短編
ため息は夢の中へ

 気づいたのはいつの頃だっただろう。ずいぶん昔のことのように感じることもあれば、割と最近のような気もする。
 ようするに、はっきりと意識してしまったのは割と最近のことなんだと思う。前々からなんとなく分かってたはずだ。
 その気持ちは、どうしても内に秘めていないといけないもの。
 でも気づいてしまってから、その気持ちはどんどん大きくなって今にも体を突き破って現れそうになっていく。
 毎日毎日苦しくて、とても辛い。
 何度も忘れようとした。何度も気の迷いだと念じた。
 何度も何度も。
 でも顔を見るたび、声を聞くたび、手が触れるたび、捨てたはずの気持ちはいつの間にか戻っていて、前より膨らんでいるのだった。
 今だって目を閉じれば何もかもを思い浮かべられる。
 少し明るく染めた、肩よりちょっと長い髪は丁寧に手入れされていて、艶やかに輝く。線の細い輪郭は卵みたいに左右対称で、鼻はスッと伸びている。肌はきめ細かく、唇は口紅を使っていないのに綺麗な薄紅色に染まっている。長く、綺麗にカールしたまつげに縁取られた瞳は大きく、豊かな感情表現に一役買っている。
 身長は150を超えた程度で、オレと並ぶと頭一つ以上小さい。全体的に細身で引き締まった体をしているのに、胸だけは自己主張をやめない。たしか、Dだとか言っていたのを覚えている。それで体のラインの出るTシャツとか、ブラウスなんて着るから目のやり場に困ってしまう。
 声は高い――と思う――のに不快でなく、むしろ鳥のさえずりのように心地よい。
 そんなだから、昔からモテた。なのに誰とも付き合わず、いまだ彼氏のような存在はいない。いっそのこと、いてくれたら諦めも付くというのに。
 忘れたい。でも忘れられない思い。
 忘れるために女と付き合ってみても、長続きしない。付き合うたびに――といってもそんなに大人数と付き合ったわけではないが――、別れるたびに、自分の中でどれだけ存在が大きいのかを知って惨めになる。
 そう、惨めなのだ。
 決して成就されることのない思いだから。
 この気持ちは決して相手に伝えてはならないから。
 それなのに気持ちは膨らんでいく一方で、もう栓をするのも限界寸前。
 いっそのこと、栓を外して全て吐き出してしまったほうが楽なのかもしれない。
 それでも、それは出来なかった。
 それをしてしまったら、何もかもが壊れてしまうから。
 それをしたが最後、もう二度と元には戻れなくなってしまうから。

 それは許されないことだから。

 それは表に出してはいけないことだから。

 それは決して受け入れられることのないことだから。

 そう、オレは実の姉を好きになってしまったのだから。

 姉貴は大学二年で、オレは高校の二年。生活のリズムが違うし、姉貴はバイトもしてるから日頃はあまり顔を合わすことはない。それでも姉貴のバイトが休みの日は――どうやら授業も少ないらしい――家に帰ればいるし、飯を食うときは顔を合わせなくちゃならない。
 オレの方から姉貴に話しかけることはほとんどない。話をしてしまうと、踏みとどめている思いが溢れてしまいそうだから。
 だが姉貴はそんなオレのことなんて露知らず、どうでもいいことを話しに部屋へたまに入ってくる。それも決まって風呂上りに、ショートパンツとTシャツという姿で。
 上気した肌は艶かしいし、シャンプーの香りが鼓動を早くさせる。太ももまで露わにして、誘っているのかと問いたい。
 部屋に来るとき、姉貴は大抵オレのベッドに腰掛けて友達の話だとか、バイトの話だとか、買い物の話だとかをする。それはオレにはどうでもいい話で、適当に相槌を打って聞き流しながら、オレは自分を押さえつけているのだった。
 ――無防備極まりない格好で好きな女が己のベッドに腰掛けてたら、押し倒したくもなるだろ。
 姉貴はこっちが聞き流してるのを承知で話を続けて、終わると自分の部屋へ戻っていく。
 姉貴がオレの部屋にいる時間は十分程度だったり、一時間近くだったり、そのときのネタ次第で、その間オレはずっと耐え忍ぶ。拷問に等しい所業だと思う。
 姉貴とオレは、親から見ても面白いぐらい仲の良い姉弟として通っていた。確かに昔はよく一緒にいたし、思春期でも普通に過ごしていた。だがオレは自分の気持ちに気づく少し前辺りから、姉貴とはあまりしゃべらなくなっていた。何かを悟ったのか、姉貴も昔ほど話しかけてこなくなったが、先に言った通り、週一程度のペースで部屋にやってきてはダラダラとおしゃべりをしていた。
