に乗ってあげるよ」 教師と教え子のコミュニケーションは、まずは会話とスキンシップが大事。 ポンとタクミの肩を叩き、トレイを床に置き、ベッドに座った。 「いいよ、別に悩みなんてないしっ」 強がった口調は、何かあるという動かぬ証拠。隠し事ができないんだよね、このコは。単純でわかりやすい。 何とかしてタクミの話を聞き出した。 タクミの学校でもきょうが期末テストの最終日。部活動をやっていないタクミは、帰りに前々から好きだった女のコに声を掛けようとしたけど、そのコは、別の男のコと仲良く帰るところだったんだって。そこで、彼だけをその場から連れ出して、どこまで関係が進んでいるか訊き出したというのだ。すると返ってきた答えは「もうキメてるよ」というものだった。 タクミはわたしに最後まで話をすると泣き出した。私は思わず、泣き出したタクミを抱き寄せた。 そりゃあショックよね……。って、口には出さなかったけれど、そういう想像は容易にできる。 私の胸の中で泣きじゃくるタクミ。しょせんは、まだコドモなのだ。そう思うと、わが弟が愛しく感じられた。もはや、教師と生徒という関係ではない。ましてや姉弟の関係も飛び越えようとしていた。 思わず、タクミの顔を持ち上げ、涙で濡れた唇に、自分の唇を重ねた。 「お姉ちゃん……?」 タクミはびっくりしたみたいで、泣くのを止めた。 うーん、いま考えると、久々の感触でフラストレーションが弾けたんだと思う。その唇を見てもっと深いキスがしたくなった。相手は如何せんまだまだ人生経験の足りない、自分の弟。 でも、弟だってオトコ。 我に戻ったタクミが、わたしのカラダにしがみついてきて、そのまま押し倒されてしまった。急ぐように私の胸を揉みしだく。経験がないだけに乱暴だ。 シャワーを浴びた直後なので、ブラジャーもつけてなく、タクミはパジャマの裾から手を入れて、直接、指が乳首に触れる。 「……っ、あ……」 思わず喘いでしまう。実は、ムネはけっこう感じやすいのだ。 タクミはトレパン越しに、わたしの太ももに固いものを押し付けているのに気付いた。弟にも性欲を持つ、世間と同じオトコなんだということを実感した。 「お姉ちゃん……、お姉ちゃん……」 「だめ、そんなつもりじゃ……」 わたしはそこまで言って、思わず言葉を飲み込んだ。 女のコに対してこっぴどく打ちのめされた後に、また女性から拒否されたら、このコはどうなるんだろう? 女性不信に陥りやしないだろうか? ひいては、それが原因で引きこもりを始めてしまったらどうするのだろう。いや、ヘタしたら自殺に走ることだってありうるし、逆上してわたしや、想い続けた女のコやその相手を殺してしまうかもしれない。 そうやって考えている間も、タクミは胸を攻め続けたから感じ始めちゃって、だんだん冷静な思考はできなくなっていった。手はとうとうパジャマの下のほうに入ってきた。 いちおうは知ってるんだ。何で知ったのかはわからないけれど。 「お姉ちゃん……、ホントはボク、お姉ちゃんのことが好きだったんだっ」 タクミは意外なことを告白した。その言葉は、わたしの何かを揺るがせた。 「タクミ……」 「ほんとうは、お姉ちゃんのことが好きで、でも、それはいけないことだから、だから、別の女のコを好きになろうって努力して……」 タクミの独白は続いた。暖かい涙が頬を伝って落ち、わたしのパジャマをぬらした。あれほどせわしなく動かしていた手は、いつの間にか止まっていた。 わたしは、そんな弟のことがいじらしくなって、抱きしめてあげた。 「……ねぇ、お姉ちゃんを好きになるのは、決してイケナイことではないの、むしろ自然なことなの、でもね、いつも目にしているからどんどん飽きちゃって、別の女のコに目を向けるようになるのよ、男のコって」 「いや、ボクはゼッタイにずっとお姉ちゃんのことが好きでいたいっ」 タクミは言い切った。 「……わかったわ、少し待ってて」 ふっきれたような気分だった。 急いで自分の部屋に行き、隠し置いていたスキンを持ち出して、タクミの部屋に戻った。それは、春まで彼と付き合っていた時に予備として置いていたもので、まさかこんな時に役立つとは思いもしなかった。 念のため、タクミの部屋の鍵をかけた。階下(した)で寝ているとはいえ、やっぱり両親の存在が気になるから。 「ねっ、タクミ、これ知ってる?」 「……、コンドーム、だよね」 初めて目にしたんだと思うような口調で答えた。 「そうよ、コレを付けてあげるから、トレパン脱いで」 「えっ、脱ぐの?」 タクミは、渋々という感じで脱ぎ始めた。 思えば、弟の下半身なんて当分見ていない。前に見たのはいつだったかな? もうずいぶんと昔のことだ。まだ無邪気で、一緒におフロに入っていたりしてた頃。歳が離れていたので、次第にわたしが避けるようになったんだけど、もしかしたらタクミは待ち続けていたのかもしれない。 彼は、トランクスも下げた。さっきまで服の上からでもはっきりとわかるほどにかたくなっていたモノは、初めて性交をするというプレッシャーで、うなだれていた。まだ周りの毛は少なく、産毛が柔らかそう。それでもそれは、健康的に剥けていた。使用上のモンダイはない。 そのことがわかると、わたしは思わず弟のモノを触れた。 「お……、お姉ちゃんがボクのモノを触ってるなんて」 弟は初めての感触に戸惑っているよう。 「初めて?」 「だって、いつも自分で触るだけだから」 「触るって、どんな時に?」 弟は黙ってしまった。けれど、頬を赤く染めていた。 