『just like an Amaranth』

フィギュアスケートの海外記事の翻訳、映画の感想などを気の赴くままに書いてます。

posted by stain-love
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以前、『キム・ヨナは過大評価、浅田真央は過小評価』という翻訳記事を載せたときに、ある読者様から、非常に興味深いインタビュー記事を教えていただいていました。

バンクーバーオリンピックのフィギュア競技でジャッジを務めたパトリック・アイベンスという方のインタビューで(現在はジャッジを退いています)、ジャッジングに関することが赤裸々に語られています。



"Patrick Ibens: “I Would Say 10% of Judges Are Completely Honest”


オリンピックフィギュアスケート審判、パトリック・アイベンスとのインタビュー。


Tony Wheeler: こんにちは、パトリック。私の質問にお答え下さる時間を取って頂いてありがとうございます。 まず、あなた自身のフィギュアスケートの経歴とこのスポーツに関わって何年経つのか教えていただけますか?

Patrick Ibens: 今年でフィギュアスケートに関わって40年になります。5歳の時にスケートを始めて、18歳で背中を痛めたため選手としては引退したんです。ここベルギーには他の男子スケーターがたった数人しかいない時代でしたよ。Eric Kroll, Tom Dujardin, Carl Dujardin, Hendrick Sassen,Danny Dillen, Patrick Van Reeth、そして私。Eric Krollがヨーロッパ選手権でなんとか24位になったことが、私の選手時代のベルギー選手が成し遂げた一番の成功だったのです!


Wheeler: 長年に渡って、どんな国際大会の審判を務められたのですか?

Ibens: ヨーロッパ選手権を何度か、四大陸、世界選手権、そしてジュニアとシニアのGPSを何度も。それに2006年のトリノと2010年のバンクーバーの2つのオリンピックで男子競技のジャッジを務めました。残念ながらバンクーバーではSPしか担当することができませんでしたが。(注:現在SPとFSでジャッジパネルは変更される。SPを担当したジャッジ9人の内、5人のジャッジが無作為に選ばれFSのジャッジも務めるが、Ibensは選ばれなかった)


Wheeler: 全4種目でジャッジをされるのですか?

Ibens: 私がジャッジをするのはシングルとペアだけです。アイスダンスは私向きじゃありません。私は“ホンモノのジャッジ”ですから。


Wheeler: というと?

Ibens: フィギュアスケートの内輪のジョークですよ。アイスダンスでは誰もがジャッジする前から結果を知っているにも関わらず、ジャッジたちは朝の5時から夜遅くまで全てのセッションが終わるまでじっと座っている、ってね。


Wheeler: それじゃあ一体誰がアイスダンスの結果を決定しているんですか?

Ibens: おおかたは以前に行われた競技の結果と、あなたのお国(アメリカ)が決めてるんですよ。それからまぁ時には、スケーティングの質も関わってくるでしょうね。しかし、それに関しては私の分野ではありませんので。


Wheeler: 2002年ソルトレイクシティ・オリンピックのペア競技で、あるフランス人ジャッジが所属するフランス連盟のプレッシャーを受けて特定の投票行動をし、それを認めるというスキャンダルが起きましたね。それ以来ジャッジングはより公正になったのか不公正になったのか、あなたはどう思われますか?

Ibens: 以前と何一つ変わっていないと思いますよ!どんなシステムを使っていようと、人間は常にいかさまの方法を見つけ出すもんです。それだからこそ私はバンクーバーの男子シングルSPの様な、素晴らしいジャッジパネルが組まれたことが嬉しいのです。そこに議論の余地はありません!


Wheeler: 何パーセントのジャッジが完全に公正であると(あったと)思われますか?

Ibens: 完全に公正?10%くらいでしょうね。


Wheeler: ええっ、そんなに低いのですか?どうして?

Ibens: 残念ながらね。でも理由は色々ですが。現在匿名性が採用されているのにも関わらず、いまだにジャッジは自分の所属している連盟を恐れて、(国家というバイアスがかかった状態で)自国選手をランキングが近い他国選手から守り有力選手をプッシュします。ジャッジは権力の回廊から外れることを恐れ、その国のレフリーとして招聘されるために、ある国の選手を推そうとするんですよ。そうでなければ、自分たちがなにをしでかしているのかまったく分かっていないか、ですよ!


Wheeler: あなた自身は今まで他の審判や連盟から、ある選手のスコアを高く、もしくは低くしてくれと依頼されたことはありますか?

