指定管理者制度の最前線-地方分権時代における図書館の可能性
指定管理者制度の最前線-地方分権時代における図書館の可能性
※本レポートは速報性を重視した簡易記録になります。速報性を重視しているため、記録の内容は執筆者の理解している範囲のみであり、その責任は図書館総合展レポートサービス事務局にあることをご理解頂いた上でご利用いただきますようお願い申しあげます。
指定管理者制度の最前線-地方分権時代における図書館の可能性
日時:2012年11月21日(水) 10:30-12:00
場所:第14回図書館総合展第10会場(会議センター503)
主催 :図書館総合展運営委員会
ゲスト:
樋渡啓祐さん(佐賀県武雄市長)
高橋聡さん(カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社)
南学さん(神奈川大学人間科学部教授)
コーディネーター:
湯浅俊彦さん(立命館大学文学部教授)
概要:
「TSUTAYAが公共図書館の運営を!」今年最大級のトピックの当事者をお招きして
佐賀県武雄市が市図書館の運営をカルチュア・コンビニエンス・クラブ(以下CCC)に委託する計画は、公共図書館界にとって今年最大の話題でした。否、情報社会の進展に図書館が如何に対してゆくべきかを模索している図書館界全体にとっても大きな論題といってよい。実際に、様々な賛否の声があがっています。 本フォーラムでは、その当事者である樋渡啓祐・武雄市長またCCCよりこの計画に携わる高橋聡氏をお招きし、その構想と実際ひいては指定管理者制度のありようについてお話いただきます。
フォーラム詳細:ttp://2012.libraryfair.jp/node/880
(以下敬称略)
フォーラムの構成
- はじめに:フォーラムの概要と狙い
- 樋渡啓祐さん(佐賀県武雄市長)/新図書館構想について
- 南学さん(神奈川大学人間科学部教授)/指定管理者制度を導入した図書館の実際と、先進的な図書館の事例
- ゲスト3人のパネルトーク
- 会場のかたからの質疑応答
- おわりに:ゲストと司会からの総括
はじめに:フォーラムの概要と狙い
湯浅/
- 文科省発表の図書館の現状について
- 公立図書館が増加し、3274館
- 指定管理者制度導入館は347館
- このように、公立図書館に指定管理者制度を導入する図書館が増えている
- 日本図書館協会は、図書館に基本的には指定管理者制度を導入するのはなじまないという見解
- 特に民間企業の導入は避けるべきであるとしている
- 2012年5月4日、武雄市とCCCが武雄市図書館・歴史資料館の運営を指定管理にすることで同意したとプレリリース
- 従来のようなTRCのような団体ではなく、書店が参入するという点が話題になった
- Tカードの導入や個人情報保護に関する問題が話題に
- 従来のようなTRCのような団体ではなく、書店が参入するという点が話題になった
- このフォーラムでは武雄市における指定管理者制度の導入を取り上げ、今日の図書館サービス・明日の図書館像を作るようなフォーラムにしたい
樋渡啓祐さん(佐賀県武雄市長)/新図書館構想について
なぜ図書館を民間にしようかと思ったか
- 自分は図書館のヘビーユーザー
- 武雄市の図書館は91日休んでるし夕方5時半頃には閉まる
- それは図書館と言えないのではないか
- 納税者にサービスを還元しきれていない、なかなか利用でないのはおかしい
- 6年半のうちにさまざまな改革
- 開館日時の延長など
- しかし、これが公共の限界だと感じた
- CCCと組もうと思ったきっかけ
- CCCと組もうと思ったきっかけ
現在の新図書館の状況
- 着々と準備中
- 現在の館長には、指定管理後も働いていただく
- 本をダンボールに詰める作業
- 図書館員とCCC職員が一緒に今作業している
- 高橋とジョイントするのがこれで最初で最後になる
- 業者には作業は頼んでいない
- 市のトラックを使うなど自分で作業
- いまは本のラベル貼りなどをやっているとこと
- いま使っていない体育館があるので、そこに運び出して作業
