(2012年11月20日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
日本で事実上の選挙戦がスタートし、経済の厳しい状況が争点となっている。中心は日銀の金融政策で、中央銀行の独立性を脅かすような議論が聞かれる。ただ、金融政策の決定権を政治家に与えるのは賢明でないばかりか、日本経済の苦境の解決策にもならないだろう。
■日銀に打てる手はまだある
来月実施される衆院選での勝利が有力視される野党自民党の安倍晋三総裁は、日銀の独立性を重要争点に掲げている。インフラ整備などへの財政支出を賄うために「日銀による国債の直接買い入れ」を求めているほか、日銀法を改正し政治の支配力を強めるべきだと主張している。与党民主党内からも安倍氏の意見に賛同する声が聞かれる。
日本の景気後退局面入りが濃厚になるなか、積極的な金融緩和に及び腰な日銀に対する不満がたまるのは、ある程度理解できる。ハイパーインフレに対する日銀の懸念も、日本経済がデフレに苦しむ状況では大げさにもみえる。自ら設定した物価上昇率1%という目標を達成できていないことも嘆かわしい。日銀が打てる手はまだあるはずだ。
■政治と日銀の双方にリーダーシップを
だが、金融政策だけでは日本経済の成長を阻害する要因を取り除くことはできない。経済改革が進んでいないからだ。女性の労働参加も極めて少ない。退職年齢は他の先進国に比べて低く、公的債務残高は世界で2番目に大きい。消費税率を2倍に引き上げることを決めたが、財政改革の長い道のりの第一歩にすぎない。
政治の強いリーダーシップが欠如していたため、こうした課題の解決が何年も先送りにされてきた。日銀に景気停滞の責任を押しつけるのは誤りだ。金融政策の政治利用を避ける最善の方法は中央銀行の独立で、特に5年間で首相が6人も就任するような国にとっては重要な安全装置といえる。
政治と日銀の双方で強力なリーダーシップが必要だ。勇気が無ければ日本経済を回復に導くことはできない。
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