辻元清美提出の「安倍首相の『慰安婦』問題への認識に関する質問主意書」に対し、政府は二〇〇七年三月一六日、「同日の調査結果の発表までに政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかったところである。」と答弁した。
それに対し、韓国政府が遺憾の意を示し、米国内でも主要紙が「九三年の河野官房長官談話を弱めるもの」「民主主義大国の指導者として不名誉」と指摘するなど、波紋が広がっている。
一方、一九九四年一月二四日に公表されたオランダ政府の公文書「旧オランダ領東インドにおけるオランダ人女性に対する強制売春」“Gedwongen prostitutie van Nederlandse vrouwen in voormalig Nederlands-Indie‥”と題する報告書には、軍・官憲による暴力的拉致のケースが数多く記録されている。:(A)一九四三年三月にジャワ島ブロラで二〇人のヨーロッパ人女性を日本軍が監禁・レイプしたケース(B)一九四四年一月、抑留所からマゲランの慰安所に女性たちを暴力的に拉致したケース(C)一九四四年二月、抑留所からスマランの慰安所に女性たちを暴力的に拉致したケース(D)一九四四年四月、スマランで女性たちを逮捕し、スラバヤやフローレス島の慰安所に移送したケース
なかでも(C)のケースは「スマラン慰安所事件」として知られており、バタビア臨時軍法会議で、現地日本軍部隊が抑留所にいる若い女性を暴力的に拉致して慰安所に入れたとして、死刑判決が下されている(起訴理由概要「スマラン幹部候補生隊長として同隊附軍人及び同隊附勤務市民が昭和十九年三月及び四月「スマラン」の各収容所及び「アンバラワ」の収容所に抑留されありし約三十五名の婦人を慰安所に宿泊せしめ売淫を強制し強姦し又不当に取扱った責任」)。当該事件については、オランダ人のジャン=ラフ=オハーン氏が、二〇〇七年二月一五日の米下院外交委員会公聴会で、「日本軍の将校に連行され、慰安所で性行為を強要された」と証言している。日本政府はサンフランシスコ平和条約第一一条「日本国は、極東国際軍事裁判所並びに日本国内及び国外の他の連合国戦争犯罪法廷の裁判を受諾し、且つ、日本国で拘禁されている日本国民にこれらの法廷が課した刑を執行するものとする。」によって、BC級裁判に当たるこの判決を受諾している。そうである以上、判決は公文書として取り扱うべき性質のものであり、公文書から除外してきたことが明らかになれば、国際的な非難を受けることにつながりかねない。
さらに、このような状況下で、オランダ外相が駐オランダ大使に、冒頭の答弁書について説明を求めたという報道もされている。
四月三日、安倍首相はブッシュ米大統領に電話で「自分の真意や発言が正しく報道されていない」と伝え、河野官房長官談話の踏襲をあらためて伝えたと報道されている。安倍首相の訪米に、日本のみならず世界中が注目しているいま、アジア、そして米国世論に向けて安倍首相の「慰安婦」問題への認識を誠実に伝えることは急務である。
従って、以下、質問する。