まず、昨日は、3号機から放射能が大量に放出される。「この可能性が高まっている」と、昨日(もう一昨日になりました)の防衛大臣の会見で明らかになりました。防衛大臣は「今日が限界」と曖昧な発言でしたが。数日前までの菅氏と枝野氏の「安全だ」という発言とは異なり、日増しに事態は悪化しています。昨日、政府は自衛隊に出動を要請しました。
ところが、昨日の午前0時20分頃に行われた、東電の会見(NHKテレビ)からは、危機感を感じるどころか答弁する人の表情には微笑みのようなものが見えました。これは、事故現場では被曝覚悟の懸命の修理や注水が行われているのとは対照的でした。東電の会見から危機感を感じることができない理由は、原発の実務では今回のような事故は「驚くようなもの」ではない。こうした事故は過去にも経験済みなので「慣れている」から、と想像します。
実際、3号機は1978年11月2日に事故を起こしています。この事故は日本初の臨界事故です。臨界事故に比べれば、今回のように原発停止後の事故は原発実務では「軽微」なのかもしれません。驚くべきことに、78年のこの事故が発覚したのは29年後の2007年になってからです。(出典:http://ja.wikipedia.org/wiki/福島第一原子力発電所)
今回の事故においても、爆発があったことは隠されていました。菅氏がそのことを知ったのは随分と時間が経過してからのことでした。それで菅氏が激怒したという報道は皆さんもご存じの通りです。
東電を指導しているのは経済産業省・保安院という組織だと思います。保安員は東電のすべてを知る立場にありますので、今回のような事故が特別なものだとは、これもまた思わないのかもしれません。
菅氏や枝野氏ははじめて国の責任ある立場に就いて、こうした「大人の世界」を始めて知って、その現実に驚いたのかもしれません。
「素人」からすれば、福島原発事故の現状の問題を解決する、もっとも効果的で世界中の人々にも分かりやすものは、「施設全体を石棺のようにコンクリートで固めて放射性物質を封じ込める」http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2011031701055 (石棺する)、ことだと思います。
18日の読売新聞によると、福島第1原子力発電所の事故をめぐり、米政府が上記の石棺方式を提案したが、民主党がこれを断っていたと報じています。
ところが、「玄人」からすれば、この程度の事故で原発施設が廃炉となるような石棺なんて採用できないと判断。読売の記事はこのように解釈できると思います。
「素人の皆さん、そんなに心配しなくても、これまでの事故のように、廃炉にするには及びません」。昨日の会見を見ながら、そういうふうに思いました。
これまでの推移をみる限り、玄人の判断は正しくて、石棺の必要性は小さいのかもしれません。地震の発生とともに核反応は停止をし、炉の中の余熱が今回の事故の原因なのでチェルノブイリ事故のようなものとは本質的に異なる。運がよければ1か月ほどで余熱が冷めるし、放水と修復がうまくいけば、もっと早く問題解決に至る。そんな流れになっているように思います。
こうしたシナリオは歓迎すべきものです。しかし、そうであるのならば、最初からこうした比較検討のプロセスを国民や世界に向けて開示すべきではないでしょうか?東電や保安員(経済産業省)は原発について「事故慣れ」しているけれど、国民や外国政府はそういうことに慣れていません。上記の読売新聞の記事の内容については、私も別の情報源からこの話は聞きました。政府は、この経緯について情報開示すべきだと思います。
いずれにしても、東電や保安員の判断が正しければ、福島原発事故は大事には至らず、このまま終息するのだろうと思います。そして、すべてが終了した後に、この賭けがどういうものであったのかの詳しい説明があるのだろうと思います。
by 川口有一郎
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