きっとすでにどこかでマスターベーションを覚え、精通を終えているのだと思う。やはり、弟も同世代の男のコたちと同じようにコドモからオトナになりつつあるのだ。うーん、わたしのクラスで、制服を着た男のコたちは見慣れているけれど、ナカミはこんな感じなのだろうか? これからの授業がやりにくそう。 弟のソレがやんわりと固くなり始めたので、今度は口に入れた。頬の内側をつるつると滑る感触は久々だった。 「お姉ちゃんがそんなことを……」 タクミは腰を引こうとしたけれど、弟の腰に右腕を回し、左手で根元を握って喰いついていった。 弟のソレは、わたしの口の中で、むくむくと膨れてきた。抜き出してみると、まだ男性器と呼ぶにはまだ幼すぎるほどに穢れを知らないピンク色の先端をしていた。 「これからのこと、お姉ちゃんが教えてあげるからね」 わたしは舌をうんと伸ばし、まだかわいい弟のモノをぺろぺろと舐めてあげる。 「お姉ちゃんが、ボクのを舐めてるなんて……」 その言葉を境に、彼の性器はさらに固さを増してきた。息が荒い。 それからは、あっという間。 「あうぅっ」 弟が呻くと同時に、先端の割れ目から精液が飛び出してきた。 口の中に入れず、先端を見つめながら舌で舐めていたので、それはわたしの顔に、そのまま受けてしまった。 すごい量! 二度目の射精は顔をそらしたから、掛からなかったけれど、わたしのパジャマを汚した。でも、気にならなかった。 わたしの握った彼のモノは、さらにびくんびくんとケイレンを続けた。 顔中に散った精液を拭って、彼の顔を見上げると、困ったような表情をしていた。 「……、ごめん、ね、お姉ちゃん、引っ掛けるつもりじゃなかったんだ、自分でも止められなかったんだ……」 「いいのよ、こんなの、初めてなんでしょ?」 「……、うん……」 拭っても拭いきれない精液が、顔にはりついてべたべたする。 さっき勢いで挿入を許していたら、これだけたくさんの量だと、きっと妊娠は避けられなかったはず。スキンを用意しておいてよかったと、ほっとした。その前に顔に出しちゃったけどね。 「ねぇ……、もしかしてボクたちってよくないことをしているのかなぁ?」 「何言ってるの、そんなことはないわ、今度はベッドに横になって」 オトコの人って、射精した後、突然冷静になるけれど、これってキライ。でも、弟は初めてなんだから仕方ないわよね。わたしは優しく、これからの事を指示してあげる。 「今度は、お姉ちゃんのカラダの中に入れてあげるからね」 わたしもパジャマとショーツを脱ぎ捨てた。 でも、その前にもう一度きちんと固くしないと。もう一度タクミのモノを口にした。さすがに回復が早い。これは、オトナにはない、まだ若いカラダの証拠。わたしは思わずうれしくなる。 固さが戻ると、さっきのスキンをかぶせて、さっそくとばかりにタクミの腰をまたぎ、女性上位のスタイルで弟の性器を、欲求不満でうずうずしているわたしの中に招き挿れた。 わたしは何もされていないはずのに、恥ずかしくなるほど濡れていた。自分で弟の先端をあてがい、思い切って腰を落とした。うれしいくらいに根元まで一気に入ってきたその感触は、久しぶりで、思わず何度も何度も腰を動かした。すごく興奮して、声をあげてしまった。 「すごい、すごいよ、お姉ちゃん」 弟も、興奮している。それにこんなにうれしそうな顔をした彼を見るのは初めて。 カラダの中で男性器がうごめく感触。ホントに気持ちいい。こういうのを「快感」っていうのね。 やがて、タクミの二度目の射精を迎えた。それは、わたしの胎(なか)で微かに膨れたので気付いた。 それでも、やはり両親のことが気になって、声を洩らしたらいけないという意識で、完全なエクスタシーに達することはできなかった。 それ以来、弟との性関係は続いている。 両親が揃って留守になると、することはもう決まっていて、何度も交えた。その時は気兼ねなく声を出して喘ぐことができるので、わたしも完全にイッてしまう。 ときにはスキンなしで、中に飛び出る感覚をたっぷり味わった。 夏休みや冬休みはとてもハードだった。午前中だけで五回もこなしたことがあった。 それでも、タクミは元気で、午後にも四回。 まぁ、それに応えてあげるわたしもわたしなんだけどね。まさに「三度の飯よりも……」ってカンジ。 弟は、煩悩の処理ができたのか、成績はテストを重ねるごとによくなっていき、成績優秀者リストに載ることもめずらしくはなくなってきた。もちろん、そんなテストの後は、ご褒美として、さらに激しくやりあう。 テクニックもだいぶ身についてきた。でも、オンナといえばわたししか知らないはずなのに、どこで覚えてくるのだろう? この前なんか、後ろの穴に舌を入れてきたほど。 いっぽう、わたしはというと、タクミが高校に進学する春で今の学校を辞めることにして、出身校でもある女子高に勤めることになった。 というのも、男のコたちを正視できなくなったから。 「このコを脱がしたら、どーなるんだろう?」って、ついつい思ってしまうのだ。 いまの彼氏は、わたしの弟。 そうそう、転勤を決めた春、わたしは一人暮らしを始めることにした。 そして、家族がそろう最後の夕食の後、父が思いもしなかったことを、ふと告げた。 「タクミは養子なんだ」 その以前に何があったのか、どうしていまさらそんなことを言ったのか、両親は詳しく話さなかった。 わたしの前には、まだ何も知らない白い空間と時間が拡がっていた。 年下のカレ、タクミというパートナーとともに……。 |