- 一緒に作業しているCCCの職員のうちには司書の資格もとる用意をしている人も
- 開館まであと130日、まちを上げて応援している
新図書館構想に至るきっかけ
- 図書館をユニバーサルサービスにすべきだと教育委員会にいっていた
- ある日、カンブリア宮殿をみたとき限界を感じた
- 武雄市にツタヤのように出来ないかと思っていたが、それは間違いだった
- それは、キリスト今日の人に、改宗しろといっているようなもの
- 公務員のひとたちにツタヤのようになってもらうのではなく、ツタヤ自体にお任せしよう考えが変わった
- 代官山蔦谷書店に飛び込みで行った
- そこから仲良くなって話が進んだ
- トップレベル、課長レベルとタッグを組んで今作業してる
- CCCにはいま図書館プロジェクトチームがある
- 教育委員会と企画担当をミックスして、そこを窓口にして作業中
- 最上級の決定は高橋と樋渡で行っている
- 新図書館構想について
- 1月に蔦谷書店に行き、高橋さんに4月に提携しようとい話していたが、5月に発表になった
- 「組む」ということを大事にしている
- 病院の時も、組む、ということをやった
- 今度は図書館で、組む
- 組むことで市民価値をあげる
- 行政は自分たちでやろうとすると、無理や無駄が出る
- サービスは民間のほうが絶対にいい
- それを補完するのが自分たちの行政のスタンス
- それがいいかどうかは実際にサービスをみて判断してほしい
- 図書館について
- いままでの図書館の延長線上ではな図書館というコンセプト
- 本屋としてのツタヤではなく、企画会社としてのcccと組んでいるという意識が強い
- 9つの市民価値を定義したが、その後いろいろ変わっている
現在に至るまでの過程
- 指定管理者制度にするための議決を実施
- 17:8で可決
- 武雄市ではこういうバランスになることが多い
- 日本図書館協会からの指定管理者制度に関する指摘を受けた
- 利用者の履歴に関する問題
- 司書の雇用に関する問題
- cccは素人だろ、という指摘
- いろんな指摘を他にもいただいた、懸念はよく理解できる
- 最初になにかをやっているところはどこも素人のはず
- このせいで日本はイノベーションが生まれない
- 実際に指定管理者をCCCにするという議決をとった
- 16:8で可決
- スターバックをいれるということをフェイスブックに投稿した
- もっと反応があると思ったが、以前投稿したアヒルの写真より少ない「いいね」だった
- 日本文芸家協会などからもご指摘をたくさんもらった
- 懸念はよく理解している
- しかし、武雄市がやったことをみてから判断してほしい
- 尊敬する皆さんのご意見は真摯に受け止めている
- 9月21日予算を議決する議会があった
- 19:6で可決
- 議員は世の中の流れにのるので、この時期になってくると可決が多くなってくる
- アンケートの結果も新図書館を後押しする流れのひとつにもなった
- 100人アンケートをとって、図書館に期待するが70.36%
- これで民意がはっきりし、議員が動いた
新図書館構想で重視していること
- 図書館つくり≒(ニアリーイコール)街づくり
- 行政の成長は人口増加等いろいろあるが、武雄市はもう無理
- 高齢者層がいかにお金を使ってくれるかということを主眼におく
- CCCの蔦屋書店も高齢者をコンセプトにしたのがはじまり、そこを見習っていきたい
- 行政の成長は人口増加等いろいろあるが、武雄市はもう無理
- このデジタルの時代に、リアルを追及すること
- リアルの最前線が図書館だと思っている
- 利用者の目標は100万人
- 世間から「旭山動物園、金沢21世紀美術館、武雄市図書館」といってもらいたいと思っている
- 世間から「旭山動物園、金沢21世紀美術館、武雄市図書館」といってもらいたいと思っている
新図書館の実現で何が起きるか…「みんなの図書館」ができる
- 現在利用者は最大見積もっても18%
- 同じ人が繰り返し使っているという状況
- これはみんなが使う図書館とは言えない。マニアのための図書館
- 図書館に縁遠いひとたちにも優れた図書館サービスを届けることが、これからの図書館行政
