十勝毎日新聞社ニュース
十勝のビートに影響大、輪作崩壊も TPP交渉参加
環太平洋連携協定(TPP)で関税が撤廃された場合、十勝の畑作物で最も影響を受けるとみられるのがビートだ。道の試算では、対策がない場合は生産額100%減の「壊滅」が予測されている。ビートが栽培できなくなれば地域はどうなるのか…輪作体系の崩壊に加え、ビート輸送を主力とするトラック業界のダメージが懸念されている。
今年は一定の収量が確保された管内のビート。TPP締結で壊滅が予測されている
ビート「100%減」試算
運送業に大ダメージ
十勝のビート作付面積は約2万5000ヘクタール。主要畑作面積の約4分の1を占め、小麦、ジャガイモ、豆を合わせた畑作4品による輪作体系の一翼を担う。
ビートへの影響が甚大なのは外国産との価格差が特に大きいためだ。原料価格の差は2〜3倍で、自由競争では太刀打ちできない。砂糖に加工する商品特性上、他の作物と違って差別化も難しい。
日本甜菜製糖の中村憲治常務(芽室町)は「国産のビートに国際競争力はない。TPPに無条件に加盟した場合、産業として成り立たなくなる」と語る。品質は国産の方が高いレベルにあるが、「自由に入れるとなれば、日本向けに(品質を高めて)作ってくる可能性は高い」と予測する。
現在は輸入の粗糖に関税(調整金)を課して農家支援の財源にしている。調整金がなくなると新たな財政出動が必要になるが国家財政が厳しいだけに、ビートの生産環境は狭まる。
十勝の農業者が一番懸念するのが輪作体系の崩壊。TPPでは小麦、ジャガイモも深刻な影響が予測されるが、ある農家は「ビート1品が欠けたとしても輪作の維持は難しい」と語る。適正な輪作ができなければ収量低下や病害虫発生の可能性も高まる。
十勝総合振興局は「他の作物や野菜で、急激に増やして売り先を確保できる品目はそんなにない。ビートの穴埋めにはならない」(農務課)と説明する。
同局の試算ではビート生産への影響(生産額で261億円減)にとどまらず、関連産業で385億円、地域経済全体に425億円の影響が及ぶとしている。管内には製糖業者が3社あり、畑から運ぶ運送業、製品を保管する倉庫、機械設備のメンテナンス、工場の従業員などビート産業の裾野は広い。
運送業は農産物輸送のほか、畑への客土運搬など、年間を通じて農業関連の仕事が多い。
十勝地区トラック協会の沢本輝之会長は「農業あっての運送業。運ぶものがなくなると当然やっていけなくなる」と不安を募らせている。(小林祐己)