 さらに、姉貴はよくボディタッチをしてくる。ふとした時に極々当たり前に肩に触れてきたり、腕をつかんだりしてくるのだ。さすがに抱きついてはこないのが、唯一の救いか。部屋に来たときだって、オレが机に向かって何か――決して勉強をしている訳ではない――していると肩に手を置いて、顔を寄せて覗き込んでくる。
 それはこっちが気づかないほどさりげなく、そして唐突で、すぐ傍に現れた姉貴の存在がオレの正気を奪い去ってしまいそうになる。身近から香るシャンプーの香り、体温、息遣い、それら全てがオレを狂わせていく。
 だからオレは出来る限り感情を排除した声で淡々と姉貴の言葉に生返事を返すのだ。正直、姉貴が何を言っているかなんてほとんど脳みそは理解していない。姉貴がそばにいる。姉貴の心地よい声が耳元で聞こえる。姉貴の髪がオレの肩に掛かる。それが全て。それらを刻みつけようと全ての感覚は神経を集中させる。声が聞こえればいいのであって、その意味など必要ではないのだ。
 そうして何度眠るのに苦労する夜を過ごしただろうか。壁越しに友達と電話でしゃべっているのが聞こえてくれば、耳を澄ましてしまう。何より、姉貴は声を出さないようにしているのだろうが、まれに一人で事をしているときの声が、漏れてくる。
 それはとても小さく、聞き逃してしまいそうなほどだが確かに一人でしているときの声で、事を終えた後必ず部屋を出てトイレへ入るのだった。
 それに気づいた日は、ほとんど眠れない。
 ただ分からないのは、何故姉貴は彼氏を作らないのか、ということ。性格だって弟のオレが贔屓目――主に減点する方で――に見ても問題なく、誰とでも良くしゃべる。男嫌いということもなく、男友達だって何人かいるのを知っている。容姿だっていい。モデルのスカウトを受けたとか何とか言っていたのを覚えているから、業界人――怪しいが――の目に留まったということだ。
 だが彼氏はいない。
 作ろうと思えば幾らでも作れるはずなのに、いない。
 それは単純に好きな男がいないためなのか、それとも別の理由があるのか、オレには分からない。ただ、だからこそこっちも諦めが付かないから、いい加減にして欲しいところであるが。
 いや。
 たぶん、姉貴に彼氏が出来たら、この膨らみ続ける気持ちがどうなるのか予想は出来ないのが本音だろう。しぼんで消えるか、爆発するか、二択だと思う。
 しぼんで消えてしまえば楽な話だが、爆発してしまっては、今までの努力が全て無駄になってしまう。
 何をするか分からない自分が怖い。だから姉貴の話など聞きたくはない。姉貴の性格からして、彼氏が出来たら隠すどころか部屋に押しかけてきてベラベラと聞きたくもない話をすることだろう。
 そのとき、オレはどうなるんだろう。いつも通り、無感動に相槌を打てるだろうか。それとも気の聞いた冗談でも言って流し、後で泣くのだろうか。諦められるのだろうか。はたまた、その場で思いのたけをぶちまけてしまうのだろうか。
 何にしても、破裂寸前の風船を針で刺すようなまねはしないで欲しかった。だからといって、今のまま自分が耐え続けられる自信もなかった。
 矛盾している。今を壊して欲しくないのに、今から開放して欲しいと願う。矛盾だ。
 自分がどうしたいのか分からないのに、この生き埋めに等しい現状から救い出して欲しいと願うのだ。
 もちろん、一番いいのは姉貴に受け入れられることだ。
 だがそんな可能性はオレの頭の中でしか存在し得ない。だからどうすることも出来ない。姉と疎遠になるのは嫌だし、だからといって今を続けるのももう限界だった。
 あと一年我慢して、地方の大学に行けば姉貴から離れられる。だが一年も持つのだろうか。そして何より、姉貴から離れるという選択肢を自分自身が選べるのかどうかが不安だった。
 こんな自分が嫌になる。
 姉を好きになるなんて普通の神経じゃない。それでもなってしまったものは仕方なく、この負の渦に飲まれ続けるのは罰なのだと諦める。
 これからどうなってしまおうとも、それはオレが悪い。どうしようもなく姉を好きになってしまったオレがいけない。だから、どうなったとしても、どのようになったとしても、甘んじて受け入れよう。
 それしか、オレにはないのだから。



 じゃあね、という里奈に手を上げて答える。ドアが閉まり、振動に揺れると電車が動き出したのが分かった。ガラス窓越しに里奈と、その他の大勢の人たちの姿が液体になったみたいに流れていく。
