木語:中国だって右傾化=金子秀敏

毎日新聞 2012年11月22日 東京朝刊

 <moku−go>

 なぜ、尖閣(せんかく)諸島や竹島で紛争が起きるのか。中国と韓国の首脳が19日、意見交換した。

 「日本が軍国主義を清算できなかったためだ」と中国の温家宝(おんかほう)首相が言った。

 韓国の李明博(イミョンバク)大統領は「日本の右傾化が周辺国の不安要因になりうる」と言った。

 カンボジアで開かれた国際会議の最中に行われた中韓首脳会談の席である。

 軍国主義と言われても日本人にはピンとこないだろうが、温首相は「軍国主義の清算」を言っている。日本はポツダム宣言で決められた通りに領土を放棄していないという歴史問題を持ち出したのだ。

 一方の李大統領は、現在の日本のナショナリズムについて語っている。2人の論点はかみ合っていない。だが、韓国メディアは、2人とも野田佳彦首相とカンボジアで会談しなかった点を強調し、中韓の友情を確認したと書いた。

 右傾化は世界不況の中で世界の傾向だ。最近発足した中国の習近平(しゅうきんぺい)政権も右傾化政権である。

 習氏は共産党総書記に就任した当日、短い演説をした。「中華民族の偉大な復興を実現するためにがんばろう」

 演説の中に「主義」は3回出てきた。形式主義、官僚主義と「中国の特色ある社会主義」が1回ずつ。だが、「中華」という民族主義のキーワードは8回も連呼された。ナショナリズム右傾化政権の産声(うぶごえ)だ。韓国大統領も「周辺国を不安にする要因」と心の中で考えていないか。

 この数年、中国共産党内では「維穏(いおん)」と「維権(いけん)」という二つの路線が対立してきた。「維穏」と書くと穏健な感じがするが、正反対だ。国家権力による強権統治で「穏」(安定)を目指すナショナリズム派だ。一皮むくと江沢民(こうたくみん)派。

 一方、「維権」の権は「権利」の権。大衆の権利を擁護して民生の安定を図ろうという民権派である。天安門(てんあんもん)事件で鎮圧された民主派の残党や共産主義青年団(共青団(きょうせいだん))派の改革派メディアだ。

 習氏はなにを考えているかわからない人だった。そこで習政権の基本的性格が注目された。維穏派か、維権派か。

 結果は、党の政治局常務委員会7人のうち5人が維穏の江沢民派が占めた。なかでも書記局の筆頭書記・劉雲山(りゅううんざん)氏は維穏派の強硬派だ。党の宣伝部長として改革派メディアを厳しく弾圧してきた。

 書記局の筆頭書記は、党の事務方を束ねる、日本の政党でいえば幹事長。中華民族主義の習氏と、強硬な維穏派の劉氏のコンビで目指すは中華民族の偉大な復興である。どう見ても右傾化政権だろう。(専門編集委員)

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