Ibens: 一度だけ。でも高いレベルの大会ではありませんでした。ヨーロッパ選手権への出場を叶えるためには優勝しなければいけない、というある選手がいた、ある国のナショナルズで起きた事です。その時でさえ私は言いなりにはなりませんでした。結果として私は2度とその国には招かれませんでしたけれどね!


Wheeler: ジャッジの職を引退した今、公の場で自由に意見を述べることは許されているのですか?

Ibens: ジャッジをしていた時ですら、私は自由に発言していましたよ。開催中の大会について、そのイベントでジャッジを務めている人間が話しをすることは規則に反しますが、大会後のレビューミーティングが終了すれば、望まれれば誰にでも自分が見たことは自由にコメントすることが出来ます。私たちは自由な世界に生きているんですからね!


Wheeler: 長年ジャッジをされて来た中で、あなたのお気に入りのスケーターはいますか?

Ibens: う~ん、それは難しい質問だ!ミシェル・クワン、マイケル・ワイス、ジェフリー・バトル、アレクセイ・ヤグディン、ジェイミー・サレー&デイヴィット・ペルティエでしょうか。最近のスケーターではアリョーナ・サフチェンコ&ロビン・ゾルコビー、パトリック・チャン、フローラン・アモディオ、デニス・テン、ハビエル・フェルナンデス、ヤニック・ポンセロそれとジョアニー・ロシェットですね。


Wheeler: もしそれらの特定の選手をジャッジするとしたら、ジャッジし難いと思うでしょうか、それとも出来る限りより厳しく見ようとするでしょうか?

Ibens: 正直に言って、彼らをジャッジすることに何も厄介な事はありませんでした。何故ならば、私は個人的に彼らのことを知っていますし、彼らも私のことを知っています。彼らが何か私に聞きたいことがあった場合、私は正確な答えを彼らに与えられるし、私に出来る事があればいつでも彼らを助ける、ということを彼らは分かっています。しかし私がジャッジになった時には、全ての個人的な関係は消滅し彼らはジャッジすべき対象の選手となり、 演技に見合った得点を受けるでしょう。良かろうと、悪かろうとね!それが唯一の方法なんですよ。そうすることが、ジャッジとしてというより、一人の人間としてより一層の尊敬を受けることにつながるのでしょう。


Wheeler: あなたがジャッジをした中で、シングル競技での一番のパフォーマンスはどれですか?

Ibens: 1999年スケートアメリカでのサレー&ペルティエの“Love Story”です。ジャッジしながら泣いてしまったよ!


Wheeler: ではジャッジングそのものについて、いくつか質問させてください。2003年秋の国際大会中に新採点システムに移行しましたが、審判たちはどの様なトレーニングを受ける/受けましたか?

Ibens: ジャッジたちはISUセミナーをずっと受けています。最新のルールと古いルールの変更と同時にジャッジする際に求められる事が説明されます。ジャッジの時に求められる事とは、見て直ぐ分かるエラーと逆に分かり難いエラー、ダウングレード、つなぎ、シングルのSPでソロジャンプに入る前のステップ、それらに加えその他多くの事柄が含まれます。同時にSPとFSの違い、コンポーネンツをジャッジする際に求められる事も説明なども。もっともルール変更を読んでおくのは各国連盟とジャッジその人の負うべき責任ではありますが。ルールはISUのウェブサイトで誰でも自由に閲覧できるのでね。あらゆる競技会で、ジャッジは最初に総則を読み返す会合を持つのです。全ての競技が始まる前の一時間、私たちは再度全てのルールとプログラムのエレメンツとコンポーネンツの基本を読み返してからジャッジを務めるんですよ。


Wheeler: シングルとペアでの5つのプログラムコンポーネンツで、あなたの自身の定義を手短に述べて頂けますか?実際の定義を諳んじておられるのでしたら遠慮なくそれを生かして下さい。ただし、カンニングするくらいならば、むしろあなたご自身の言葉に置き換えてお聞かせくださるようお願いします!(注:引用文を彼は元の文章から変更することなく即座に答えた。彼が答えを考えることに時間をかけず、即座に定義を答えたことの方が私にとってはより興味深いことに思える。)

(以下、アイベンスの答えたこと)

Ibens:  
○ スケーティングスキル
1. よどみない、見事な滑りと、エッジの深いステップとターン
2. 多様なスピードと加速度
3. 他方向のスケーティング

○ つなぎ
技から技へ移行する際の動きがあること、そしてそこに多様さがあること。いつも同じ動きであってはいけない。例を上げるならステファン・ランビエールのFS。彼はつなぎの際にいつも同じ上半身の動きをする。他にもたくさん動きを持っているというのに、だ。

