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金融緩和問題の構図 - 消費税増税のためのインフレ
金融緩和の議論が争点になっている。以下、三つの点について整理したい。第一に、安倍晋三の唱える3%のインフレターゲットと日銀の国債引き受けは真に景気回復を実現するかという検証。第二に、安倍晋三がこれを打ち出した思惑と真相は何かという解読。第三に、日銀が安倍晋三の政策に反対する本当の理由は何かの分析。まず、第一の問題だが、3%の物価上昇を日銀に目標設定させ、強制的にマネーサプライを増やしても、それだけでは景気の回復にはならない。このことはマスコミでも一般論として説明され、FRBの経験でも言われていて、われわれには常識の事実である。中央銀行がジャンブジャブとマネーを供給しても、市中から先の国内投資に回ることがなく、銀行は成長している新興国への投資や株や商品市場の投機に資金を回す。FRBが過剰に供給したドルはブラジルの不動産投機を起こし、原油市場や穀物市場に流入して価格を高騰させたのみだったし、日銀のゼロ金利の円は、中国やアジア諸国への投資に回り、外国の企業や資産を買収する資金となっている。利益のリターンを求めれば、マネーは自ずと投機やM&Aに流れるのであり、国内の産業を興し、雇用を増やし、景気を活性化する役目を果たさない。米倉弘昌が言っていたとおり、一般論として、国内に需要がないかぎり資金供給は民間設備投資と個人消費の刺激と喚起には繋がらず、逆に不況下のインフレ(スタグフレーション)を惹き起こし、国民生活の悪化を招く懸念すらある。
デフレ克服の手段として、インフレターゲットを設定して目標達成するまでマネーの供給を増やせという議論は、1990年代後半のクルーグマンの「流動性の罠」の頃から活発となり、いわゆるリフレ政策の提唱と説得という形で2000年代を通じて進行してきた。当局も及び腰ながら時間をかけてそこに接近し、ゼロ金利から名目1%の物価上昇を目標とする積極姿勢へ移行、現在は市中経由で国債を購入するというところまで至っている。10年前は、クルーグマンの「流動性の罠」は、当局(政府日銀)の優柔不断を詰る際の教典的理論の感があったが、リーマンショック後、当の米国経済そのものが「流動性の罠」に落ち、しかも、どれほどゼロ金利とドルの過剰供給を続けても景気や雇用の回復に結びつかず、デフレ克服にならず、金融政策だけでは限界があるというのが一般認識だ。その点、白川方明と安倍晋三の論争については、白川方明の方が良識ある主張と言えるだろう。リフレの一般論だけを振りかざしても意味はないし、10年前とは比較にならないほど日本経済は弱体化し、需要の力が失われている。財政赤字も深刻になっていて、それだけでなく、輸出競争力すら衰え、慢性的な貿易赤字に陥る心配もあり、当時と同じ条件でインフレターゲットの有効性を説くことは難しい。むしろ、無節操で野放図なインフレ策の強行は、予期せぬ悪性インフレを導くリスクの方が高い危険な状況にあると考えるべきだろう。
国債の日銀直接引受については、2年半前の参院選のとき、やはり経済政策の論争があって、政府紙幣の発行という大胆な提案と共に、デフレ退治と景気回復の最後の金融政策としてエコノミストの間で論議されていた。私自身は、財政出動の中身を間違えなければ、この策の選択は有効だと考えている。その財政出動の方向と規模が適正で、確実に地域経済を潤し、庶民の家計と中小零細企業の経営を潤し、個人消費を拡大循環させる軌道に導くものなら、その政策を採択していいだろう。すなわち、公共事業も、単に自民党に献金するゼネコンにカネを落とすための大型事業であれば、それは、この20年間の失敗と同じく無駄な公共事業にしかならない。4年前、私は200兆円の給付金を配れと言った。今でもこの発想は間違っているとは思わない。下から、庶民の家計から需要を作るしかなく、必要な需要とは、失われた一般庶民の購買力なのだ。労働者が非正規にされ、賃金が低く引く切り下げられ、負担が増えたために、国民の購買力が落ち、市場でモノが売れなくなった。下請中小企業の納品単価が切り詰められたため、従業員の削減や賃金カットが必然となった。顧客が減ったために地域の店舗や工場が潰れ、新規事業を起こせなくなった。地域経済が衰退した。国民の購買力を回復させ、底辺から、地域から、内需を拡大する試みなら、日銀のバランスシート毀損のリスクを踏み越えて、それは決断して採択していい手段だ。
