済州オルレ(トレッキングコース)で女性観光客を殺害したカン・ソンイク被告(46)に対する、国民参与裁判(日本の裁判員裁判に相当)による判決公判が、19日午前10時から20日午前2時まで16時間にわたって行われた。カン被告はオルレを歩いていた女性観光客に対し、性的暴行を加えようとした末、殺害して手首を切断し、公共の場所に遺棄するという猟奇的な犯行により起訴された。争点となったのは、カン被告が女性を殺害する前に、性的暴行を加える意図があったかどうかという点だった。
済州地裁刑事2部(崔竜浩〈チェ・ヨンホ〉裁判長)の審理で行われた裁判で、カン被告は「オルレで小便をしていたとき(オルレを歩いてきた)被害者と鉢合わせし、自分を痴漢だと思った被害者が通報しようとしたため、かっとなって偶発的に犯行に及んだ」と主張した。これに対し検察は、午後5時になって突然証人を出廷させた。麻薬事件と公務執行妨害事件で有罪が確定し、刑務所で服役中の受刑者2人だった。2人はカン被告が逮捕、収監されたとき、留置場で同じ部屋になった。2人は「カン被告は『被害者の体のあそこを触った』と自慢げに話していた」と証言した。カン被告が被害者に性的暴行を加えようとしたことを自ら明らかにしたというわけだ。
その後、陪審員たちの見解は分かれた。陪審員9人のうち6人が性的暴行罪を認めた一方、3人は無罪とすべきとの意見を述べた。裁判官は多数意見に従い「殺害された女性が、上着を脱がされた状態で発見された理由について、カン被告は納得できるだけの説明ができなかった」として、性的暴行罪を認めた。
だが、量刑については陪審員によって大きく差が出た。懲役23年を主張した陪審員が4人、無期懲役を主張した人と懲役20年を主張した人がそれぞれ2人、懲役24年を主張した人が1人だった。強姦(ごうかん)殺人などの重大犯罪の場合、大法院(日本の最高裁判所に相当)の量刑基準である「最短20年前後」の有期懲役刑や、無期懲役以上の刑を言い渡すことが可能だ。検察は死刑を求刑したが、裁判官は再び多数意見に従った。崔裁判長は「陪審員の多数意見を尊重し、被告人を懲役23年とする」との判決を下すとともに、電子足輪を10年間装着し、個人情報を10年間公開することや、性犯罪に関する治療プログラムを40時間受けることを命じた。これに対し被害者の遺族は反発した。被害者の弟(39)は「国民感情と全く相容れない司法の判断には全くもって承服しかねる。第2、第3の同種の犯罪が起こることを可能にする判決だ。犯人が再び社会に出てきたら、われわれ家族や、ほかの一般の人たちに脅威を与える可能性がある」と非難した。
女性に対し性的暴行を加えようとし、殺害した事件をめぐっては、京畿道水原市で発生した女性バラバラ殺人事件の呉元春(オ・ウォンチュン)被告も、一審で死刑判決を受けたものの、二審は無期懲役に減刑し、批判する声が高まった。また、慶尚南道統営市で小学生に性的暴行を加えようとし、殺害したキム・ジョムドク被告は、一審で無期懲役を言い渡された。