- そのためにCCCと組む
- このまちに住みたくなる空間づくり
- 蔦屋書店に住みたいと言う人が大勢いる
- その土地の価値があがっている
- 新図書館のなかはこうなっている
(新しい図書館の画像が流れる) - 子育てスペースはいまの1.5倍とる
- 専門書をずらっと並べる
- 閉書架もなるべく出すようにする
- どこかの政党はコンクリートから人へ、といっていたが、武雄市はコンクリートから本へ
- 学習のスペースと図書館サービスの提供スペースというのをわけるつもり
- 市民のみなさんに学習してもらう支援
- 人と人が繋がる場所を作る…スターバックスの併設
- スタバで購入したものだけでなく、家からの飲食物も持ちこみOKにする
- スタバのものだけ利用可能にすると、それはユニバーサルサービスとはいえない
「20万冊との出会い」新しい分類法
- これまでのインターネットなどでの検索という機能は、図書館という機能よりも上だった
- 図書館の十進分類法はダメ
- およそ市民の心にはひびかない
- 例:釣りに関する本
- 釣りに関する本は現在は「芸術」にある
- これを「趣味・実用」にする
- より市民の肌感覚に合った分類法にする
- 誤解されがちだが我々はむしろ、検索よりも発見を重視している
- 発見しやすい、ということが重要
- そのためにオリジナルの分類法「武雄市21進分類法」をつくる
- 武雄市十進分類法
- 楽しみ方(旅行)
- 暮らし方(料理/食)
- 生き方(人文)
- 児童書・絵本
- コミック
- 文学・文芸書
- アート・デザイン
- 建築
- 趣味・実用
- 社会・教育
- 医療・看護福祉
- 自然科学
- 技術
- 産業
- PC
- 歴史・郷土
- ビジネス
- 語学・参考書
- 政治・国際
- 経済
- 法律
- 市民のかたに「これだったらわかる」という分類を目指す
- 従来の十進分類法も並行して付与する
(蔦屋書店の本棚の写真をみながら)
- 従来の十進分類法も並行して付与する
- こういっったかんじ。趣味のごはん、などの見出し
- こうすると人が集まってくる
- もっとわかりやすく、デザイン性を付加した棚を目指す
Tポイントカードの導入
- 原研哉さんにお願いして武雄市オリジナルのカードを作成している
- 原研哉さんは長野オリンピックや、無印など日本のデザインを代表する方
- Tカードで借りるひとといままでのカードを利用できるようにする
- 本を借りたら1ポイントにしようとしたが、セルフPOSの利用で3p付与ということにする
- なるべく司書を開放したい
- 司書が貸出係になっている、かわいそう
- それよりも、来館者の本の相談に応じるなど、 司書本来の機能をとり戻す
- そのために、誰でも出来ることは省いてセルフポストを置く
- 図書履歴について
- 全部図書館システムからCCCのポイントシステムへ情報が流れるわけではない
- T会員番号
- 利用日時
- ポイント数
- 全部図書館システムからCCCのポイントシステムへ情報が流れるわけではない
- ビジネス利用の禁止も記載して契約してある
新図書館のスタッフの雇用について
- 運営コストは10%ダウンになる
- 自分たち行政でやるとコスト合計は2.1億円
- CCCがやると1.1億円ですむ
- 52%ですむ
- コストダウン=人件費カットではという懸念について
- 議会でも指摘があった
- スタバ・販売・図書館ゾーンにわける
- いま司書15人だが、新図書館はむしろ人員増加
- 司書9人
- CCC25人
- いろんな人いろんな仕事をするマルチスタッフを目指す
- スタッフ報酬制度の改革
- 全国から最高の司書が集まる仕掛けをしていく
- やはり人、司書は宝
- 「ここに来ればあの司書さんに会える」といった体制
- 司書というよりむしろ本のコンシェルジュとして活躍してほしい
- googleの無味乾燥な検索結果よりも、あの人に聞いてみようと思わせる
- 雑誌は販売する
- 雑誌は一部は貸し出しにするが大部分は販売に
- 閲覧はOK
- 図書館はまちづくり!