 里奈は彼女、という訳でなくただ仲のいい女友達に近い存在だった。何人か――二、三人だが――と付き合ってやっぱり無理だ、と思うのと同時に面倒くささを感じて彼女は作っていない。里奈が好きか、と聞かれれば好きだ。だけれども姉貴と比べれば、それは次元が異なってしまう。
 悪いヤツじゃない。付き合った女たちに感じた面倒くささもなく、適当にしゃべって遊べば満足出来る、本当に友達と感じられる女だ。
 たぶん、姉貴がいなければそういう意味で好きになっていたのかもしれない。まァその場合、前に付き合ってた女と別れることもなかったかもしれないが。
 ため息をついて電車に揺られる。今はまだ人の数は少ないが、その内に多くなってくるだろう。座れないのは仕方ないとして、押しつぶされるのは朝だけで十分だ。
 音楽でも聴こう。
 そう思ってカバンに手を伸ばしたときだった。
「見たぞ」
「―――ッ!」
 耳元で女の声が聞こえ、慌てて振り返ると、ニンマリと――それでも魅力的に――笑う女がいた。
「ユーヤもやるねェ。何あの子、彼女? アンタ何人目?」
「姉貴、どうして・・・・・・。つーかおどかすなよ」
 そこにいたのは姉貴だった。デニムのタイトミニに体のラインが出るようなプリントTシャツを着て、黒い上着を羽織っている。砲弾型の胸が自己主張をしていて、嫌でも目に入ってくる。
「気づかないアンタが悪いんじゃない。アタシはずっといたのよ。・・・で、あの子は彼女なの? ずいぶん楽しそうにしてたねェ」
「デバガメかっつーの。・・・・・・彼女じゃねェよ」
 そう答えると、姉貴は目を丸くする。まったく、表情豊かなことで。
「ウッソ、マジで? まだ彼女じゃないって意味?」
「はァ? 彼女じゃねェって言ってんだろ。まだもクソもねェよ」
 そばに姉貴がいる。好きな相手がいる。なのに、当の本人を相手にこんな会話をしなくてはならないのは、苦痛以外の何でもない。止めて欲しい。イライラしてくる。それは自分の気持ちが姉貴がいることで膨らむのと、思いを伝えることの出来ないもどかしさから来るものなのだろう。
「ふゥーん・・・そうなんだ」
 どこか拍子抜けしたような、そんな顔をする。何か言いたそうに見える。
「何だよ」
「あの子、多分アンタのこと好きなんじゃない?」
「何を根拠に」
「ん、女の勘」
 アタシの勘はよく当たるんだよねー、などと笑いながら言う。勘弁してくれ。
「ただのダチだよ」
「アンタは、でしょ? あの子がどう思ってるかなんて分からないじゃない。ましてやアンタみたいなのじゃあ、繊細な女の子の気持ちなんて分からないでしょうね」
 ――ならアンタはオレの気持ちなんて知らないし、分からないんだろうな。
 イライラする。姉貴の声音はオレの脳を蕩けさせるけど、会話の内容がこれじゃあ堪らない。
「知るかよ」
「付き合っちゃえばいいのに。別れて何ヶ月だっけ?」
 姉貴はオレがイラついているのに気づいていないのだろうか。言いたくもないし、そんな話は聞きたくもない。
「・・・・・・・・・うるせェなァ。別にいいだろ」
「何アンタ、まだ振られたの気にしてんの? 男なんだからいつまでもウジウジしてんじゃないの」
 そんなことはない。横にいる姉貴がそんな話をするからだ。言いたい。言って楽になってしまいたい。だけど、それは出来ない。
「違ェよ。姉貴こそ、彼氏の一人でも作れよ。付き合ったこともねェくせに」
「そんなのアタシの勝手じゃない」
「だったらオレだってどうしようとオレの自由じゃねェかよ」
「まァー可愛げのない」
 昔はあんなに可愛かったのに、などと言う。決まりきったパターンだ。
「言ってろ。・・・・・・今日バイトじゃねェのかよ」
「ん? ああ、この間シフト変わってあげたから今日は休みになったんだ。授業も早く終わったから買い物行って来た」
 そう言って、姉貴は手提げ袋を見せる。服でも買ったのだろう。
「一人で? 寂しいヤツ」
「そんな訳ないでしょ。知明と行ったのよ」
「ああ、そう」
 知明ってのは姉貴の高校からのダチだったような気がする。何度か家に遊びに来てたのを覚えているが、最近は見てないからうろ覚えだ。
「あ、ねェ、お母さん今日遅くなるってさ」
「飯は?」
「適当によろしく、だってさ」
「冷蔵庫に何があるかなんて知らねェぞ・・・」
「アタシも」
「姉貴は飲み物以外見てねェだろ」
「まァねー」