○ パフォーマンス/実行
1.『私は~/私は~になる』という感覚を抱かせる選手
2. パーソナリティー(競技を見た5分後にその選手のパフォーマンスを思い出せないようなら・・・彼らにはパーソナリティーがないということだ)
3. 表現
a) まるで審判席や観客席に飛び込んでくるかのような印象を持たせるジャンプ
b) スケーター独自の世界に観客を引きずり込む
4. それぞれの動きの質の高さ。各動作は途中で切れぎれになるのではなく、1つの動きの終わりと同時に次の動きへと繋がらなければいけない。

○ 振り付け
1. 美しい振り付けのある良いプログラム、そしてプログラムを通して良いレイアウトであること。
2. 良い選曲

○ 解釈
1. 選手が旋律にきちんと乗っているか。
2. 音楽が盛上がったら動作も上がっているか、そしてゆったりと穏やかな時は動きもまた同調しているかどうか。
3. スケーターがキャラクターになりきっているか。
4. ただ技術を披露するのではなく、スケーターがきちんと音楽を解釈しているかどうか。



Wheeler: あなたの定義を基準にすると、あなたがジャッジした今季の男子シングルの中で、上記の5コンポーネンツのそれぞれでどの選手が一番優れていたと思いますか?

Ibens: スケーティングスキルでは高橋。つなぎと振り付けではチャン。パフォーマンスではライサチェク。解釈ではアボット。


Wheeler: ライサチェク対プルシェンコですが、2人それぞれの長所と短所について、個人的にどう思われますか?

Ibens: プルシェンコは自分にとても自信があり、また自分のやっていることに信念を持っているね。彼の短所は彼がまだ6.0採点システムを捨てきれておらず、一つ一つの動作の重要さを計算できていないところです。でもそれが今のやり方だから。
ライサチェクはファイターであり、ハードワーカーだ。いつだったか私は『あぁ、この子には絶対無理だ。素質がないな』と思ったことを覚えています。それを考えると、自分にできるベストを尽くすという彼の情熱が勝ったと言えますね。彼の短所は・・・なんだろうな。多分、トリプルアクセルの踏切りのチートかな。時々、彼は踏切り時のスキッド(あるいはプレ回転)に半回転以上かけるので、言うなればトリプルサルコーになっているのです。彼について言える問題はそれくらいですが、まぁ大した問題ではありません。いつも起こるわけではないですから。



Wheeler: プルシェンコ自身を含め沢山の人から『SP、FSの両方で4回転ジャンプ(トゥループ)を決めたにも関わらず、それに値する評価がされなかった』と非難の声が上がっています。前述のコメントで、あなたはプルシェンコが『全体図を見ていない』とおっしゃいましたが、これについてはどう思いますか?また、この新システムについてのあなたの意見は?

Ibens: 彼は4回転トゥループを試みたこと、そしてそれを成功させたことについては、それに値する評価を受けましたよ。しかし同時に、他のジャンプの着氷のマズさで得点も失いもしたんです。しかし、1位と2位を分けるのが4回転ジャンプの有無だけだと言うのなら、スウェーデンも黙ってはいないでしょう。なぜならスウェーデンのエイドリアン・シュルタイス選手だってあの夜最高の4回転トゥループを決めたにも関わらず、5位にも入らなかったんですからね!(シュルタイスはFSで13位だった)
一方で、大抵の場合フィギュアスケートには“アート”が入ってるのだから、やはりただ氷の上で飛び回る以上の何かが求められるわけです。
カタリナ・ビットがカルメンで勝ったのを覚えていますか?他の選手が様々なジャンプを決めていたにも関わらず、彼女はが跳んだのはトゥループとサルコーの2種類のトリプルだけでしたが、にもかかわらず彼女は正に氷上のアーティストでしたよ!