- 3月19日に開館前の内覧会を開催する
- 参加希望の方は下記まで連絡を
- 出来るだけ率直に話をしたいし、みなさんの意見を聴きたい
*行政関係の方
- 武雄市文化・学習課 bunka@city.takeo.lg.jp
*民間の方
南学さん(神奈川大学人間科学部教授)/指定管理者制度を導入した図書館の実際と、先進的な図書館の事例
湯浅/
- いまの話を伺って、指定管理者制度に詳しい南にはなしをうかがいたい。
- いわゆる直営と指定管理や委託を対立構造で聞くことの是非について聴きたい。
- 時間の限られたフォーラムなので、是か非か、ということで終わるのは避けたい
- これからの図書館、地方分権時代における図書館というものを、是か非かだけでない視点で話し合いたい
- どういったところに指定管理者や委託の問題点があるのかということを南にかいつまんでお話いただく
南/
- 昨日はメインの司会者として「指定管理者制度は図書館を殺したか」というテーマのフォーラムに参加していた
- 私自身は「図書館サービスが日所に固定的に捉えられている」と考えている
- 貸し出し中心に評価されているといういまの傾向は変えないといけない
** 一般的に貸し出し冊数が評価されてるは確か
- なんのための図書館か、まちづくりの図書館にしていくためにはどうしたらよいか
- それぞれの自治体にとってもバラエティに富んだの図書館があっていい
- そのためなら直営・指定管理などは関係ない
- 完全に直営という図書館はほとんどない
- 全員司書、公務員というのはない。
- むしろ指定管理の方が7割は司書の配置がすんでいるのではないか
- 直営・指定管理から考えるのは違う
- 最初に考えるのは図書館のサービスとはなんなのかを考えるべき
- 最も最適な運営形態はなんなのかということを考えてほしい
- 武雄市の事例は非常におもしろいと思っている
- 今回の武雄市新図書館構想は50年ぶりのモデル転換の可能性がある
- 無料貸本屋のはじまり
- 1960年代日野市のサービス
- 断トツ一位の貸し出し冊数を誇った
- どの図書館も日野に影響され、貸出中心になっていった
- 現在の図書館は滞在のサービスが非常に貧しい
- 古くて狭くて、調べ物、仕事をできないところが相当多い
- 今回の武雄市は空間を意識したという点で非常にイノベーティブ
- 求められる要望全部に全部答えるというのは不可能
- 韓国の図書館は、すべての要望に答える努力をしている
- 司書のプロ意識が非常に強い
- 図書館に来てもらわなければ図書館のサービスというのはない、と認識しているのが大きな違い
- 図書館は本当に無料なのだろうか
- アメリカは有料サービスを行っているところがある
- 日本でもそのような一部取組がある
- 入館料と資料の提供というのは無料だが、それ以外ののサービスは優良でも構わないのではないか
- 札幌市の図書館で一番にぎわっているのはどこか
- 札幌市の駅の予約返却カウンターが一番にぎわっている
- そのようなサービスであれば図書館必要ないのではないか
- 貸し出し中心になると、極端にいうとアマゾンでいいじゃないかとなる
- 人が来るための図書館とは、を真剣考えなければならない
- ひとつのインパクトとしてCCC、スタバ、誰も来たくなる図書館をつくろうとしているのを非常に評価している
- よくここまでできたなという印象
- 50年前にはじまった貸出中心の図書館のモデル転換
- 考えがかわるのではないかという意味のモデル転換
- 自治体によって事情は変わるだろうから全部に適応できるとは思っていない
- ひとつの図書館の発展系を示したと評価している
各地の先進的な図書館の事例
武蔵野プレイス
- 武蔵野プレイス、おしゃれな閲覧スペース
- フロアスタンドがついている図書館
- ひとりひとり一時間100円でゆったりできる空間を貸し出している
- リクライディングチェア
- 並ばなくても場所が確保できる
- 昼ごはんに1000円以上かかるカフェが設置
- 横には雑誌コーナー・新聞コーナーなど快適なコーナーがある
韓国の図書館
- 閲覧席に誰もいない
- 横にある公民館にPCを並べてあり、そこにずらっと人がいる
- 日本でも座席のコントロールをしなければと思っているが、韓国ではできてる
- 韓国では英語競争が激しい、小さい時から英語を鍛える
- 有料サービスとして英語図書館を運営している
- 大学に委託して英語のプログラムを提供している
- 180平米に1万冊の図書館
- 子どものためのスペースが広い
- まちなかの小さな図書館のモデル