 この姉貴、料理が出来ない――しないのでなく、出来ない――のが欠点だ。包丁を持たせれば指を切り、フライパンを持たせれば焦がすかひっくり返す。お袋がサジを投げたのはいつの頃だったか。
「買いに行くか」
 ちょうど駅前にスーパーがある。一旦家に帰って冷蔵庫の中身を見るより、もう作るものを決めて買ったほうが早いし、楽だ。
「アンタお金持ってんの?」
「バイトもしてねェ高校生に出させる気かよ。作ってやンだから出せ」
「何その言い方。別にアタシはお弁当でもいいんだけど」
「んじゃあ勝手にしろよ。オレはパスタでも作って食うから」
「ウソウソ、ウソですって。お弁当なんかよりアンタの作った料理の方が美味しいから食べたいです」
 わざと慌てたような顔をして目を大きく見開く姉貴。
「だったら最初からそう言っとけっての」
「アタシ、クリームパスタ食べたい」
「・・・・・・・・・」
「ねェ、クリームパスタ」
「・・・・・・・・・めんどくせェなァ」
 そんなに食いたいなら自分で作れるようになれ、と思うのだが、そうもいかない。作らせるならば結局ずっと台所に張り付いて見てないとならないし、手際の悪さに目も当てられなくなってしまうのは経験済みだ。
「お金出してあげるんだし」
「はいはい」
 それからは姉貴の話に相槌を返すだけになる。何駅か過ぎて、乗り換えの出来る駅に着くと、人の数が一気に増えると電車の中が狭くなった。
 必然的に姉貴とオレは引っ付くような形になってしまう。横に姉貴の体温を感じると、落ち着かなくなってくる。いや、前から落ち着いていないか。
 そんな中では姉貴も話をするのを止め、必然的に沈黙が流れた。
 その後、最寄り駅のそばのスーパーによって買い物を済ませ、ご所望のクリームパスタを作って食い終わった頃には8時を回っていた。それからリビングで適当なバラエティを見て時間を潰していると、姉貴が横に立った。
「お風呂いいよ」
 タオルで頭を巻いて、手には牛乳の入ったコップを持っている。オーバーサイズのTシャツにスウェットという格好。フワリとシャンプーの良い香りが漂ってきた。
「ああ」
 適当に返事を返すと、姉貴は自分の部屋へ上がっていった。
 それからしばらくして、オレが風呂へ入ろうと部屋で準備して廊下へ出ると、丁度姉貴も上着を着てどこかへ行こうとしてるところに出くわした。大方、コンビニでも行くのだろう。
「アタシコンビに行ってくるけど何か欲しいモンある?」
「あー・・・・・・特にねェな」
 案の定、コンビニだ。特に欲しいと思うものもない。
「了解」
 そういうと姉貴はオレの前を抜けて玄関へ向かった。その後姿をしばし眺めてから、オレは風呂場へ向かった。
 他のヤツラがどうかは知らないが、オレは長湯しない。大体15分程度で上がってしまうから、親からはよくカラスの行水だ、なんて言われる。だけど長々と湯に浸かるのはどうも苦手だった。のぼせてしまう。
 そんな訳でオレが出た時間と、姉貴が帰ってきた時間は同じくらいだった。ウチと通りを挟んだ向かいにコンビニがあるから、移動にはほとんど時間が掛からない。便利だけど、よく親につまみ買って来いって言われるから正直面倒な所に出来てくれた、というのがオレの感想だ。
「ただいまー」
「おゥ」
 姉貴の方を見ることなく、オレは部屋へ向かう。ベッドでゴロゴロしながら漫画を読んでいると、ノックの音が響いた。
「ユーヤ、いい」
「ああ」
 ガチャリとドアが開き、姉貴がコンビニの袋を持って入ってきた。
「一緒に呑まない?」
 姉貴が袋を掲げて言う。
「別にいいけど」
 高校生だから、とかそういうのは無しだ。この歳になれば誰だって家で飲んだりするだろう。本当は姉貴とあまり一緒にいたくなかったが、断る理由は思いつかなかった。
 部屋の中央にあるテーブルの上に袋を置き、缶を二本取り出す。チューハイとカクテルだ。オレはビールの方が好みなんだけど、姉貴はあまり好きじゃないから仕方ない。別に呑めないわけじゃないし。それにしてもずいぶんな量を買ってきたな。
「どういう風の吹き回しだよ」
 今日は姉貴の愚痴にトコトン付き合わなくてはならないのかもしれない。そんなことを思いながらどうして一緒に呑もうなんて言ったのか問う。
「んー別に。何となく」
 と、ジャーキーの袋を開けながら姉貴は返事を返す。渋いつまみの選択だこと。
 まァいいじゃない、と姉貴はカルピスサワーのプルタブを開け、かざす。オレはスクリュードライバーを選んでかざす。
