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アナリストの視点(ファンド)

為替が投信に与える影響〜為替ヘッジありファンドの活用を〜

2012-11-20

 国内投信市場では海外資産へ投資するファンドの割合が高く、為替市場から影響を受けやすい。ここ数年、リスク回避の動きに合わせて円が買われる傾向が続き、海外資産に投資するファンドが同時に下落する傾向にある。こうした為替変動のリスクを抑えるためには、為替ヘッジするファンドを積極的に活用することが求められる。

1.為替市場の影響を受けやすい国内投信

 国内の投資信託のうち、海外資産に投資するファンドは2004年以降、海外6割以上の水準を維持しつつ増加しており、2012年10月末時点では約8割(純資産額ベース)を占める。一方で、海外資産に投資するファンドのうち、為替ヘッジするファンドは全体の3%程度にとどまる。つまり、現在の国内投信はその大部分が為替市場の影響を受けることになる。2012年10月末時点で純資産額の多い資産クラスには、為替ヘッジをしないハイイールド債券ファンドや新興国債券ファンド、先進国債券ファンドなどの海外債券に投資するファンドが目立つ。ハイイールド債券ファンドや新興国債券ファンド、先進国債券ファンドはそれぞれ異なる値動きとなることが想定されており、分散投資の一環として合わせて保有する投資家も多いだろう。

 ここ数年、外国為替市場では各主要通貨に対して円高が進行しており、海外資産に投資するファンドにマイナスの影響を及ぼしている。2012年10月末時点における過去5年間では、円に対して米ドルが年率で7.04%下落、ユーロは9.02%下落、豪ドルは4.80%下落しており、円高が進んでいる。同期間におけるハイイールド債券ファンド(※)のトータルリターン(年率)は0.25%、新興国債券ファンド(※)は0.10%、先進国債券ファンド(※)は▲2.39%などとなっている。ハイイールド債券、新興国債券市場、先進国債券市場はいずれも大きく上昇したものの、為替市場における円高の影響を強く受けて相殺され低いリターンに抑えられる、またはマイナスのリターンとなっている。

※モーニングスターカテゴリーインデックスを使用。 ハイイールド債券ファンド(ヘッジなし)=「国際債券・グローバル・除く日本(為替ヘッジなし)」、新興国債券ファンド(ヘッジなし)=「国際債券・エマージング(為替ヘッジあり)」、海外債券ファンド(ヘッジなし)=「国際債券・グローバル・除く日本(為替ヘッジなし)」

図1:海外資産に投資するファンドの純資産額シェア推移

図1:海外資産に投資するファンドの純資産額シェア推移

※モーニングスターカテゴリーで「国際株式」、「国際債券」、「国際リート」に属するファンドを集計。
上場投信(ETF)、確定拠出年金専用ファンド(DC)、ラップ口座専用ファンド(SMA)を除く。
※2012年は10月末時点
出所:モーニングスター

2.為替リスクの上昇で海外資産(ヘッジなし)の連動性が高まる

 ハイイールド債券ファンドや新興国債券ファンド、先進国債券ファンドは、本来はそれぞれ異なる値動きとなることが期待される。一般的な先進国債券と比べて、ハイイールド債券ファンドや新興国債券ファンドは信用リスクの高い債券に投資することから、景気が良くなると組み入れている債券の価格が上昇する場合がある。また、保有する銘柄の発行体の信用格付けの変化や金利の変化によって値動きが左右されやすい傾向もみられる。そのため、一般的な先進国債券ファンドといずれも異なる値動きとなることが期待される。 

 しかし、ここ数年、リスク回避の動きが強くなると、資金の逃避先として円が買われて急激な円高となり、為替ヘッジをしない各資産クラスが同時に下落する傾向がある。実際、為替市場の影響が高まる中、図2のように先進国債券ファンドに対してハイイールド債券ファンドや新興国債券ファンドの連動性も高まっている。つまり、先進国債券ファンドとハイイールド債券ファンドや新興国債券ファンドを組み合わせて投資した場合、同時に下落する可能性も高くなっている。

図2:先進国債券ファンドに対する各債券ファンドの連動性

図2:先進国債券ファンドに対する各債券ファンドの連動性

※各月末時点における過去36ヵ月の月次リターンに基づいて、相関係数の推移算出。
「相関係数」とは連動性の高さを表す指標で、+1〜−1の値をとる。数値が高いほど連動性が高い。
※モーニングスターカテゴリーインデックスを使用。
新興国債券ファンド(ヘッジなし)=「国際債券・エマージング(為替ヘッジあり)」、
ハイイールド債券ファンド(ヘッジなし)=「国際債券・グローバル・除く日本(為替ヘッジなし)」、
国内債券=「国内債券・中長期債」海外債券ファンド(ヘッジなし)=「国際債券・グローバル・除く日本(為替ヘッジなし)」、
海外債券ファンド(ヘッジあり)=「国際債券・グローバル・除く日本(為替ヘッジあり)」
出所:モーニングスター

3.為替ヘッジあり先進国債券ファンドの活用で為替リスクの抑制を

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 一方で図2をみると、為替ヘッジしつつ先進国債券へ投資する先進国債券ファンド(ヘッジあり)は連動性が抑えられている。つまり、先進国債券ファンド(ヘッジあり)は円高が進んだ場合でも他の海外債券ファンドなどと同時に下落する可能性は低い。また、先進国債券ファンドについて、図3のように為替ヘッジをした場合としない場合のリスク(変動性)について過去10年間の推移をみると、先進国債券ファンド(ヘッジあり)のほうが常に下回って推移している。加えて、ここ数年世界の先進国では金利が低下していることから為替ヘッジのコストが低くなっており、為替ヘッジするファンドにとって優位な環境となっている。今後、過度な為替リスクを抑えるためには、為替ヘッジをしつつ運用するファンドを活用することが有効であろう。

図3:先進国債券ファンドのリスク(変動性)の推移

図3:先進国債券ファンドのリスク(変動性)の推移

リスク(変動性)=3年標準偏差(年率)の推移
海外債券ファンド(ヘッジなし)=「国際債券・グローバル・除く日本(為替ヘッジなし)」、
海外債券ファンド(ヘッジあり)=「国際債券・グローバル・除く日本(為替ヘッジあり)」
リスク差=海外債券ファンド(ヘッジなし)の標準偏差−海外債券ファンド(ヘッジあり)の標準偏差
出所:モーニングスター

(辻 哲)

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