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[演出部・後編]
演出部”とは、いわゆる助監督のこと(監督を含める場合も)
人数に応じて、上からチーフセカンドサードフォースフィフス……とナンバリングして呼ばれます(アギトではもっぱら、チーフ・セカンド・サードの3人体制)。

芸は身を助監督?

なにげにカチンコを構えるサード助監督・柴崎氏
助監督というと、“汚れ仕事”というイメージがありますが、アギトの現場はお上品。助監督もスーツ着用です。

って、助監督として働きながら、刑事役で出演するための衣裳。いわゆる内トラ(内輪スタッフによるエキストラ出演)です。
第10話、翔一を河野刑事が取り調べるシーンで、調書をとっているのが彼。


第18話、北條透の回想。
激しく降りしきる雨の中、凶悪犯の凶弾が、先輩刑事・司を襲います。
やや? 凶悪犯が、働くスタッフの手伝いに? 移動撮影用のレールを固定するクサビを配ってます。
わりと親切な凶悪犯…。
あまつさえ、移動車(移動撮影のトロッコ)を押してくれたりして。ありがとう凶悪犯!

って、こちらはセカンド助監督・田澤氏。何かと内トラ出演の多い、芸達者な彼らですが、そうした時も演出部としての仕事はきっちりこなしながら。

第12話、ゼブラロードことエクウス・ディエスに襲われたパトカーが、迷走のあげく乗用車に激突!
ぶつかるパトカーも大破なら、ぶつけられた乗用車も大破。映像上は2台ですが、撮影上では3台もの車をクラッシュさせるという、石田監督らしいアグレッシブなシーンです。

ぶつけられる乗用車は、じつはセカンド・田澤氏の愛車。
リハーサルに本番にと、何度となくクラッシュのあげく、シャフトまで折れ曲がる大破ぶり。このまま廃車処分となりました。
愛車を捧げた当の本人はというと、なぜかパトカーの後部座席で女装してたりして。

愛車の最期を女装で体感? スゴい趣味……って、アンノウンに襲われる妊婦のスタンドイン(吹き替え)をつとめているわけです。
身も心も捧げた上に車まで! これぞ助監督魂?

助監督の「内トラ」やスタンドインは、面白おかしく語られることも多いのですが、実際にはこのように、「役者さんにはさせられないほど過酷だが、スタントマンにお願いするほど技術は必要ない」ような汚れ役がほとんど。
でも、さすがに演出意図を把握しているだけあり、並の役者さんよりも達者だったりして、監督もついつい助監督を指名してしまうのです。
たとえば劇場版、ハンバーガーをゴミに出す店員役(それを紗綾香がくすねる)を、サード・柴崎氏がつとめましたが、彼は劇場版の担当ではないにもかかわらず、わざわざスケジュールを調整してまでの田崎監督のご指名。いかに、監督と助監督が、信頼の絆で結ばれているかを示すエピソード。

演出部はビッグウェイブ

その田崎監督の傑作のひとつ、第42話。俗に「あかつき号編」と呼ばれるエピソード。
さんふらわあ号に結集した演出部一同に、田崎監督は信頼の証として、1字ずつ自分の姓を与えた……なワケありませんが、なぜかそうなってます。ちなみに、柴崎氏の「崎」は田崎監督の「崎」と同様、「」が正式。

嵐の波浪を表現するため、窓に向かって、バケツリレーで水をぶっかけつづける演出部。
チーフ助監督・黒木氏は、撮影に先だって、バケツ運びの素振り練習をして臨みました(実話)。そうした努力の甲斐あってか、演出部のバケツさばきは、もはや名人の域。彼らのバケツワザを称して“ビッグウェイブ”と呼ぶ、アギト現場用語も生まれたほど(命名・長石監督?)。

大ワザだけでなく、細かい配慮も欠かしません。船のシーンの間中、美術チームと共同で、船の窓を濡らしつづけます。こうした彼らの努力が、映像にリアリティを生みます。
かくして、船内の撮影であっても、寒風吹きすさぶ船外作業がつづく演出部なのであった……。

ついでに水特集をば。
11・12話、伝説の“西湖ロケ”では、もちろん演出部も湖水につかりっぱなし。

第9話、オクトパスロードことオクティペス・モリペスによって、地面から水が吹き出すカット。

少年がボールを取ろうと手を伸ばすと、そこから水が噴き出す……という長石監督のプランにしたがい、ロケ先の地面を再現し、圧搾空気で水を噴き出す仕掛けを、美術チーム&操演が共同制作。
撮影部は機材が水を浴びないように、完全防御体勢に余念がありません。

仕掛けは大成功! みごとに水が噴出。

……でも、このカットでスタンドインをつとめた田澤氏は、落ち葉混じりの泥水の直撃を、モロに顔面で受け止めてたりして……。

← 50話、地のエルとの戦いのあげく、ギルスが橋から落下。
あっ、ギルスの後を追って、長石監督の台本が川に!
それほどの強風にさらされながらの撮影でした。
救出された台本は、あわれぐしょぐしょ。それでも、大事な演出プランの書き込みは無事です。
ダイバー船を率いて、台本の、もといギルスの救出に向かうサード・柴崎氏。
舳先に颯爽と立って指示をくだす姿も堂に入ったもの。もはや立派な海の男?

海の男といえば、当然このお方。
湖・川・海・プール・水槽・風呂と、あらゆる「水落ち」を制覇するいきおい。これから極寒の川に飛び込もうというのに、この余裕の表情!

柴崎氏らに救出された後、友井さんいわく、「やはり河口だと、同じ川でも浮力が強いんですよね。腹に力を入れないと、キレイに体が沈まない……」とのこと。
と、友井さんっ、発言が完全に「水落ちのプロ」と化してますっ。最後の最後までゴメンなさい。

でも助監督のお仕事は、本当はもっと分かりにくいものだったりするのです……というわけで、さらにディープな後編につづく!

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