「何に乾杯なんだ?」
「んー・・・・・・ユーヤが決めて」
「無茶振りすんなよ・・・・・・。んじゃあ、未成年に平然と酒を進める姉貴に乾杯」
「アハハ、何それ。それならアタシはそれを平然と受け入れる不良弟に乾杯」
 こつん、と缶を合わせ、呑む。アルコールを感じさせない、ジュースのような甘さのスクリュードライバーを三分の一ほど一気に流し込む。
「はァ・・・・・・。うん、たまに呑むと美味しいね」
「ジュースみたいなもんだけどな」
「アタシはお酒って感じのが飲めないからこれで丁度いいの」
「そんなもんかね」
「そうなの。ビールを好き好んで呑むアンタとお父さんが信じられないよ」
 良くあんな苦いの呑めるね、と姉貴は言う。
「味わうもんじゃねェからな。流し込むんだよ」
 ビールは喉を通る炭酸を楽しむものだと思う。苦味があるからこそすっきりと流し込めるのだ。甘かったら、後が気持ち悪そうだ。
「ふゥーん。分からないなァ。ねェ、何かCD掛けてよ」
「何でもいいの?」
 うん、と姉貴はジャーキーを咥えながら頷く。立ち上がり、コンポの電源を入れる。リモコンをいじって、CDの再生をする。
「これ洋楽?」
「ああ」
 ヘビメタに該当するような攻撃的なサウンド。ボーカルは女で、とんでもないパワーボーカルだ。高音域まで綺麗に出したかと思えば、強烈なシャウトが入ったりする。ヘビメタ、なんだろうけれど、ジャケットを見るとボーカルの女だけはロリーターなドレスなんかに身を包んでる。ヴィジュアル系ってのが向こうにもあるなら、それに該当するのかもしれない。こっちのヴィジュアル系はヘビメタ調の曲をド派手で現実味のない衣装に身を包んだヤツらが演奏している、というのがオレの認識。割合近いと思う。
「すっごい声・・・・・・」
 アンタこういうの聞くんだ、と呟く。
「テレビでPV流れててな」
 夜中のマニアックな洋楽紹介番組で流れてなかったら、知らなかっただろう。
「何言ってるのか分かってる?」
「全然。オレが英語ダメなの知ってるだろ」
 たとえ授業でやる英語が出来たところで、ネイティブの曲を聴き取れるなんてことはないだろう。耳が鍛えられてないからだ。
「やっぱ雰囲気?」
 スクリュードライバーを呑み干して、頷く。
「重いサウンドが好きなんだよ。よく知らねェけど」
 邦楽は音が軽い。そうでないものだってもちろんあるけれど、全体的に売れる曲ってのは中から高音域が強くて、低音域が弱くされている。それは編曲によって成されていることなんだろうけれど、やっぱり好きになれない。
「ふゥーん。何呑む?」
 空になった缶をテーブルに置いたオレを見て、姉貴がビニールから缶を次々取り出す。
「どんだけ買ってきたんだよ」
「んー、いっぱい」
 6本近い缶がテーブルに並んだ。オレと姉貴が呑んだ――呑んでいる――のを合わせれば8本もあることになる。
「酒強くないくせになんでそんなに・・・・・・」
「別にいいじゃない。ほら、呑んで呑んで」
 姉貴は強くない。普段だって缶チューハイ一つ二つで十二分に酔っ払うのだ。それなのにこんなに買うなんて正気の沙汰ではない。
 グレープフルーツサワーを選択して、姉貴を眺める。ニコニコと、楽しそうな表情が浮かんでいるだけ。
「何よ、人の顔ジロジロ見ちゃって」
 気持ち悪い、と続ける。
「うるせェ。・・・・・・・・・何かあったのかよ」
 姉貴はカルピスサワーを一気に流し込んで――普段なら絶対にこんなことはしない――巨峰サワーに手を伸ばした。
「おい、一気に呑みすぎだろうが」
「別にいいじゃない、家なんだし。潰れたってアンタが介抱してくれるし」
 そう言って笑う。
「いい迷惑だ」
「可愛くない弟だこと。タダで呑めるんだからそれくらいいいでしょ」
 呑みたいなんて一言も言ってない。そう返してやろうと思って、でも口には出さなかった。どうせ、言ったって無駄だから。
 ため息をついて、酒を流し込む。愚痴タイムの始まりのようだった。
 姉貴は巨峰サワーを呑みながら、あまり聞きたくない話をした。
 バイト先の同僚――姉貴より一つ上の人らしい――に告白された、と。前から良く喋り、そして遊びにも何度か行っている仲だという。
 バイトが終わって、裏口に面した歩道でいつものようにおしゃべりをしていた。そのときは普通だったという。そして帰り道の途中で、恋愛の話になって、そして突然腕を掴まれて告白された、らしい。
