美人が“恋愛難民”になる時代
日経ウーマンオンライン(日経ヘルス) 11月20日(火)10時36分配信
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恋愛応援カウンセラーの羽林由鶴さん |
「以前、『恋愛できない』と相談に来る女性は、太っていたり、美人でなかったり、世間一般でモテない女性の条件に上がるような人たちばかりでした。ところが、今は、美人で明るくて誰からも好かれるような、いわゆる“モテ系女子”が、彼ができないと悩んでいます」
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そう話すのは、恋愛応援カウンセラーの羽林由鶴さん。体重103kg、バツイチで子持ちだけれど、13歳年下の東大卒男性と結婚したという経歴の持ち主。太っているというコンプレックスはそのままに、幸せな結婚をした経験を生かした恋愛カウンセリングで人気だ。
「先日、テレビ番組である女性タレントの方の悩みをうかがいました。かわいくて明るくて、誰とでも仲良くなれる人気者。その方が、『私、彼ができないんです!』とおっしゃったんです」。会場内は、「まさか〜」「うそうそ〜」という声が上がり、誰も本気にしていなかった。しかし、その女性の真剣な目を見て、羽林さんは「本当だ」と思ったそう。
なぜ“モテ系”の女性に彼ができないのか
「きれいな女性は、若い頃、会社でもプライベートでも、自分から声をかけなくても相手から声をかけられやすい傾向にあります。そのため、コミュニケーションが受け身になりがちです」。しかし、恋愛において“受け身のコミュニケーション”は、関係が進展しない要因になりうる。
「コミュニケーション力とは、本来、人との関わりの中で磨かれるもの。ところが、若い頃に、自分からアクションを起こさなくても話しかけてもらったり、笑顔を返すだけでなんとなくその場が成り立ってしまったりすると、相手との関係を築く力が鍛えられないままになってしまいます。その結果、コミュニケーションが受け身になりがちなのです」
婚活・妊活で30歳前後の焦りがピーク
さらに、女性を追い詰めてしまうのが、婚活と妊活のブーム。「婚活により、恋愛=結婚と考える人が多くなりました。そのため、出会いの段階から、結婚したら幸せになれるか、そのための条件がそろっているかなど、男性を条件で選ぶようになってしまった。結婚相手に出会うための合コンやパーティーも行われ、一つ一つの出会いが手軽になっています」。それに加えて、現在は、「子どもを持ちたい」という思いから、出産したい年齢から逆算して結婚を考え、そのタイミングに合わせて交際を考える人も増えてきた。「35歳くらいまでに出産したいと思うと、30歳前後で彼がいない女性は焦ってしまいます。そのため、『次の出会いを結婚につなげたい』『もう失敗したくない』という気持ちが強くなります」
30歳をすぎて彼のいない“美人”は、そのときどうなるのか――。
「彼女たちも、30代の女性として、焦る気持ちは同じ。ところが、受け身のコミュニケーションを続けた結果、自分から距離の縮め方、関係性の持ち方が分からない。人間関係の中で傷ついた経験も少ないので、踏み込む勇気も持てないまま、恋愛できない時間ばかり更新してしまうのです」
30代美女が「ずっと一人」と涙を流す理由
さらに、追い討ちをかけるのが周りの目。あなたは、美人やかわいい女性が「彼がずっといなくて悩んでいるの」「出会いがないの」と言ったときにどのような反応をするだろうか。「○○ちゃんみたいにかわいい子に、お誘いがないわけないじゃない」「○○さんは、きっと理想が高いんだろうね」と言っているのではないだろうか。あるいは「本当はいい人がいるのに、隠してるんじゃないの?」などと勘ぐることもあるのではないだろうか。
「そうやって、誰からも本気にされないまま、孤独に追い詰められてしまう“美人”が増えています。コンプレックスがある女性は、『私は太っているから』などと、うまくいかない理由を自分の中で見つけられます。そこさえ直せば…と、逆に希望が持てることもあります。けれど、他人からほめられてばかりの女性は、『自分の何が悪いのか?』と思いつめてしまう。私は、そのような女性から、たくさん相談を受けます。そして、最後にはみなさんが『私はずっと一人でした』と泣いてしまうんです」
ただ、恋愛できない、結婚できないかもしれないと焦るだけではない。同じ女性とも気持ちを共有できないという孤独感にさいなまれてしまうのだ。
このようなことが起こる根底には、多くの女性が恋愛や結婚をするためには、男性から“選ばれる“必要があると考えていることにあるという。「選ばれるために、自分を殺して相手に合わせてしまったり、本来の自分とは違う女性を演じてしまったりする。一方で、何もしなくても男性から声がかかりそうな女性に対しては、『苦労がないだろう』と想像してしまう。本当は、男女共に“選ぶ”のではなく、この人と一緒にいたらどんなことができるだろうかと、未来を期待するのが恋愛。そして、そのためにお互いの“ありのまま”を、時間をかけて知り合う必要があるんです」
「恋愛できない女」を卒業するために
それでは、「恋愛できない女」を卒業するためにはどのようにしたらいいのか。「人と関わる勇気を持つことです」と羽林さんは言う。「これは、すべての女性に共通して言えることですが、人間関係の中で傷つくことを恐れないでほしいんです」
羽林さん自身、昔は受け身のコミュニケーションしかできない女性だった。「私の場合は太っていることがコンプレックスでした。そのため、人から好かれようとして、自分から意見を言うことはなかったし、人の言うことは受け入れるようにしていました」。しかし、離婚したとき、父親から「これからの人生は好きなように生きなさい」と言われ、ハッとしたそう。「好きなように…と言われて、自分に“好き”がないことに気付いたんです」
そこから、とにかくひとつひとつの場面で自己主張することを心がけた。自己主張をわがままと思っている人は多いだろうが、これは相手に自分を分かりやすく伝える方法のひとつだという。「最初は、好きな飲み物を取るところから(笑)。複数の人が集まる場所で、何種類かのペットボトルが用意されることがありますよね。昔は、みんなが好きなものを選んだあと、最後に残ったものを取るようにしていました。別にどの飲み物だって構わないし、それでみんなが気持ちよくいられるなら…って」。しかし、離婚後は、最初に飲みたいものを選んで取るようにしたという。
「そうやって自己主張するようになったら、離れていく人たちもいました。…もちろん傷つきました。けれど、反対に以前よりも仲良くなれた人も現れました。それを繰り返すうち、最後に残った人間関係は、自分にとってとても心地いいものでした。その中で、今の夫とも出会えたんです」
もし、あなたが自分を出せないまま恋愛できない女になっているなら、まずはわがままや自分勝手とは違う、相手のための自己主張から始めるのがいいかもしれない。「出会いの場だけでなく、友達関係、同僚との間などで、少しずつ始めてみましょう。それを繰り返すことで、コミュニケーション能力が培われていくはずです。ちやほやされてきた女性ほど、傷つくことへの免疫がなく、勇気が必要かもしれません。けれど、それを乗り越えた先に、必ずいい恋愛が存在するんですよ」
取材・文/岸本洋美=日経WOMAN
最終更新:11月20日(火)10時36分