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【国際】

年収1億円超 所得税率75%に増 仏リッチ層英へ脱出

ロンドンきっての高級住宅地で14日、「フランス人はこういう物件が好き」と紹介する不動産会社幹部のサイモンさん

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 フランスで年収百万ユーロ(約一億四百万円)を超える富裕層の所得税が来年から75%に大幅に上がる影響で、税率が45%の英国を中心に国外移住が始まっている。キャメロン英首相は「赤じゅうたんを敷いて、移住を歓迎する」と歓喜。フランスの政治家らの神経を逆なでしている。 (ロンドン・有賀信彦、写真も)

 「美しい公園が目の前にあり、フランスの学校、レストラン、ショップが近いサウスケンジントンが、フランス人のお気に入り」

 ロンドンの不動産会社幹部、サイモンさんはそう言って、マンションを指した。サウスケンジントンはロンドンきっての高級住宅地だ。映画の舞台となったノッティングヒルも人気という。同社を訪れるフランス人は百二十五万〜七百四十五万ユーロという超高級物件がお目当て。

 人気地区の物件は、別の不動産会社幹部が「いい物件を是が非でも押さえようと、提示以上の金額でフランス人が契約するケースが出ている」と明かすほどの取り合いに。複数の不動産会社の話を総合すると、フランス人からの問い合わせは昨年よりも二割前後増えている。

 フランスの所得税は現在、約七万一千ユーロ以上の年収所得者に対する48%が最高だ。しかし、かねて「金持ちは嫌いだ」と発言しているオランド大統領が今年二月の選挙戦で、富裕層の所得税の引き上げを表明。27ポイントのアップが来年二月に迫る。

 配当所得にかかるキャピタルゲイン税も最高で60%へと25・5ポイントもアップ。英国は逆に一八・五万ユーロ以上の年収所得者の所得税を来年、50%から5ポイント削減する。キャピタルゲイン税も英は最大28%と低い。

 今年、フランスからシンガポールに移った投資会社の創設者は米ブルームバーグに「大統領のあんな発言を聞いたら、安心してフランスには住めない」と告白。フランスの代表的男優、クリスチャン・クラビエさんも今年、ロンドンに移った。

 ルイ・ヴィトンなどを経営する会社の最高幹部は九月に「フランスに税金を納めるつもりだ」と言いながらもベルギーに市民権取得申請を済ませた。ベルギーにはキャピタルゲイン税がない。

 こうした富裕層がフランス国内に所有する不動産を処分。英紙デーリー・メールによると、百万ユーロ以上の不動産約五百件が売りに出された。昨年の二倍という。ロンドンで高収入の職種をあっせんするインターネットサイトでは、フランス人が求職者の51%を占めている。移住後の職場探しが数字に反映したとみられる。

 高額所得者流入の動きにホクホクなのがロンドンのジョンソン市長。「フランス革命前のような圧政だ」とオランド大統領の税政策を皮肉り「フランスの有能な人々を喜んで迎え入れる」と発言。こうした発言に刺激されたフランスの政治家らは「キャメロン首相はタックスヘイブン(租税回避地)をつくろうとしている」とかみついている。

 ロンドンの仏大使館広報担当官は「約五百人が毎年、仏領事館に英国居住を登録するが今年も数に大きな変化はない」と反論。「富裕層の国外移住はデマだ」と主張するが…。

 

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