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フィギュアスケートといえば女子選手ばかりが取り上げられてきたスポーツだが、ここ数年は男子の躍進が目覚ましく、女子を凌駕する勢いだ。
中でも高橋大輔、織田信成、小塚崇彦の3強を脅かす存在に急成長しているのが新星、羽生結弦(17)。
11月23日からスタートするNHK杯にも出場予定で、今回はどんな演技を見せてくれるのか、世界中の注目が集まっている。
男子フィギュアの新星・羽生結弦の魅力
先日行われたスケートアメリカの試合で、ショートプログラム歴代世界最高得点をたたき出したのが羽生結弦だ。2種類の4回転を軽々と決め、もともと得意なトリプルアクセルを完璧に飛んで世界をあっといわせた。少女のようにか細くしなやかな身体と可憐で気品のあるルックスに加えて、高い技術と魂の入った演技が彼の魅力だ。
世界中を魅了した渾身の演技
羽生はとにかく逆境に強い。
東日本大震災が起きた日、彼はいつも練習を行う仙台のリンクで練習中で、スケートシューズをはいたまま避難したという。
生きていくことさえ不安な避難所生活や、ホームリンクの閉鎖による練習場所の喪失で心が折れそうになりながらも、被災地を勇気付けるため各地のアイスショーに出場することを選ぶ羽生。
そして、まだ完全でなかった4回転をアイスショーの中に取り入れ、なんと、ほぼ取得してしまう。
しかも、その年初めて出場した世界選手権で銅メダルを獲得し、世界中を驚かせたのだ。
この時のフリーの演技「ロミオとジュリエット」はフィギュア史上歴史に残るほどの名演技だった。
ふらついて転倒してから立ち上がり、体中を限界いっぱいまで使った渾身のステップは見るものの心を完全に掴んだ。
この演技が動画再生サイトYoutubeで再生回数100万回に達しようとしていることからも、彼の演技に魅了されたひとの多さが分かる。
実はこのとき彼は右足を捻挫して痛みをこらえていたのだが、そのことも決して口にせず、なにくそという思いを演技にこめたと後のインタビューで語っている。
逆境をバネにするアスリート魂
羽生はいつも演技のあと、大汗をかいて息を切らしている。演技の途中でふらついたり、唇が紫になっているときもある。彼が喘息を患っていることはファンの間では有名だが、本人はそれを決して言い訳にしない。
わずか17歳だというのに、心は完全にアスリート。冷静に自分の演技を見つめ、自分の思いをしっかり語ることができる頭の良さも持ち合わせている。
羽生結弦が人をひきつける理由は、さまざまなマイナス要因を反動にして演技にぶつけるという類稀なる才能の持ち主だからではないだろうか。音楽や曲想をもっとうまく表現する選手は多数いるが、羽生結弦の表現力は、演技に合わせて自分自身の内面を臆することなくさらけ出すことのできる特殊な能力であるように感じるのだ。
NHK杯には彼以外にも高橋大輔、小塚崇彦、ハビエル・フェルナンデスといった優勝候補が名を連ねている。そんな中で羽生結弦がどこまで自分を表現できるか、注目したい。
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Written by 杉本レン
Photo by Danila Panfilov
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