- ずらっとコンピューターがならんでいる大きな図書館
- なぜこんなにならんでいるのか、高額なソフトであるフォトショップなどが入っている
- そういうのを使いたいときに図書館に来る
- 満員であることが多い
- 朝の8時~22時まで開館している。
- 国立国会図書館の図書館。地下には本が1冊もなく、コンピュータが並んでいる
- 場所によっては3ディスプレイも
- 新聞の閲覧欄はパネル
- 数十か国1000ちかくの新聞がはいっている
- ひとつのパネルにたくさんの新聞が入っていて、手でめくる
- 日本のスポーツ新聞芸能面もみれる、これが韓国ではメイン
- 殆どの図書館は3F以上
- アメリカでもこれは一般的、日本でもLCなど増えてきた
- 主要な空間からは図書が消え、ディスカッションをするのが主流になっている
山形西川町の図書館
- まるで公共図書館のような学校図書館
- 8つの小学校を統合後、子どもたちがいなくならないようにという住民の要望に応える
- コミュニティづくりの空間にするため、図書室を図書館に
- この小さな街にしては、大きな図書館
- 100台の駐車場を用意
- 利用は平日9時から6時、公共図書館に同じ
- 立派な閲覧室
- コンピュータが充実している、ここで勉強できるこどもは幸せ
アメリカの公立図書館
- ダウンタウンの小さい図書館を観てきた
- なんと本を売っている
- 寄贈を受けた本も一冊一ドルで売っている
- CDの貸し出しも有料
さいごに
- 図書館は実にバラエティに
- 武雄市の新図書館は、地域の実情に沿ってなおかつ自治体の財政規模に応じて、様々なサービスを様々な運営形態で出来るというきっかけになると期待している
- 今後大きな図書館づくりにとって大きなインパクトになる
ゲスト3人のパネルトーク
湯浅/
- 図書館のサービス空間がどのようになっているか紹介いただいた
- 図書館≒まちづくりということを例証する図書館が多々あった
- 図書館のサービス空間を考えるうえで、CCCが蔦屋書店のノウハウを図書館でどのように活用できるのかという事をお伺いしたい
高橋/
- 図書館だからということは正直そんなに意識していない
- 顧客価値はどうしたら実現できるのかを追求したらこうなった
- 代官山では代官山図書館に、武雄市では新図書館に
- ゆっくり本を本で欲しい、といった顧客価値を、図書館どうこうではなく突き詰めていった結果ああいう形になった
- それを達成するための細かいテクもある
- 家庭用照明の導入
- 本屋さんにいくとき、図書館にいくときも現代は癒しや安心のある雰囲気づくりが大事になっていく
- 図書館でも家庭用照明を使う事で癒しを提供できると考えている
- 家庭用照明の導入
湯浅/先ほどの書架についても武雄市から要望があってあのようなデザインになったのか
高橋/
- 一番最初に市から書架について要望があったのは18万冊も持っているのに全部読めるようになっていないのははおかしい、ということ
- それをどう見せるか、ということを考えた結果ああなった
湯浅/
新分類についても武雄市と考えて出てきたのか
高橋/
- 検索についていろいろ調べたが、十進分類法は素晴らしい
- ただし、それは検索に関して。発見に関してはいまいち
- 武雄市のような小さな町では、新しい知というものを発見してほしい
- 武雄市の図書館の蔵書では専門的な資料の提供は難しい
- 無目的で図書館へ行ったときにも本と出会ってほしい
- そこで、検索よりも発見を優先したい
- システムのなかでは十進分類法も持つ
- 十進分類法をもとに探したい人も対応できる
- アウトプットされているところは発見系の新分類でいく
- 位置検索・位置表示もする
- 発見のための位置の表示もしっかり行う
- 日本語のジャンル表記・日本語のPOP案内を行い、全て目視で発見できるようにする
- 十進分類法には負けるが、検索に対しても対応していけるような分類を作っていきたい
湯浅/
樋渡市長はいまの設計でかなり満足しているのか
樋渡/
- 十進分類法はキライだった。一般ユーザーとして使いやすい分類が必要
- 無目的で図書館にいっても、連関性の高い本を見つけることの出来る仕組み
- その時の最適解をきちんと見出していってより良いものにしていくことが大事だと思っている
湯浅/
いまの図書館から新図書館になったときに、どういうひとに利用してほしいかという利用者層を教えて欲しい。どこに変化を期待するか。
樋渡/
- 2つの層を考えている
- 60歳以上の元気な層。体感だが、図書館でそういうひとをあまり見ないように思う
