脳脊髄液減少症:画像判定導入から1年 診断、治療法の向上模索
2012年11月19日
激しい頭痛を引き起こす脳脊髄(せきずい)液減少症を巡り、「髄液の漏れ」を画像で判定する診断基準を、国の研究班がまとめてから1年。研究班は「髄液は漏れる。交通事故による発症もまれではない」と結論付けたが、研究は終わったわけではない。より確実な診断と治療の方法を追究しようと、議論は続いている。【渡辺暖】
◇見逃されてきた病
「脳と脊髄の周りを循環する脳脊髄液が硬膜から漏れる」のが、この病気の基本的なメカニズムだ。運動や交通事故などの衝撃が原因になるが、原因に思い当たらないで発症する人もいる。典型的な症状は「頭を上げていると頭痛がひどくなり、横になっているとよくなる」(起立性頭痛)。これは発症から時間が経過すると明瞭でなくなることもある。吐き気、背中の痛み、めまい、耳鳴りなど多様な症状を伴うことが少なくない。
数年前から「多くの患者が見逃されてきた」と注目されてきたが、「硬膜は硬く、髄液が漏れるわけがない」と考える医師が整形外科を中心に多かった。診断基準も、国際頭痛学会(04年)▽日本脳神経外傷学会作業部会(07年)▽日本の専門家たちの「脳脊髄液減少症研究会」(07年)−−による3種類があり、混乱してきた。
◇統一基準を作成
07年度にスタートした国の研究班には、脳神経外科、整形外科、神経内科、放射線科などの専門家が参加。研究班は、脳と脊髄のMRI(磁気共鳴画像化装置)、「CTミエログラフィー」と「脳槽シンチグラフィー」を使い、どんな画像が映れば「確実に漏れている」「漏れの疑いがある」といえるかの基準を作った。この診断基準は、関係する日本の学会に承認され、昨年10月にあった日本脳神経外科学会で発表された。
そして10月17日にあった今年の同学会でもシンポジウムのテーマとなり、6人が発表した。
まず研究班の事務局を務める山形大の佐藤慎哉教授が、議論が分かれている脳槽シンチグラフィーの使い方を今後も検討していくことや、治療法「ブラッドパッチ」の安全性と有効性を研究していくことを紹介した。
最も豊富な治療経験をもつ篠永正道・国際医療福祉大熱海病院教授は、自身の患者57人がそれぞれの基準にどれだけ当てはまるかを調べ、発表した。