 あまり詳しい中身までは覚えていない。酒が入っていたのもあるけど、それ以上に聞きたくない話だったからだ。姉貴から男の話が出るだけで、オレの中の嫉妬というドス黒い部分が一気に膨れ上がるんのだ。醜い。とても醜い。そんな醜い思いを抱く自分が嫌になる。そしてそんな思いを抱いてしまうほど、姉貴が好きなんだと分かってしまう。二重の嫌悪感がオレの胸のうちを占める。ああ、嫌だ。
 姉貴はいつのまにか巨峰サワーを飲み干し、次の酒――もう何を呑んでいたかオレも注意を払っていなかった――に手をつけていた。明らかに潰れるペースだな、と思ってオレは自然とグレープフルーツサワーをチビチビやっていた。最悪の場合に世話をしてやるのはオレの仕事なのだから、オレがグデグデになってしまっては元も子もない。
「別に悪い人じゃないんだよ。すっごくいい人。でもさァ、いきなりコクられると・・・・・・何か違うんだよね」
 天井を見上げ、思い出すように喋る姉貴。他の男を思い浮かべる姉貴を見たくないから、オレは自分の手に持った缶を見つめた。
「何かって何だよ」
「分かんない。ただ、そういうんじゃないんだよね。好きは好きなんだけど、恋愛対象の好きじゃないんだよね、きっと」
 そういうのは、男よりも女のほうが多いだろう。男は女を見たら女として見るけど、女は男を見てもそれより前に友人とか、そういう括りで人を見てくる。その辺の齟齬があるから、男は勘違いするし、女は何故そんな勘違いをするのか理解できないのだ。
「なァ、別にそんなに気にすることなのか?」
 姉貴に彼氏が出来るなんて、我慢できることではない。でも、出来るなら出来たでこっちも諦められるかもしれないのだ。
「気にするって?」
「その、何つーか、好き合ってるとか、そういうの。付き合ってみればいいじゃん。それで好きになるってパターンもあるだろうし」
 オレなんて、最初に付き合った女は特別好きとはそういうんじゃなかった。ただ彼女がいるってのが格好いいと思ってたし、付き合ってみたかったというのが一番の理由だった。人は、それだけでも付き合える。
 まァ、結局の所面倒くさくなったのは事実だけど。
「・・・・・・アタシそういうのダメなんだよね。何か相手を裏切ってるような気がして。向こうはアタシのことスッゴク好きなのに、アタシはそうでもないって、何かね・・・・・・」
 それに疲れちゃいそうだよ、と言う。
「・・・・・・真面目だな」
「一番上だから」
「ハッ、二番目はどうせ適当だよ。・・・・・・なァ、好きになったこと、あんの?」
「アタシが?」
 そりゃそうだ、と頷く。姉貴は考え込むような仕草をして――相当酒が回ってるから、頭なんて回りゃしねェだろうけど――オレを見上げた。
「多分ない、かな。そういう風に見たことがないっていうのかなァ」
「あ、そう・・・・・・。で、断ったのかよ」
「うん。だって、そういう風に見てなかったし」
「姉貴の好みってどんなん?」
「・・・・・・・・・分かんない」
 ダメだ、この女。こんなに疎いヤツ、そうそういないと思う。
「でもねェ、その人が言うんだー」
「なんて」
「他に好きな人がいるんだって。何となく分かってたんだとかいうんだよ」
 何が分かってたっていうのさ、と姉貴は続ける。
「いるのかよ」
「・・・・・・・・・知らない」
 それは嫌だった。嫌で嫌で仕方なかった。彼氏が出来たという形ならば、多分諦めもつくだろう。でも、姉貴の心が特定の誰かに向いて、ただそれだけという状態は嫌だった。
「さっきと言ってることが違ェぞ」
「しーらない」
「ッたく・・・・・・」
 もはやグデグデだった。壁に背中を預けなくちゃ座ってるのも困難なほど。ヘラヘラとした笑顔で笑っている。
 CDが終わったので、別のにしようと立ち上がる。CDラックから適当に――それでも聞きたい曲だが――選んでコンポに入れる。曲が流れ出したのを確認して、元の位置に戻ろうと振り返ると、異変に気づいた。
「姉貴?」
 返事はなかった。壁に頭を預け、口をだらしなく開いて目を瞑っていた。
「・・・・・・・・・マジかよ」
 規則正しく上下する胸。間違いなく、眠っていた。愚痴るだけ愚痴って、眠りやがった。
「大体よ、そういう話はダチとかにするもんなんじゃねェのかよ・・・」
 弟に話したって、何にもならないと思う。
「おい、姉貴、起きろー」
 肩を叩くが、反応はなかった。ズルズルと横になって、ムニャムニャと何かつぶやく.
