「事態がここまでこじれるとは思いませんでした。結局、票に押されましたね」
21日、国会・法制司法委員会が、タクシーを公共交通として認める公共交通法の改正案を可決させると、バス連合会の幹部はこのように語った。今回の公共交通法・改正案は、劣悪なタクシー運転手の待遇を改善するという趣旨から導入したが、政府とバス業界から激しい反発を招いた。双方共に、「典型的なポピュリズム法案」だと主張し、政界への批判の声を強めている。史上初の全国バスの運行中止をおかしてまで、政界が該当法案を本会議に送ったのはなぜだろうか。
●07年は同法案を3度も提出
タクシーを公共交通に含める問題は、選挙のたびに浮き彫りになった。04年、議員立法で公共交通法の改正案を初めて提出した後、第17代と第18代ではそれぞれ3件と6件の改正案が提出され、廃案となった。政府のほうで、「財政的負担が大きい」と反対したからだ。
大統領選挙が行われた07年は、3度も関連法案が提出された。李明博(イ・ミョンバク)大統領も同様に候補時代、タクシー運転手らとの懇談会で、「公共交通の指定を検討する」と語ったことがある。大統領選挙が行われる今年も、与党セヌリ党の李秉錫(イ・ビョンソク)、李明洙(イ・ミョンス)議員や民主統合党の盧雄來(ノ・ウンレ)、チェ・ボンホン、朴起春(バク・ギチュン)議員がそれぞれ代表発議した。
選挙を控えて「タクシー立法」が出るのは、それだけ「票」の拡張性が大きいからだ。バス連合会の関係者は、「今回の大統領選挙も、誤差範囲内で決まるだろうという予想が出ている中、30万人を越えるタクシー従事者らの要求を、国会が丸ごと受け入れた」とし、「タクシー業界は団結力が強く、バスのほうの票より重要だと受け止めているのではないか」と話した。
全国的なバスストという大嵐にもかかわらず、法案を撤回できずにいることに、政界が手詰まりの状態に陥っているという指摘が出ている。今回の法案を全会一致で可決させた所管常任委である国土海洋委の関係者は、「セヌリ党と民主党の合意で、タクシーを公共交通に含める案を可決させただけに、今反対する側は、タクシー業界の『主要ターゲット』になる」とし、「誰がわざわざ猫の首に鈴をつけようとするだろうか」と語った。国土委所属議員室の関係者は、「われわれが可決させたものの正直、問題の多い法案だ」とし、「財政対策の伴わない、ばら撒きのために可決させたという指摘を認める」と話した。
●早ければ今日、本会議に提出
国会・法制司法委員会で可決された改正案は、早ければ22日か23日に国会・本会議に提出される。まだ、政界では、該当改正案が本会議で可決される可能性が高いと見ているが、一部からは、慎重論も持ち上がっている。バスの全面的運行中止による民心の推移によって、政界が最終的に判断する可能性が高い。
民主党は党指針として決定しただけに、法案を可決させるものの、バス業界のなだめに乗り出している。国会国土委野党幹事の民主党の李潤錫(イ・ユンソク)議員は声明を通じて、「最も議論となっているタクシーのバス専用車線での運行は認められない」とし、「同法の可決で、直ちに(タクシー業界への支援)財政は伴わない」と語った。
セヌリ党では、「慎重論」が持ち上がっている。セヌリ党は、法制司法委員会での可決直後、院内指導部が集まって、対策について話し合ったが、表立って反対するのも難しく、言葉を慎んでいる。李漢久(イ・ハング)院内代表は、「バス業界がストに突入し、首相が談話まで発表しているだけに、慎重に検討しなければならない」と主張した。セヌリ党は、世論の成り行きを見守りながら、本会議に提出するかどうかを決める方針だ。
●「タクシー、公共交通の定義に合わない」
政府は改めて、該当法案の本会議への提出を見合わせるよう要請した。改めて立法化への反対の声を上げたのだ。金滉植(キム・ファンシク)首相は同日午後、緊急関係閣僚会議を開き、「これまで政府は、タクシーを公共交通に盛り込む法律案について、問題を提起してきた」とし、「利害関係者間の意見対立があり、十分な意見収集と議論が行われるべき事案なだけに、国会が同法律案の本会議への提出を見合わせるよう、要請する」と語った。
任鍾龍(イム・ジョンリョン)首相室長はブリーフィングを通じて、「関連法には、一定の路線と運行スケジュールを備えており、多数の人を輸送する手段を公共交通と定義しているが、タクシーはこの定義には合わない」とし、「タクシーが、公共交通になるためには、それ相応のさまざまな支援策が求められることになり、財政的負担も考慮せざるを得ない」と述べた。
政府の一部からは、改正案が国会で最終的に可決される場合、大統領の法律案拒否権である「再議要求件」を使うべきだという声も出ている。国土部の高官は、「原則的に、該当法案が国会で可決され、政府に移る場合、15日以内に国会の再議決を要請する方法もある」と話した。ただ、首相室は同日、「まだ、該当改正案への大統領の拒否権関連の議論や検討はなかった」と明らかにした。
|