- 10代20代のひとに図書館での気づきをしてもらいたい
- この層に利用してもらいたいという思いもありTカ―ドを取り入れた
- 図書館に来てもらい、図書館を利用して欲しいと思っている
湯浅/
課題解決型は図書館界でも大きな話題。ビジネス支援、医療などそういった情報提供サービスについて、レファレンスは重視しないのではないかという意見もあるがどうか
樋渡/
全くの間違い。そのために自動貸し出し機などの導入を検討している。コンシェルジェを導入して、課題解決支援をどんどんしてほしい。
今は、整備や貸出に時間を割いており、本棚の前にいない、これは図書館としておかしい。フロアワークが出来ていない。
南/
今の意見に対して面白事例があある。長崎のPFIの非常に人気な図書館。そこの司書は市民と勝負をするという試みを行っている。こんな本は読まないだろうなという本を2,30冊並べて展示し、これは借りられるだろうかということをやっている。これがだいたい借りられる。市民と司書が知的戦いを行っている、というのがすごくおもしろい。
樋渡/
レファレンスの他に大事にしたいのは、人と出会うということ。市民同士の出会いはもちろん、アンケートの結果、講習や研修や講座を開いてほしいという声が非常に多かった。作家や文芸評論家をCCCの力を使って読んでもらいたい。
南/
講座に関しての事例。閲覧室に誰もいないという韓国の図書館も、実は主に人を読んでいるのは講座の開催。市民参加型の講座で、司書自体はそれを補完している。
樋渡/
武雄市は歴史研究も盛んなので、教育委員会とタイアップしながらCCCと共同で市民のみなさんや歴史研究家と一緒にやっていきたい。いまでもやっているのでそれをきちんと進めて行きたい
湯浅/
地域事業の観点をおしゃっていただけたのは今後の方向性への観点として重要。
高橋/
今回図書館についてやってみてショックだったのは、司書の給料が非常に安いということ。レファレンスなどの高度な技術を持つ司書に対して相応の報酬が支払われていないのは問題。契約期間が5年と圧迫されていたり、技術の集積がなされていない。期待されているのはレファレンスなのに実際にはその環境が無い。なぜこれまで解決されなかったというのか非常に疑問。
湯浅/
日本図書館協会は、指定管理者制度が増えることによって、非正規職員が増え、そのことによって司書が従前に機能していないという批判があった。いま、指定管理者制度を受託する側から非正規に対する問題が提起されるとは思わなかった。まさに、プロフェッショナルとしての図書館の場を作っていかなければならない
先ほど、無料貸本屋論争や貸出中心主義がこれから転換していくのではないかということだった。2004年のクローズアップ現代で糸賀さんが出演し図書館で借りられる本と売られている本の現状について話があった。最新の数字では7億10万冊が売られ、個人貸出7億1618万が借りられている、ということがあり、もう超えているといっても良いのではないか
糸賀先生会場にいますか?
(会場内で糸賀先生が見つかる)
貸出中心主義から、武雄市のようなモデルがでることについて糸賀さんに意見聞きたい
糸賀 雅児先生/
- いまもお話を聴いて、武雄市の取り組みは面白いと思う。
- ただ、日本の図書館の発展を考えると、南先生のいう50年間の転換の間にも日本もおもしろい図書館はたくさんあった。
- 例えば浦安市の事例などは、無料貸本屋とは言えない
- 貸出と市民の学びに対する需要にこたえるという事は各地で行われていた
- 武雄市のように市長がよく図書館を理解していれば、それは直営であっても指定であってもまちづくりと結びついた図書館が出来る
- 問題は図書館のあるべき姿を行政に理解してもらえるかということ
- 図書館からの働きかけも不足していた
- 最近図書館について理解を深めている首長もあるので良い図書館も増えている
- 武雄市の図書館の取り組みは面白いと思う
- 代官山蔦谷書店のノウハウを武雄の図書館に活かしたときどのような図書館になるのかを観てみたい
- ただ、Tカードの運用が気になる
- 一部の民間サービスを行政が先導するということに対して疑問を持つ
- 行政の公平性が担保されるかは気になる
- 書架作りについてなどは直営も見習う点がたくさんある
湯浅/
Tカードに関する私的に関連して行政と民間の位置づけについてどう考えているか
高橋/
位置づけというのは特にないが、仕組みとして、選択制にしている。Tカードも使えるし普通のカードもあり、住民には選択の自由がある。
