白の時間 タイトルバナー
お正月対談 2
ムズカシイ話

真: (ボツ原稿を見ながら)そーいえば、『白の時間』って『絵空事』っぽくないよね。
m: いちおうとは言えR指定にしたことだし。
真: やっぱ、18禁になっちゃうのかな?
m: ハダカを表現するだけなら少年誌でもOKだし、セックスのシーンだけなら問題ないとは思う。
遙: けど、少なくとも排泄はまずい。
真: 「姉弟」は、どちらかと言えばきれいにまとまってたよね、如月さん好みらしく。(笑)
玲: それよりも、周りが暗すぎるんだよ、監禁とかしちゃうから。
m: 監禁はテーマの一つだからね、『白の時間』の。
遙: なんかわけのわかんないところに閉じ込められて、ぐちゃぐちゃっていうのを、基本的に書きたかった。
m: 世相を反映させるつもりで、ぐちゃぐちゃしたものを考えた。不況だ不況だと騒がれて、もう10年くらい経つんだけど、不況の解決策が見出せてない。端的に言ってしまうと、世の中が閉塞感に包まれてるから、結局何をやっても同じ結果になってしまうんだよね。だから、どの方向に足を出したらいいのかわからず、よけいに閉塞の方向に向かう。そんなの雰囲気をエッチを通じて書けたらいいぁ、って思ってネタを考えてるつもり。
真: 例によって、いちおうまじめに考えてるんだ。
遙: 不景気の場合、その先に明確なヴィジョンがあればいいんだろうけれど。
m: 実際にあるヴィジョンは、要約してしまうと、あのバブルのころへの回帰なんだよね。……ムリだって。
真: いまにして思えば、アレは病的だったよな……。
m: しかも、金銭的に豊かになっても、気持ちが貧しいままだったでしょ。見栄を張るだけだし。だから、あの時代が良かったのかなぁ、なんてギモンに思う。
真: でも、結局ニッポン人ってそういうもんなんじゃないの?
m: 根本的におカネの使い途を間違えてるんだよね。ホントの金持ちはそうしないよ。育てるものにカネを使う。
真: じゃあ、ニセモノの(笑)金持ちは?
m: まず、見栄のために子どもを上流校に行かせようとするよね。失敗するのは目に見えてるのに。で、いつだったかさ、東京であったよね、名門小学校のお受験に失敗して、合格した女のコにヤツ当たりした人が。あんな事をしちゃうんだよ、貧しい人は。
遙: その人がホントに心の貧しい人だったかどうかは別としても、その事件が大きな話題になること自体が心の貧しさを示してる気がした。
m: だいたいさ、ホントの金持ちってエリートなんだよ。
遙: 良くも悪くも択ばれた人がいるからこそ、世の中が形成される。
m: そう。確かに、ごく普通の人が上を目指す「向上心」があるのはいいことだけど、ホントにあるんだったら精神的なものを向上させないと。政府はIT講習なんかしてる場合でもないし、豊かな生活を目指してる場合でもない。国民の質を向上させないと。
真: フランスのシラク大統領とかアメリカのクリントン前大統領は、一時期国防費を削って社会教育を充実させる政策をしたことで話題になったよね。いまはどうかわかんないけど。
m: その政策実施後、フランスはどうなったかわからないけれど、アメリカは世界的な不況に巻き込まれて景気が落ち込んでも、同時多発テロの影響もあるだろうけれど、なんとなくまとまってる。それは、国民が「自分たちががんばらなければ国家は繁栄しない」という考えが、完全に根付いたからなんだと思う。だから、バブルがはじけても動じない。
真: 日本は逆だよね。いまでも動揺してる。しかも政府が。(笑)
m: 内閣の中で考えが一致してないというのが、いろんな要因があっての発言なんだろうけど、結果的に動揺を象徴してるように見える。
遙: 熱狂的な支持があっても、経済は回復に及んでない。
m: 悪化してるのが実感だね。だって、シゴト見つからないんだもん。(笑)
遙: mi-sa.が仕事に就けないというのは、本人に問題があるからじゃないの?
真: (笑) でも、この前の新聞記事にあったけど、就労者数っていうの? それが減少して失業者が増えてるって書いてあった。……これって、典型的な不況の姿だよね。しかも、経営者はまだ人員整理を計画してる。
m: だいたいさ、なぜバブルがはじけたのか、なぜ不景気が長引いてるのかって的確な分析がないから、悪化する一方なんでしょ。
真: だったら、mi-sa.的には、どうしてバブルがはじけたんだと思う?
玲: うにゅ〜……、ややこしい話はニガテ……。(@_@)
真: ……じゃあさ、何か食べるもの作ってきたら? おせちだけじゃ、なんか物足りない。
玲: mi-sa.さんは?
m: どーしよっかな……。
