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【社会】

「指導死」知って防いで 教師の指導きっかけに命絶つ子ども

「生徒指導がきっかけで命を絶つ子どもたちがいる事実を一人でも多くの人に知ってほしい」と語る大貫隆志さん=1日、東京都内で

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 教師の指導をきっかけに、命を絶つ子どもがいる。学校は多くの場合、指導が原因とは認めようとせず、国の調査でも実態が明らかにされたことはない。子どもをなくした遺族たちの間で、その死を「指導死」と名付け、指導のあり方を問う動きが広がっている。今月十七日には遺族がシンポジウムを東京都内で開く。 (加藤文)

 大貫隆志さん(55)の次男で中学二年生だった陵平君(13)は二〇〇〇年九月三十日夜、埼玉県新座市の自宅マンションから飛び降りた。前日の二十九日、陵平君は友達からもらったお菓子を昼休みに学校で食べたことをとがめられ、ほかの生徒と一緒に教師十二人から一時間半にわたって、お菓子を食べた友達の名前をすべて明かすよう問い詰められた。

 翌日夜、自宅の母親に「反省文を書き、臨時学年集会で決意表明するよう伝えてほしい」と担任から電話があった。話を聞いた陵平君は四十分後、命を絶った。「たくさんバカなことをして もうたえきれません」などと記された遺書が残されていた。

 それ以前、悩みごとを抱えた様子は一切なかった。指導の際のやりとりの概要が分かったのは死の一カ月後。校長らは「問題はなかった」と繰り返し、謝罪はなかった。

 文部科学省は毎年、学校からの報告を集計して児童生徒の自殺の人数などを公表している。何が背景と考えられるかの項目に「教職員との関係での悩み」はあるが、「生徒指導」は含まれていない。

 大貫さんは五年ほど前、同じように生徒指導でわが子を亡くした遺族が「概念みたいなものがなく、説明しづらい」と話すのを聞き「指導死」という言葉を思い付いた。以来、教育現場での事件や事故を「指導死」という観点でとらえ直す提案を始めている。

 長崎市の安達和美さん(51)は〇四年三月、中学二年の息子雄大君(14)を亡くした。

 ライターを持っていたのを担任から追及された。遮光のためアルミホイルを張った暗い多目的室で指導されている最中に「トイレに行きたい」と部屋を出て、校舎四階から飛び降り自殺した。

 指導される生徒の方が悪いと、短絡的に思い込む世間の風潮の中で、生徒指導の問題点を訴えていくことにためらいもあった。しかし、それ以上に再発防止の思いが強い。「学校は子どもが間違いをしながら成長していく場所。ただ過ちを責めるのではなく、子どもと寄り添い、間違いに気づかせるような指導をしてほしい」

 シンポジウムは十七日午後一時から、東京都港区芝大門の「人権ライブラリー」で。大貫さん、安達さんら「指導死」でわが子を亡くした遺族七人が思いを訴える。入場料は無料。問い合わせはEメール=4104@2nd−gate.com=もしくはファクス=050(3708)0111=へ。

 

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