我々は図書館の履歴をビジネス利用するという事はやらないし、図書館のシステムとCCCのシステムは別の独立したものとして立ち上がっている。武雄市ともそうのように契約している。
5月からずっとこの議論は起こっている。民間企業としてポイントを分析してリコメンデーションするということをやっているので、やろうと思えばやれるのだろうということで疑念は晴れないのだろうと思う。実際に導入してから信頼を得て行きたい
樋渡/
糸賀先生からいま「直営でも出来る」と言われたが、出来ない。6年半やってきて、出来なかったからこうなっている。指定管理がすべてだとは思っていない。全国の図書館でいろんな図書館があってよい、そのなかで競争するのが大事。
Tカードについて、図書館に来たから一気にポイントがたまるというものではないので、ポイントというのは図書館の誘導にすぎない。特定の業者を応援しているとは思わない。幅広い層に図書館に来てほしいという政策目的の方が上だと思ったのでそちらを優先した
会場の方との質疑応答
湯浅/
いまの議論の中で直営でもこんなことが出来る、などそういう論を持っている方は会場にいるでしょうか
会場:横浜の図書館友の会の方/
まちづくりの図書館というのは非常に良いと思う。
スターバック設置の図書館などの取り組みをしているのは全国にたくさんある。これまでの武雄の新図書館構想のなかで、Tポイントカード私の知ってる公共図書館ですべて実現できているところ。
Tポイントカードの代替えとしてのサービスを実施しているところもある。そのなかで、なぜ新図書館構想の実現が行政の直営では不可能だと考えたのかききたい。
南/
直営で出来ないポイントが2つある。
ひとつが司書の採用。司書採用も少なく、公務員として司書を配属するのは人的に不可能。
ふたつめが、公務員の場合勤務時間の制約から、市民のすべての要望に応えるのは難しい。委託などの場合、非正規職員の採用によってそれが可能になる。
韓国の図書館の事例をみたとき、ある図書館員が「こういう空間があればもっとすごいことが出来る」と話していた。いまの状況について尋ねると沈黙してしまった。
現在は図書館の環境を改善するための工夫が出来ていない、という現状がある。
会場:横浜の図書館友の会の方/
直営で出来ない、という決めつけはおかしい
湯浅/
いまの視点は直営が良いか悪いかということではなく、どういう図書館の利用サービスが出来るかということに話をすすめたいが、その観点ではどう考えているか。
会場:横浜の図書館友の会の方/
武雄市で、なぜ直営を出来ないと判断したのはなぜなのか。宗教が違うといったが、なぜ宗教が違うのか。
また、武雄市民の意見を聴くと、良い意見を持っている方がたくさんいるがなぜ市民の意見を聴かないのか、ということを知りたい。
湯浅/
次の質疑応答に移る。今度の図書館の空間活用など、なにか聞きたい方は会場にいるか
会場:県立長野図書館の方/
市長の自らの考えを実現しようとしているのは素晴らしいと思う。財政面で、これまでの図書館に手を入れてつくることは出来なかったのか。
これまでの指定管理導入を検討した自治体は、いまの図書館の施設を利用して、導入するかしないかを検討しているところが大部分。
施設を新しくせずに、サービスを新しくするにはどうしたらよいのかということを聴きたい。
樋渡/
図書館は貸本屋ではない。空間で本を閲覧したり飲食したりといったことが大事なエッセンスのひとつだと思っている。建て替えるとなるとお金もかかるので、内装を変える。より以居心地の良い図書館をつくるということで改修しようとしている。これまで市長に就任して以降節約してきた財政、これから指定管理にすることで浮くお金、それらを担保にすることで予算を作っている。
高橋/
いろいろなタイプにあわせることがある。武雄市はたまたまCCCに声をかけていただいて、空間演出の改装からはじめるところがベストだと思われたが、他の指定管理の業者で、改装をしなくても良いものが作れるというところは、市町村と話し合えば出来るのではないか
樋渡/
武雄は改装して12年たっていたので、どっちみち改装しなければいけないという時期に差し掛かっていた。その寿命にもさしかかっていたという事情もある。
湯浅/
TRCの方が会場にいたら話をききたい
(TRCの方がみつかる)
(会場)TRCの方/
先ほど紹介された長崎の図書館を先に見ていてくれれば、TRCに声がかかったのではないかと思い非常に残念(笑)
首長がどう思っているのかということが非常に大切。しっかりした考えがあればそれに沿って図書館づくり出来る。改装に関しても、自分は図書館のトイレはきたないので、全部変えたいと思っている。それくらいの気持ちでやっていかないとプレイミアムエイジのニーズに応えられないいけない。子どもたちが快適な空間で楽しみながら過ごしていかないと日本はダメになってしまう。