とんでもなく無防備極まりない姿。あらわになった細い首元が欲情を誘う。
「バカじゃねェか」
 酒に弱った頭を振って、姉貴を起こすことに専念しろ、と自分に言い聞かせる。
「おい、人の部屋で寝るんじゃねェよ」
「ゥん・・・・・・むりー」
 いったん浮上した意識は、だが体を動かすといった方には進まないらしい。
「ざけんなっつーの・・・・・・おい」
「はゥー・・・・・・」
 勘弁してくれ、と嘆きつつ、覚悟を決める。どうせ姉貴の部屋は隣だ。抱えて運べない距離じゃない。嫌なのは、姉貴に触れなくちゃならないことだった。
 それも平穏に寝るためだ、と言い聞かせる。このまま部屋で眠らせる方が、オレには拷問だった。
「どーしよーもねェヤツだなァ」
 ため息を吐き出し、煩悩を出来る限り隅っこに追いやって、姉貴を抱き起こす。力なくうなだれる人間を抱えるのが、こんなに難しいのだと知ったのはこのときだ。姉貴の片腕を首に回し、腰というか、腹というか、その辺に腕を回す。柔らかな感触が手や首筋に感じられて、頭の回路がどうにかなってしまいそうだった。
 そのまま立ち上がろうとしても、相手はまったく力が入っていないからズルズルと落ちていく。人一人分の重さも、かなりきついもんだと知る。
「ダイエット、必要そうな体じゃねェんだけどな」
 それでも十分重い。どうにかして運べそうな体勢を見つけ出すと、姉貴の足を引きずるようにして部屋を出る。僅かな距離を歩いて、姉貴の部屋のドアを開けて、明かりをつける。女らしい小物に彩られた部屋の、右脇にあるベッドには脱ぎ捨てた服が置いてあった。だが構っている暇はない。こちとら限界寸前なのだから。
 上手く姉貴だけをベッドに寝かせられればよかったのだろう。いや、むしろそうした。しようと試みた。
 だが、上手くいかなかった。
 オレの体は姉貴と共にベッドに落ちていった。腰の位置までベッドの上で、足は床に触れている。鼻孔を姉貴の匂いが埋め尽くす。このままずっと浸っていたい欲求に駆られたが、そういうわけにはいかない。腕の力で上体を起こすと、うつぶせでこっちを見たまま眠っている姉貴を見た。
 僅かに開いた、柔らかそうな薄桃色の唇。それを見た瞬間、それから目を放せなくなってしまった。
 1分近く見ていただろうか。うつぶせのままでは苦しいだろうと気づき、仰向けにするために姉貴の肩を掴んで回した。
「・・・・・・・・・」
 Tシャツの上からでもはっきりと分かる胸のふくらみ。どこか苦しげで、どこか欲情をそそる表情。白い首元。柔らかな曲線を描く輪郭。綺麗に手入れのされた髪の毛が肌とのコントラストを作り出す。
 今すぐむしゃぶりつきたい。その柔らかさを味わいたい。膨らむ欲求は留まることを知らず、頭の冷静なところを侵食していく。
 そっと、暖かく柔らかな頬に触れる。心臓の音がうるさい。ダメだと叫ぶ声が、どこか遠くの方から響いている気がする。指を這わして、唇に触れる。
 この唇を奪いたい。誰にも触れさせたことのないこの唇を。
 本能が、欲求が理性を瓦解させる。いつの間にか、顔を寄せて姉貴の顔を見つめていた。
 吐息がかかる距離。やばい。止まらない。止められない。ブレーキはどこかへ置き忘れてきたようだった。
 それでも、僅かな躊躇があった。
 それでいいのかと、内から大きな声が響いた。
 だけど。

 不意に背中に力を受けて、オレの唇は姉貴のそれを重ね合わされていた。

「―――――ッ!」
 何が起こったのか、まったく分からなかった。背中に感じる力に抗って、姉貴を見下ろす。
「・・・・・・・・・・・・」
 笑っていた。魅惑的な笑顔で。オレの背中に回した腕がソロソロと動き、首に触れる。
「・・・・・・・・・・・・・・・姉貴」
 訳が分からなかった。一体何が起きたというのだろう。
 答えはただ、唇に残る感触と、そして眼下で笑う姉貴。それが全てだった。
「ユーヤァ」
 甘く、蕩けるような声。クイ、と腕に僅かな力がかかり、オレの視界が下がっていく。目を閉じた姉貴の顔。口を僅かに開いて、待っている。
 もう何も考えなかった。
 そこから先のことは、あまり覚えていない。夢中で姉貴の唇を貪り、胸を揉みしだき、頂点のしこった蕾をついばんだ。姉貴は抵抗せず、オレにされるがままだった。
 姉貴の甘い声がオレの思考をどんどん奪っていったのは確かだ。夢にまで見た姉貴の体に、今こうして触れているという事実が、オレの理性を完全にかき消していた。
 姉貴の体は柔らかく、そして滑らかだった。白く、透き通るような肌が仄かに赤く染まっている。欲情をそそる体。今まで、どれだけの男が姉貴を自分の物にしたいと思ったのだろう。
 そんな姉貴に、弟のオレが今、触れている。
「アァ・・・・・・」
 初めて男に体を許すというのに、姉貴は甘い声を出していた。酒の所為かもしれない。だけれどもそれはこっちにも好都合だった。
「乳首、弱ェんだな」
「やァ・・・・・・ゥんッ」
