「いったい今季の日本男子は、どうなっているの?」
パリで「君が代」を聞くことになるとは思っていなかった。
そう書いても、失礼にはならないだろう。何しろ無良崇人(むら たかひと)本人すらも、「表彰台は狙っていたけれど、優勝できるとはまったく予想していなかった」と口にしたのだから。
GPシリーズ第5戦目となるフランスのエリック・ボンパール杯で、唯一出場した日本選手である無良が優勝した。日本在住の記者は誰も来ておらず、欧州駐在の通信社の記者が数名、といういつになく寂しい取材群の前での堂々優勝。これで今季はスケートアメリカの小塚崇彦、中国杯の町田樹に続いて3人目の日本男子がタイトルをとったことになる。5大会の男子のメダル合計15個のうち、8個が日本男子の手に渡った。
「いったい今季の日本男子は、どうなっているの?」と、何人の海外記者たちに聞かれたのか覚えていない。
実力者揃いの日本で、ライバル意識がもたらした高いモチベーション。
日本男子のレベルが高いことは、今更繰り返すまでもない。だが今季、GPシリーズでは昨年まで比較的ノーマークだった町田、そして無良らがタイトルを手にする展開となった。
このフランス大会では、元欧州チャンピオンのフローラン・アモディオらを退けての無良の優勝である。スケートカナダでは8位に終わったが、中国杯での町田の優勝が刺激になったのか、と聞くと頷いてこう口にした。
「確かに町田選手の中国杯優勝を聞いたとき、自分ももっといい演技をしたい、と思いました」
これまでフィンランディア杯などで優勝した経歴はある無良だが、GP大会でのメダルは今回が初で、いきなりの優勝である。
「やればできるかも、ではなくて、やらなくてはいけない、そうでなければいつまでも状況は変わらない、という気持ちで滑りました」
高橋大輔、小塚崇彦、織田信成のトップ3人の壁が厚かったところに最初に切り込んだのは17歳の羽生結弦だった。そして今季は町田、さらに無良らの国際舞台での大活躍。これはやはり、ライバル意識がモチベーションを高めた相乗効果というよりないだろう。それだけ実力の高い選手が揃っているという証明であり、ベテラン勢もうかうかとはしていられない。
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