しかし、安倍晋三の狙いはそこにはない。第二の、安倍晋三の思惑が何かを読み解こう。ここには二つの意図がある。一つは、上に挙げた米倉弘昌の発言に関連する。米倉弘昌は、金融緩和だけをしても不具合で、「成長戦略」で需要を作らないといけないと強調した。安倍晋三は、解散が決まった後、すぐに経済団体を訪問して支援を要請し、「政権を奪還した暁には、勇気を出して大胆な規制緩和をやる」ことを約束している。つまり、日銀引受で建設国債を大量発行して、ゼネコンに大型公共事業をバラ撒くだけでなく、農業、医療、教育の分野で規制緩和を進め、法改正(改悪)をして、そこに大資本を参入させて儲けさせますよというコミットをしている。日銀がインフレ強制目標で乱発発行した円は、アジアの開発投資やM&Aに回るだけでなく、大企業を通じて、農業、医療、教育の分野に投資されて行くのだ。それらのセクターを営利目的化させ、商業市場化させるのである。これが一つ。もう一つは、これこそ真の目的だが、来秋の景気判断で消費税増税を是とするために、名目GDPの成長率を上げるべく、ジャブジャブと日銀券を刷って市中に溢れさせようと目論んでいる。財・サービスの生産が増えてないのに通貨供給量を増やせば、自動的にインフレになる。物価が上がる。名目の経済規模は拡大する。このことは、実は安倍晋三だけでなく、解散前は前原誠司が急いでいたことで、日銀の政策決定会合に割り込み、日銀に量的緩和の圧力をかけていた。
したがって、今は日銀の独立性だの財政規律だのを言い、安倍晋三の金融緩和策に反対の口ぶりでポーズをとっている野田佳彦や前原誠司も、選挙が終わればインフレ策に同調し、日銀法改正を言い出して資金供給を強制増量するよう詰めるだろう。この政治は、何より基本の動機として、消費税増税を速やかに断行するという目的がある。安倍晋三は、それを巧妙に利用しつつ景気対策の問題にスリ変え、選挙の争点にして自分に人気と関心が集まるよう政策構図を細工しているのである。日銀から金融政策の主導権を奪い、政党の権力で日銀を従属させ、強引にインフレを起こそうと躍起になっているのは、景気をよくするためではなく、名目GDPの数字を揃えて、消費税増税の判断に支障のない環境を作り出すためだ。このままだと、4Qから1Qにかけて確実に景気後退となり、マイナス成長が決定的になり、秋の景気判断で消費税増税を決めるのが難しくなる。先送りになってしまう。安倍晋三も前原誠司も焦り、マスコミも焦り、そのため一丸となって日銀叩きをやり、インフレ強制を迫っているのである。マスコミはその真相を報道しない。それを暴露する論者を、マスコミは画面や紙面に絶対に出さない。それは、マスコミが消費税増税勢力の主たる一員だからだ。消費税増税に反対する政党は、テレビに出て、今回の量的緩和キャンペーンの真の意図が、消費税増税のための指標数値のアリバイ工作にある点を指弾し、国民の前に正しく説明しなくてはいけない。
第三の、日銀が安倍晋三の政策に反対する本当の理由は何かについてだが、この問題については白川方明だけでなく、実は金融界の少なくない人間が反対の意見を表明している。ブルームバーグの11/19の
記事
では、三菱UFJモルガン・スタンレーやJPモルガン証券の人間が、この政策にネガティブな見解を示している。米倉弘昌の
コメント
も、決して安倍晋三のインフレターゲットを歓迎して後押しする口調ではなかった。それには理由がある。テレビや新聞の報道には解説が出ないが、最も大きな理由は、インフレ率の強制誘導が国債の長期金利を引き上げるリスクだ。一般に、金融の量的緩和が強化されると、政策誘導で設定された上昇率の分、インフレ期待で債券価値が目減りする予測が投資家心理となり、保有債券の売り圧力となって金利が上昇する傾向になる。国債の金利が上がるということは、商品・資産としての国債が安くなるということだ。国債の金利上昇は、国債を保有する金融機関にとっては膨大な含み損発生のリスクとなる。金融界が、安倍晋三のインフレターゲットに両手を挙げて賛同しないのは、国債金利の上昇と含み損を懸念しているからだと推察できる。物価が下がり続け、ゼロ金利が続くデフレの泥沼も地獄だが、かと言って、急激に金利が上昇し、保有国債で含み損が出る事態も悪夢なのだ。このリスクは、財務省も同じで、金利が上昇すれば国債費が膨らみ、歳出が一気に増えてしまう。現状、国債金利が低ければ低いほど、国の財政運営は安定して都合がいい。日銀は官僚機構の一部であり、基本的に財務省と一体だ。
