ロンサム・ジョージ、仲間が生存か
ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト 11月19日(月)19時30分配信
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2012年6月に絶滅した最後のピンタゾウガメ、「ロンサム・ジョージ(孤独なジョージ)」。死に至る何十年もの間、メスに興味を示さなかった。 (Photograph by Pete Oxford Minden Pictures/Getty Images) |
2012年6月、ガラパゴスゾウガメの亜種、ピンタゾウガメが絶滅した。「ロンサム・ジョージ(孤独なジョージ)」がこの世を去ったのだ。しかし、最新の研究によると、仲間がまだ生き残っている可能性があるという。
アメリカにあるイェール大学の研究チームが、エクアドル領ガラパゴス諸島の各地でゾウガメの調査を実施、ピンタゾウガメのDNAを受け継いでいる個体を見つけた。人里離れた奥地でひっそり暮らしている可能性が出てきたのだ。
ピンタゾウガメ(学名:Chelonoidis nigra abingdoni)は、絶滅から“復活”した前例がある。1906年以降、存在が確認されず、すべて滅んだと考えられていた。しかし1972年、当時およそ60歳だったロンサム・ジョージが、ガラパゴス諸島のピンタ島で見つかったのだ。そもそも個体数が減った原因は、島に侵入した人間が食用として乱獲し、ヤギやブタを持ち込んで生息環境や島の植生パターンを破壊してしまったからだ。
研究チームは、イサベラ島の人里離れた最北端、ウォルフ火山付近に生息する1667頭のゾウガメを調査。17頭の遺伝子にピンタゾウガメのDNA断片が混入している事実を突き止めた。
オス3頭、メス9頭、子ども(20歳未満)5頭が、ピンタゾウガメのDNAを持つ混血種と確認され、特に子どもの存在は純血種が生存している可能性を示すという。
研究チームのリーダーでイェール大学の進化生物学者ダニエル・エドワーズ(Danielle Edwards)氏は、「ゾウガメの寿命は長く、混血種の中には血筋がかなり濃い個体もいた。大人たちの親世代もまだ生きているかもしれない」と話す。
◆ガラパゴス諸島を渡る
ピンタ島とイサベラ島は約50キロ離れている。ピンタゾウガメは、どのように到達したのだろうか。「ほかの海域では海流に乗ってカメが移動するケースもあるが、ここでは違うと思う。おそらく人間が関わっている」とエドワーズ氏は述べる。
19世紀、捕鯨船や海軍の軍艦などが、油や肉を求めて上陸しやすいピンタ島などに立ち寄り、生きたゾウガメを船に持ち帰った。
ゾウガメは新陳代謝が遅く、エサや水がなくても最長で12カ月生き延びることができる。長い航海で壊血病を防ぐための食料源として、ゾウガメは非常に便利だった。しかしいざ海戦となると、船の重量を軽くするため、1頭90〜270キロあるゾウガメは海に投げ捨てられたのである。
ウォルフ火山では、フロレアーナ島の固有種で既に絶滅したフロレアーナゾウガメ(学名:Chelonoidis elephantopus)のDNAを受け継いでいる個体も1頭発見されており、やはり人為的な影響があったと考えられる。
◆絶滅からの復活に向けて
エドワーズ氏は、「ゾウガメは、ガラパゴス諸島の生態系にとって極めて重要だ」と指摘する。ゾウガメによって土壌や植物の種子が拡散し、エサにしている樹木やサボテンの数がバランスを維持している。ピンタゾウガメやフロレアーナゾウガメが復活すれば、非常に大きな意味を持つ。
研究チームでは、混血種の収集や、純血種の発見を目指し、ウォルフ火山周辺の険しい地域を再調査する。できれば人工繁殖も試みる予定だという。この取り組みが成功すれば、2種類のゾウガメが本来の住処に戻る日が来るかもしれない。
「“絶滅”と言えば、本来取り返しがつかない状況を意味する。しかしテクノロジーが発達すれば、不幸な結果を覆すことができるかもしれない」と研究チームの一員でイェール大学上席研究員のアダルジサ・カコーネ(Adalgisa Caccone)氏は述べている。
今回の研究成果は、「Biological Conservation」誌に掲載された。
Sasha Ingber for National Geographic News
最終更新:11月19日(月)19時30分
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