湯浅/
TRCMARCと代官山蔦谷書店の空間がそろうとちょっと怖いですね。グーグルとアマゾンが合体するような怖さになりそう。
丸善の方にもお話をうかがいたい。
(会場)丸善の方/
市長の発見を重視というのは大賛成。キンドルも発売されたし、書店はどんどん減っていくと思う。そうすると書店の代わりに新しい地との発見を図書館が担う時代が来る。そういう図書館が増えて欲しい。
CCCは強敵だと思っており、参入してきたときついに来たと思った。ビデオレンタルなどいろいろな市場を作ってきたのはCCC。CCCの顧客志向が強い会社はそう無い。我々は直営と既存業者がCCCを迎え撃ちたい。長らく本を触ってきたという自負がある。良いサービスを我々も実現していきたい。
(会場拍手)
おわりに:講師と司会からの総括
湯浅/
最後にパネリストの方に総括をお話しいただく
南/
指定管理と直営という対立として捉えないでほしい。指定管理者はそもそも施設管理をいかに効率的にやるかという制度。図書館の司書として、専門性を活かしながら住民と勝負していい図書館をつくるという公務員がいれば、司書部をおいてハードウェアなどの管理はほかにお願いするという方法もあり得る。専門能力を持っている人、ビジョンを持っている人が専念することが出来る。公務員の本来の能力を委託で済ませられるところに使うのはコスト的にあわないので、専門家としての能力を活かしてほしい。委託と組み合わせながら専門性を活かして。
もしそういう能力を持つ人がいなければよそから連れてくればい。なにをやりたいか、ミッションが一番大事。形態ではない。なにをやるかはっきりしたあと、だれが必要か、どういう形態でやるかということを考えて欲しい
高橋/
直営か指定管理か業務委託かということ話があったが、こういう話になると思わなかったので、最近まで組織を作っていなかった。みんな兼部でやっていた。
武雄とCCCの関係ははフラットな関係。企画も一緒に立てている。たぶん普通の指定管理は、受託業者にサービスの詳細を任せている。しかし、樋渡市長は非常にはディテールにこだわる。一方我々も蔦屋書店などをやってきたという自負がある。市長が独断でやりたいことを実現しているのではなく、話し合って一緒にやっている。市長のやりたいことが3割実現、我々3割実現くらい。
図書館の運営について、自分たちが出来る、自分たちのほうがすごい、という話ではなくて、民間ノウハウと行政ノウハウを同じ目線でやれるかということが重要。
我々をライバルのように観ている業者があるかもしれないが、いかに住民サービスをより高いものに持っていけるかということを同じ視点を持てるひとたちとは一緒に出来るとおもう。
逆に、CCCに頼むと武雄市新図書館のような図書館にしてくれる、という任され方を出来ても出来ない。教育委員会や自治体の意思がしっかり入ってきて、武雄市とは全く違うモデルになる図書館づくりが出来る自治体とは、また図書館づくりをすると思う。
樋渡/
CCCと武雄は仲間。癒着とか言われるが非常にオープンな関係。武雄市図書館にとっていま一番大事な時期。
市長の市政のうち7割を図書館に費やしている。高橋さんが現場にいるので非常に意思決定が速い。
開館後もその時々に市民の意見を聴きながら良くしていきたい。
最後のお願い。いろんな図書館がある。直営、TRC、丸善、指定管理などいろんな図書館がオープンにして競い合うべき。武雄市が県立図書館と連携するように、足りないところは補いながら、秀でたところは連携し合うといった形で、図書館界全体の底上げをすることで日本国民の図書館に対する信頼が高まる。
他の首長と話すと、どういう図書館行政をやったらいいか尋ねても「わからない」と回答する人がほどんど。ロールモデルとして定義はするが、それが全部部真似できる、というふうにはならない方が良いと思う。
今日も会場に来ていると思うが、是非司書の方が働きやすい生きがいのある図書館をつくっていきたい。みなさんの意見も取り入れながら変えるところは変えていきたい。
湯浅/
図書館をまちづくりに据えるという図書館があるということがわかった。全国の市町村や都道府県におおいて、図書館を中心にすえた街づくりをしていくのが期待される。
自分は立命館大学の出身。官尊民卑のように、国立大学はすごいが私立大学に対しては疑念があるという意見もあるように思う。
図書館の運営についても、直営と民間、というところに囚われるのはまずいのではないか。
(執筆:山下聡子)