Wheeler: ではあなたは6.0システムよりこの新システムがお好きということですか?詳しく教えてください。

Ibens: う~ん、どちらにも良い部分と悪い部分があるから、一言では言えないね。
新システムの良い所は、選手たちがやっとステップにも力を入れなければならない状況になったという部分です。またクリーンなエッジ使いが必要になったこととか、他にも色々あるけど。それから先ほども言ったように、ただ難しいジャンプだけでなく全ての動作を評価されるようになったこともあるね!逆に新システムの悪い部分は、全てのエレメンツが似通ってしまったこと。特にスピンとステップがね。それから独創性が減ってしまったことも良くない。
この新しいシステムで一番嫌いなのは、能力の無いジャッジたちを助けるために作られているところです。優れたジャッジたちはただ平均点をつけるのではなく、ジャッジ自身に対する査定を受けるリスクを背負ったうえで、各コンポーネントを別個にきちんと判定し、選手が受けるべき評価をきちんと下そうとしています。能無しのジャッジはスコアを適当に推測したり平均点をつけるのです!しかし、コンポーネントで大きな票幅を持ちたい者は、のけ者にされたりするんです。たとえば、国際選手権で、最初の3グループを判定する際、5.50から7.00の間をつければ安全なんです。そして最後のグループが滑るときには、7.00から8.50の間をつければ、その人はまた安全、というわけなんです!
そしてまた、ある意味でこのシステムはこのスポーツをスポーツの域から外してしまったとも言えます!2人のブライアンの戦いを覚えていますか?ボイタノがプログラムの最後で2つ目のトリプルアクセルを加えて、結果、金メダルを取りました。しかし今日のスケーターたちが同じように何か技を追加しても、追加のポイントを得る事はできません。意味などないのです。跳ぶことが出来るジャンプやスピンの数が予め限られているのですから。



Wheeler: プルシェンコの話に戻りましょう。プルシェンコが彼自身と彼の競技仲間(ブライアン・ジュベール)が“つなぎを全く”行わなかったのはジャンプに集中しすぎたせいだ、と明確にコメントした際には、大きな議論が巻き起こりました。この時あなたは競技会後にこの件に関して行われたプレスカンファレンスに出席されていましたか?

Ibens: いや、私はヨーロッパ選手権ヨーロッパ選手権には行かなかった。だけどこの件については何もかも聞いたよ!


Wheeler: 彼のコメントについてどう思います?

Ibens: そういうことを言うのはバカげたことだと思うが、プルシェンコはブロンドだったよね?(ブロンドは概して脳みそがないという欧米のジョーク)いや、只のジョークだよ!まあ、彼の言いたかったことはわかるけど、そのコメントで彼はジュベールの格をも引き下げてしまったね。あり得ないよ!私はジュベールのファンというわけではないが、ライバル選手をネガティブなスポットライトの下に引きずり出すことは、アスリートとして一番してはならないことだと思うね。


Wheeler: フランスのメディアで報道された、ジョセフ・インマン氏が送ったとされるプルシェンコの採点を妨害する旨のEメールを、あなたも彼から直接受け取りましたか?そうだとしたら、バンクーバーの男子競技のジャッジのされ方に何らかの影響があったと思いますか?あなた個人の判定には、影響がありましたか?

Ibens: ええ、そのEメールは受け取りましたが、私を知る誰もが私がそんなものに影響されるような人間ではないことを知っています。このインマンのEメールと同じようなメールは以前にも一度送られてきたことがあります。冒頭で言った通り私は正真正銘のジャッジですから、自分の意志を決めるのに誰のEメールもコメントも必要などないのです!自分でちゃんと決められますからね。誰をジャッジするのであれ、私は自分の見たものだけをジャッジします!


Wheeler: あなたはSPのジャッジをされましたね。プルシェンコとライサチェクのSPでのパフォーマンスはどう思われましたか?また、トップ3の差はSPにおいては1ポイント差以下だったことを考えると、高橋大輔に対するジャッジはどう考えます?このSPのジャッジが良くも悪くもメダルの結果に響いたか、結果があなたの判定と大きく違っていた者がいましたか?

Ibens: SPが終わってすぐ、私にはトップ3の点差がが1ポイント以下しかないということがわかっていました。ジャッジパネルが良い仕事をしたということもね!SPの時、あの3人はそれぞれ違う理由で同じくらいに良かった。私の個人的な意見をいうとSPでは高橋が勝ったと思ったが、今はどんなことでもあり得るからね。テクニカルパネルがどうレベル付けしたか、またダウングレード評価を下したかなんて、私たちジャッジには知る事ができないからね。それにジャッジは自分が前に下したスコアを見ることができないから、うっかり別の選手に高い得点を下すこともあり得る。まぁ、優れたジャッジであれば打開策も知っているがね。


Wheeler: その最後のところを詳しく教えてください。

Ibens: もし私が、そうだな、A選手に7.25をつけたとする。そしてそれから10人滑った後に今度はB選手に7.00を付けた。でも私の考えではB選手の方が良い滑りだった。そうなった場合、私は間違った選手に1位をあげてしまったことになる。
だが優れたジャッジなら、最初に滑った選手のコンポーネンツの合計を出す。平均合計点7.00と言っておこうか。そして、それを覚えておいて、次の選手の時も同様の基準で採点する。演技が全コンポーネンツにおいて優れていれば、基本平均点数は7.00より高くなるというわけだ。



Wheeler: しかしこのシステムは選手対選手の比較採点ではなく10ポイントスケールの採点なわけでしょう。それなのにこういうことが起こるということは、一度に沢山のことを見なければならないからでしょうか?

