鳩山元首相　追い出され引退

　民主党の鳩山由紀夫元首相（６５＝北海道９区）が２０日、来月１６日投開票の衆院選に立候補しない考えを党幹部に伝えた。政界も引退する。野田佳彦首相が進める消費税増税やＴＰＰ推進に反対の立場だが、主要政策への賛成を公認条件と迫られ、「反野田」を貫く決断をした。９６年の結党時メンバーで事実上の党オーナーだが、現職の首相に追われる形となった。首相在任時からの迷走発言で、出馬でも苦戦が予想されていた。

　鳩山氏は２０日、党幹部に「民主党から出たかったが、公認してもらえないならやむを得ない」と伝えた。後援会幹部には電話で「党を出ざるを得ない。このままでは地元の選挙態勢に迷惑がかかる」と述べた。都内の自宅前では、「民主党には愛着を持っている。民主党をつくった気持ちを大事にしたい」と答えた。

　今日２１日、野田首相と会談して衆院選不出馬を伝え、地元の北海道苫小牧市で後援者に報告する。関係者によると、鳩山氏は政界も引退する。ただ政治活動は続ける方針で、今後は外交政策を中心としたシンクタンクを立ち上げるという。

　鳩山氏は、消費税増税やＴＰＰなど、野田首相が進める政策に一貫して反対。小沢一郎氏ら多くの議員が党を離れたこともあり、首相経験者ながら「反野田」の筆頭格となっていた。

　今年６月の衆院本会議採決で消費税増税法に反対し、党員資格停止３カ月の処分を受けた。民主党から出馬の意向だったが、野田首相に主要政策への賛成を公認の条件とする“踏み絵”を突きつけられ、公認は得られないと判断した。

　１７日の地元会合では「鳩山を公認させないという動きがあるようだ」と反発し、「自分の信念を曲げるつもりはない」と明言していた。党側は、党議違反をした場合の公認返上や、活動費の返還などを盛り込んだ「誓約書」を書かせる、強硬策に出た。首相も１９日、滞在先のカンボジアで「どういう重たい立場であった人だろうが、きちんと守ってもらうことが公認の基準だ」と、鳩山氏を突き放す発言をしていた。

　民主党創設メンバーの１人で、党オーナーでもある鳩山氏には、「屈辱的な仕打ち」（党関係者）だ。首相退任時、次期衆院選に出馬しないと表明しながら、その後撤回したり、米軍普天間飛行場移設先をめぐる発言が迷走し「首相の資質」が問われたが、議員として最後の最後は、「反野田」を貫く決断をした。

　もともと選挙には強くなく、衆院選出馬の場合も、苦戦が予想されていた。民主党政権初の首相に就任し、政権交代の象徴となったのが鳩山氏。最後は３代目の野田首相に追われる形で、党を去る。

　◆鳩山由紀夫（はとやま・ゆきお）１９４７年（昭２２）２月１１日、東京都文京区生まれ。東大工学部卒。８６年、北海道から自民党公認で出馬して初当選。９３年、離党。新党さきがけを経て、菅直人氏らと民主党の結党メンバーに加わる。幹事長代理を経て、９９年９月の民主党代表選挙に勝利。０９年８月の衆院選で政権交代を実現し、第９３代内閣総理大臣に就任。祖父は元首相の鳩山一郎。

　［2012年11月21日8時42分　紙面から］