 可愛らしく勃起した乳首をこねくり回すと、切なく、甘い吐息を漏らす。それが堪らない。
 ヘソを撫で、その先へ手を伸ばす。スウェットは簡単にオレの手の進入を許し、下腹部を覆う薄布に触れた。
「―――あッ」
 足を閉じようとしてももう遅い。オレの指は足の付け根に達していて、その女の中心に触れていた。
 そこは下着越しだというのに熱く、しっかりと濡れそぼっていた。
「濡れてる」
 耳元で囁く。
「言わ、ないでェ・・・ヒゥ!」
 我慢はもう限界に達していた。爆発寸前の欲情の塊を吐き出したくて堪らない。一つになりたいという欲求。そうなることを目的とした男と女の部位を、そうしたいという欲求。一つになり、溶け合わせ、快楽を貪りたいという欲求。
 薄布の下へ、指を潜り込ませる。毛の感触の奥の小さな子豆に触れると、ビクリと姉貴の体がが跳ねた。
「いいんだな」
「や、あッ・・・・・・あゥ、そこ、敏感なのォ・・・・・・・・・ヒャウッ」
 そしてその僅か下、男を受け入れる場所へ中指を伸ばす。そこはもうこれでもかというほどに粘液を滴らせていた。
「すっげ・・・・・・」
 指を少しだけ、差し込む。包み込むような粘膜の感触が感じられた。
 こんだけ濡れてれば、いいだろう。
 もう無理だった。
 スウェットを脱がし――姉貴は多少抵抗したが、酔っ払いにどうこうできる訳がない――下着を脱がす。
 生まれたままの姿の姉貴。全身を舐めるように見つめた。くびれた腰も、ふっくらとした腿も、胸のふくらみも、芸術的な曲線で描かれた体は綺麗だった。
 足の間に体を割り込ませる。恥ずかしさからか、姉貴は目をギュッと閉じていた。そんな仕草が可愛らしくて、頬にキスをする。
「行くぞ」
 先端を押し当て、力をこめて一気に突きこんだ。初めての印を突き破る感触が、確かにあった。
「――ッアゥ!」
 グッと目を閉じ、痛みに耐える姉貴。
「うァ・・・・・・すげ」
 痛いくらいにギュッと締め付けてくる粘膜。熱く、やけどしてしまいそうな感覚。
 こんな中で動いたら、すぐに果ててしまいそうだった。
 自分を落ち着けるように、姉貴の痛みが引く――そうそう引くもんじゃないだろうけど――のを待つ。
 しばらく、といってもそんな長い時間じゃない。一分程度だっただろうか。
「ユーヤ・・・・・・いいよ」
 その声をスイッチに、ゆっくりと動き出す。うめく様な声を漏らす姉貴。なるべく早く終わらせた方がいいのかもしれない、と思ったのかどうか、正直なところ良く分からない。
 どっちかって言えば、早く欲望を吐き出してしまいたかったのだろう。
 動きを制御することは出来なかった。本能の赴くまま、貪るように腰を振った。
「あッ、クァ・・・・・・ンッ・・・・・・ンファ・・・」
 粘液と、初めてで流れる液体が動きやすくしていた。ただの獣になっていた。相手のこと、姉貴のことなんて考えらなかった。
 初めてでないのに、まるで余裕なんてなかった。
 無我夢中で腰を振って、ピークはすぐにやってきた。
「・・・・・・ック!」
 高まり、頂点に達した欲望が吐き出される。動物の本能に従うように、一番奥につき込んだ状態で、オレは達した。
 全身の力が抜け落ちたかのような、そんな感じ。全てのエネルギーを注ぎ込んだ気がした。
 姉貴に覆い被さるようにして、肩で息をする。姉貴を見ると、照れたような、そんな笑顔をしていた。
 力の抜けた欲望の権化を抜いて、姉貴の横に転がる。綺麗にしようとか、そんなことは考えられなかった。
「ナカで出したでしょ」
「・・・・・・・・・・・・」
 別にいいけどね、と姉貴は実にあっけらかんと言った。
「何で・・・・・・」
「さァ」
 欲望が過ぎ去り、冷静さが戻ってきた頭が警報を鳴らしまくる。非常にとんでもなくマズいんじゃないかこれは、と。
「さァって」
「ユーヤだって、アタシとこうしたかったんでしょ?」
「―――ッ、どうして!?」
 焦るオレに、姉貴は分かるわよ、と笑う。
「女の子は敏感なのよ、好きな相手の視線に」
「なッ・・・・・・・・・」
「ねェ、別にいいじゃん、こういう話は」
 といって、姉貴はオレに体を寄せ、抱きついた。
 姉貴の方が一歩上を行っていた、ということなのだろうか。
 念願が叶ったことよりも、禁忌に触れてしまったということよりも、それが何とも情けなく感じられた。
 親父は泊まりだって言っていた。お袋だって部屋を覗きにはこないだろう。明日は休みだ。
 姉貴の柔らかな体に腕を回して、オレは目を閉じた。
 心の中でため息をつきつつ、眠りは実にあっけなく訪れた。

実にエロくない。
まぁ、エロ文章はムズイってのを再確認。
本当はもっとライトに表現できないかを考えていたのですが、どうもワタシの書き方だと・・・
無理でした。
そんなこんなで近親もの。
いかがでしょうか?
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