大学設置基準見直し 検討開始11月21日 19時21分
大学の設置認可の審査基準の見直しに向けた、有識者による検討会の初会合が、21日開かれ、出席者からは、地元への貢献度などを基準に盛り込むべきだという意見などが出されました。
この検討会は、田中文部科学大臣が、大学の数が大幅に増えて、経営の悪化や学生の学力低下などの問題が起きていることから、設置認可の審査基準を厳しく見直す必要があるとして、大学関係者や公認会計士、それに自治体の代表者などを委員として設置されました。
きょうの初会合で、田中大臣は「教育は人生を豊かにしてくれる。生きがいを見つけ、自立した日本人が一人でも多くできるような教育体制を作っていきたい」とあいさつしました。
このあと、委員からは、審査基準の中に、地元の自治体や企業に貢献する大学になるかどうかという視点を盛り込むべきだとか、学校法人の経営状況をインターネットで公開するなど、透明性の確保を義務づけるべきだという意見などが出されました。
検討会では、校舎や図書館などの施設や、教員の数が満たされているかなどに加えて、大学が地域で必要とされているかや、長期的に学生が確保できる見通しが立っているか、それに、財務状況が健全かどうかなどを重視して厳格に審査する、新たな基準を検討することにしています。
そして、今後1か月程度で結論を出したいとしてます。
解散命令の学校法人大学は当初から定員割れ
今回の議論のきっかけの一つは、群馬県の「創造学園大学」などを運営する学校法人の問題です。
創造学園大学などを運営する学校法人「堀越学園」は、昭和41年に設立され、運営する幼稚園で食の安全に配慮した手作り給食の提供といった取り組みで注目されました。
当時、学校法人の経営も健全で、保育士を育てる専門学校など、新たな学校や幼稚園を次々に設立しました。
しかし、学校法人の関係者によりますと、少子化の影響で10年余り前から入学者の減少が目立ち始め、経営が次第に悪化していったといいます。
こうしたなか、学校法人は8年前に「創造学園大学」を設立しました。
しかし、当初から「定員割れ」を起こし、学生は計画どおりに集まりませんでした。
学校法人が文部科学省に提出した資料によりますと、大学設立前の平成15年度には9億円余りだった借金は、設立直後には22億円を超え、去年3月の時点では44億円余りにまで膨らんでいたということです。
文部科学省は、学校経営に必要な財産を持たず、教職員に賃金を支払わないなど、法律に違反しているとして、先月、学生などの学ぶ機会を確保したうえで、来年3月までに解散を命じる方針を決めました。
現在、文部科学省が学生が転学するための支援などを行っています。
4年制大学規制緩和で大幅増加
文部科学省によりますと、全国の4年制の大学の数は、ことし5月現在、国公立と私立合わせて783校で、10年前よりおよそ100校増えています。
背景には、大学設置を巡る国の規制の緩和があります。
大学どうしの自由な競争を促し、教育や研究の水準を高めようと、国は平成15年度、大学の設置に関する抑制方針を撤廃しました。
設置認可の基準や手続きも簡素化され、採用する教員に必要な資格や配分する研究費の額などの細かな規定がなくなりました。
認可のための審査も段階的に短縮され、平成6年度までは20か月かけていましたが、平成15年度には7か月に短縮されました。
また、これまで学校法人に限っていた大学の新設を、株式会社にも認めることになり、短大からの移行も相次いで、4年制大学の数はここ10年で97校増えています。
一方、少子化の影響で入学者の数が定員に満たない大学も出ていて、「日本私立学校振興・共済事業団」によりますと、今年度、定員割れの私立大学は、全体の45%を超えています。
学生を確保できないなどとして閉校したり、学生の募集停止を決めたりした大学は、この10年で12校に上っていて、国は、定員割れの大学に対しては、補助金を減額するなどして、とう汰を促したいとしています。
今回設置した会議では、大学に対する地域のニーズや、学生を長期にわたって確保できるのかなど、審査の基準をより厳格にするための具体策を検討することにしています。
“大学のあるべき姿明確に”
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大学設置を認めるかどうかを審査する文部科学省の審議会の委員も務めた、明治大学の納谷廣美元学長は、現在の大学の設置認可の在り方について、「教員の資格の要件などが法文化されないなど、規制緩和で審査の基準を緩めすぎた部分があり、審議会としても不認可とするには相当な理由が必要になった。問題のある大学は市場の原理でとう汰されると期待されたが、学生を預かると、簡単に閉じるわけにはいかない」と指摘しています。
そのうえで、今後の方向性については、「大学設置の目的や社会のニーズなどをもっと時間をかけて審査するべきだ。見直しにあたっては、大学のあるべき姿をどう考えるのか、国が考えを明確にすることが必要だ」と話しています。
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