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【プロローグ-1】 |
物語は二人の突然の出会いからスタートする……。
期待や希望に満ちた幸福への足がかりに見えるその序章。
そんな物語の重要なプロローグを、ここでは一挙に紹介。
絶望の淵をまだ見ぬ主人公たちの、平穏な瞬間を一足早く味わってみてください。
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誤解が生んだ運命の出会い
夏─―
田舎町・梶田ヶ谷(かじたがや)に住む鹿島浩介には、お気に入りの場所があった。
そこは周囲よりもひときわ高くそびえる切り立った崖。
自殺の名所と呼ばれてはいたが、眼前に広がる広大な海原……
その絶景は彼の心を癒してくれるのだった。
ある日浩介は、そこで見知らぬ少女・滝野夏葵と出会う。
物憂げな様子で海を眺める夏葵に、
浩介は彼女が自殺をしに来たのではないかという危惧を抱く。
思いとどまらせようと近づいたその時、
驚いて振り向いた夏葵を偶然にも押し倒してしまう浩介。
その時2人は――キスしてしまっていた。
浩介が頬に真っ赤な手形を残して帰宅すると、
そこには浩介の妹・泉水と談笑する夏葵の姿があった。
夏葵は後輩・深山由香と共に、
浩介の家の裏にある民宿に海水浴客として滞在していたのだった。
民宿の手伝いをしていた泉水は、何故自分の仲介なしで2人が顔見知りなのかと不思議に思う。
朝の星占いをテレビで観ることが日課の泉水は、
浩介が夏葵を押し倒したという話を聞き、占いが当たったと呆れ顔。
賑やかな様子を聞きつけて現れた由香は、
無邪気に海水浴にかける情熱をとくとくと語るのだった。
由香の頼みで地元の穴場の浜を紹介することになった浩介。
4人はそこで楽しい1日を過ごすのだが、やはり夏葵との仲はギクシャクしていた。
それを見かねた泉水は、その日の夜、浩介にタンザナイトが埋め込まれた
ベビーリングのネックレスを貸してくれる。
ベビーリングは幸福を呼ぶという言い伝えがある。
それを身につけていれば、夏葵と仲直りができるはずだと言うのだった。
普段であればくだらないおまじないだと一笑に付す浩介も、
今回は少しだけ信じてみる気になり、それを受け取る。
妹の気遣いがありがたかったし、
何より彼は、どこか夏葵に心惹かれていたのだった。
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