真: ダメだよ、食欲がないヒトなんだから、周りが押し付けないと食わないぜ。(註6) いま出てるおせちだってほとんど箸つけてないんだから。
玲: ……じゃあ、葉月クンは?
遙: いただきます。
玲: わかった。じゃあ、ちょっち待っててね。(立ち上がって嬉々としてキッチンに向かう)
真: で、なんの話だっけ?
遙: バブルが熱狂的だったという話の次。
m: ……そう。(笑) で、なぜそのバブルがはじけたのかなんだけど、いろんなことが言われてるけれど、結局は働く側、もっと言うと働き出す側の怠慢にあるんだよね。大学にはいれて、ちょっと個性があると、就職活動では内定がわんさか。だけど、そのころに卒業した大学生は、極端にまじめなのが少数で、残りは遊び人でしょ。大卒という肩書きが意味を為さなくなった。
真: だから、いまは資格の時代になったわけか?
m: もともと資格は自分を示すのに有効な手段だけど、学習期間に遊びながら生きてきた人にいまさら資格のために勉強しろっといわれても、できるわけないじゃん。そんな人が「再生産システム」の中で使えると思う? 維持が精一杯だと思うよ。
真: 遊びじょうずなのもひとつの資格だとは思うけど……。
m: そのころからパソコンで遊んでた人っというのはいいよね、遊んでること自体がシゴトだから。(笑)
遙: mi-sa.は?
m: パソコンは、結局いまでもオモチャだよね。たとえ「勘定奉行」(註7)みたいなソフトでも。
真: (笑)
m: 遊ぶほどではないにしても、キーボードに慣れてた人っていうのは、きちんと生き残れたと思う。世間的には、ケータイみたいなテンキーだけで文字入力させようと機運だけど、シゴトをする以上はキーボードが扱えなきゃダメ、少なくとも健常者は。入力デバイスとしては、現状ではキーボードに勝るものはないんだから。現実的には、かなり抵抗があるみたいだけどね。だから、貴重な税金でIT講習なんかをするわけで。
真: ということは、ぼくらはキーボードを使ってるから、いちおう現実適応者なわけだ。
遙: あとは労働意欲が足らない。(笑)
m: (大笑) 遊び人でも、働かなきゃ生きていけないから、仕事を探すけれど得られるはずもないし、逆にまじめな人も、企業の方針に口出しをしてしまうから、嫌われるんだよね。結局、いまの社会を率いてるのは、安保闘争とか、せいぜい大学紛争の世代でしょ、してたかどうかは別として。考え方が古いんだよね、どーしても。自分を守ろうとするクセが身に染み付いてる。
真: 若い世代は受け入れられないのか……。
m: しかも、昭和50年代はまだ目標があった、世界一を目指すという壮大な目的が。そのために懸命に働いたし研究開発をした。結果としてGNP・GDPは最高水準まで引き上げたし、技術力も向上した。分野によっては世界一のものだって少なくない。それはそれで尊敬できるけれど、でも、家庭が疎かになった。しかも夫婦共働きという環境も加わって。いまの、家族崩壊の基はそこにあると思う。
真: キテレツな子どもたちも?
m: うん、根はいっしょだと思う。親が育てなかったんだから、子どもがきちんと育つわけがない。
遙: 全員がそういうわけではないだろうけれど。
m: でもね、数が少なくても、その世代が社会的な問題になってるんだから、看過はできないよ。
真: ということは、きちんとした若い世代が力を合わせて基礎から作り直さなければならないっということだよね。実際に可能かどうかは別として。
遙: 不可能だから、悪化してるんだと思う。
真: そっか……。
m: 『ジュラシック・パーク』を観て思ったんだけど、あれって要は老人の夢に振り回される次世代の人たちっていう縮図でしょ。いまは、まさにその世界なんだと思う。
真: あっ、あれってそういう映画なんだ?
m: ホントかどーかは知らないけどね。(苦笑)
遙: ともかく、『白の時間』にあるのは年上の者の年下いじめ。
m: ゴーインだけど、見事に話がまとまった。(笑)

……以下、映画の話が続いたため、省略

Intermission

玲: はぁーい、ムズカシイ話はやめにして、お雑煮できたよーん♪
真: ちょうど終わったところだよ。
m: あっ、おいしそ♪
遙: では、いただきます。
(一同、箸に手をつける)
玲: なんか、ずいぶんと御屠蘇を飲んだせいか、足元がふらふらしたまま作ったんで、ロクに味を見てないんだけど……。
真: ダメじゃん。
m: コドモはお酒を飲んだらダメ。(笑)
玲: あっ、ひっどーいっ。
遙: でも、ちゃんとおいしくできてる。
玲: ありがとー♪

(誰の好みなのか、薄味のお雑煮でした。)

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