Ibens: イエスでありノーだと言える。さっきも言った通り、フィギュアスケートはスポーツの域から外れてしまった。スポーツというのは、1は2よりも優れ、2は3よりも優れている、というのがスポーツなんだよ。比較でしか結果を出すことは出来ないんだよ。スピードスケートならばタイムを計り、技術と芸術面を採点する必要もない。速ければいいんだからね!競技を10ポイントスケールで採点するなんて、土台無理なことだ。


Wheeler: あなた、もしくはジャッジたちの多くは、本番での選手たちの能力を予め把握するためにランスルーや練習を観たりしますか?

Ibens: 私に限って言えば自分の仕事にフォーカスできるように、そして自分のムードを正しい方向に持っていくために、練習をひとつだけ見るようにしている。特に細かい部分を注視することはない。どうせ彼らも競技のストレスの中では違った動きをするからね!ジャッジの中には全ての練習を観に行く人もいる。どうしてかは知らないけどね。私は練習中には細部を気にして見ないから、本番の演技のイメージはとくに湧かないね。リアルタイムでは沢山のことに集中しなければいけないから、時に困難を感じるよ。エレメンツやミス、ルールや5コンポーネンツ、同時に全てに注意を払わなくてはいけない。これは時に難しいことだが、良いジャッジは自分をそれに適応させるよう慣らすことができるんだ。無意識に全ての小さな事を拾い上げ、そしてプログラム中の重要なことに集中するんだよ。


Wheeler: あなたはコンポーネンツがフェアに判断されていると思いますか?あるいはただ形ばかりの物だと思いますか?あなたは先ほど、このシステムは結局、基本的に選手と選手を比較するだけに使われているとおっしゃいましたが。

Ibens: コンポーネンツがフェアに判断されているとは思わないが、形ばかりのものだとも思わない。ジャッジたちの中には芸術的バックグラウンドに欠けている者がいるということ以上に、馬鹿げた平均点の安全圏にぬくぬくと浸かっている者たちがいるということだ。


Wheeler: ではあなたは、この先競技会のジャッジパネルに招致されないかもしれないリスクを恐れるジャッジたちが、全5コンポーネンツに対し似通った採点をし『温室』に籠っている、と思われるわけですね?

Ibens: まさにその通り!!


Wheeler: オリンピック男子シングルの王者は誰であるべきだったと思いますか?その理由は?

Ibens: 私は高橋がチャンピオンになるべきだったと思ってるね。彼は全てを持ち合わせているよ!スケーティングスキル、カリスマ、そしてテクニック。いくつかのジャンプにちょっと手こずって、転倒も一回あったことが本当に悔やまれるよ!


Wheeler: わかりました、彼はベストのパフォーマンスというわけではなかったですから・・・ではライサチェクとプルシェンコではどちら?!

Ibens: 高橋!


Wheeler: どうやらこの質問には答えてもらえないようですね。

Ibens: ライサチェクだ!プルシェンコかライサチェク、その2人のどちらかと聞くなら、迷わずライサチェクだと答えられるよ。だがあの夜の王者は誰だったかと言うならば・・・高橋だ。


Wheeler: バンクーバー期間中、他の競技は観ましたか?2014年ソチ大会に向けて次の4年間で注目したいスケーターは誰ですか?

Ibens: ペアの演技と男子のFSだけ見たよ。ジャッジを務めなかったからね。注目すべきなのは、パトリック・チャン、デニス・テンとフローラン・アモディオ。ハビエル・フェルナンデスも忘れちゃいけないね。


Wheeler: ジャッジをお辞めになった後の予定は?

Ibens: まだ詳しくは決めていませんが、国内外のスケート選手たちにアドバイスを与えていきたいですね。それから新米ジャッジたちのために、新しくジャッジを始めるにあたってどんなことに気をつければいいか、などのマニュアルを作りました。100ページ以上あり、ジャッジのありとあらゆる側面を網羅しています。また来たる世界選手権で、ベルギーのテレビ局のコメンテーターを務める予定です。


Wheeler: お時間をいただき、どうもありがとう!


おわり2

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