官僚としては、金利調節の実権を政治家に奪われるのは言語道断で、まして、国債費(歳出)が異常に膨脹するリスクは絶対に避けなくはならない。こうして、財務官僚はこの問題の立場についてはジレンマなのだ。消費税増税のためには量的緩和のショック療法で名目GDPを引き上げなくてはいけない。物価上昇率を強制的に決めて量的緩和をすれば、インフレ期待で国債金利が上昇するリスクが現実になる。そのため、官僚の広報宣伝機関であるマスコミ(特にテレビ)には、前者の立場で量的緩和を正当化させ、日銀総裁には、安倍晋三に対して後者の立場で反論をさせるのである。政治家は、とにかく目先の消費税増税の方が優先順位が高いから、金利上昇(金融機関の含み損・歳出の国債費膨脹)のリスクなどは二の次に思えてしまうのだ。以上、(1)この量的緩和策が景気回復に繋がるか、(2)安倍晋三の真の狙いは何か、(3)日銀(官僚)反対している理由と意味は何か、について、マスコミ報道では紹介されない論点に注目して説明を試みた。(1)については、真の需要創出と内需拡大ではないこと、資金供給量を増やすだけでは景気はよくならないこと、(2)については、消費税増税の指標工作が裏の政治目的としてあること、(3)については、国債の長期金利上昇がもたらすリスクについて指摘した。日本経済はとても弱っていて、傷み衰えていて、10年前や20年前の健全な体力を保っていない。デフレになれば際限なくデフレが進むし、インフレになれば必ず異常なインフレになる。金融政策はどんどん難しくなる。
最後に、この金融緩和の問題が入ったことで、選挙戦の様相が変わり、消費税や原発の問題の焦点化がまた遠のいた。これもまた、自民と民主とマスコミの周到で狡猾な戦略である。生活や共産や社民の提起する争点が背後に隠され、自民と民主とみんなの議論が前面に出て、この問題が恰も景気対策の論議のようにスリ変えられて化けてしまっている。リベラル側(脱原発・反消費税・反TPP)が対抗軸の勢力を作らないから、民自と極右とマスコミに好きなように選挙戦を運ばれる。
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thessalonike5
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2012-11-21 23:30
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liberalist
at 2012-11-21 21:51
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基本的には仰る通りだと思います。特に、金融緩和だけではダメで、国民1人当たりに200万円を現金給付は、是非ともやって欲しいことです。これは単なる景気浮揚だけでなく、国民の命を繋ぎ止める恵みのお金となることでしょう。この点を強調して欲しいです。
そして、このデフレ脱却によって一時的には好景気が訪れると思いますが、消費税増税によって、中折れになることは間違いないでしょうね。まさに、橋本政権の時の二の舞になることでしょう。
国債の利率に関しては、その点は金融緩和で国債を買っていけば、利率はある程度は抑えられるとシミュレーション結果では出ています。またインフレターゲットは、むしろ本来は「インフレ抑制策」でもあるので、そこまで急激なインフレは来ないでしょう。
ただ、一方で、国民の所得や給料は果たして上がるのか、その点を非常に注視して見て行きたいですね。
所得が上がってこそのインフレ政策なのです。
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