ガザ・イスラエル:止まらぬ市民の犠牲 民家、学校に被害
毎日新聞 2012年11月20日 11時16分(最終更新 11月20日 11時27分)
【ガザ(パレスチナ自治区)樋口直樹、エルサレム花岡洋二】イスラエル軍によるパレスチナ自治区への空爆や艦砲射撃は、対象を軍事施設に限定しているとの説明とは裏腹に、民家や学校などに被害が及ぶ事例が多数生じている。ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスがイスラエルに向け発射するロケット弾も、民家などへの着弾が相次いでいる。早期停戦を実現できない場合、双方の市民への被害増大は避けられない状況だ。
◇学校周辺に着弾…パレスチナ
「新たな事態に備え、ハマスのメンバーから離れているように」。16日午後9時半ごろ、パレスチナ自治区ガザ市北部の技術者、バハティーティさん(62)の携帯電話にこんな文字メッセージが飛び込んだ。送信者はイスラエル軍当局。警告だと感じた。ガザを支配するハマスの軍事部門トップがイスラエル軍の空爆で殺害されたばかりだ。予想は的中。日付が替わると間もなく、自宅前の内務省関連施設に何発もミサイルが撃ち込まれた。
「ここが狙われるとは。民政部門だけで、周りには学校もある」。バハティーティさんは19日、爆風で半壊した自宅の前で怒りに声を震わせた。隣接する公立小学校も焼け焦げ、巨大な穴がいくつも開いている。国連運営の近くの小学校も多くの窓ガラスが割れていた。
空爆激化でガザ地区の全学校が休校になっており、子供たちにけがは無かった。
ガザ市郊外のジャバリヤ・アルトゥワム地区では、空爆でイスラム系病院の窓ガラスが吹き飛ばされていた。標的は隣接する空き地。ロケット弾発射台が狙いとみられる。
イスラエル軍は、ハマスなど武装組織によるロケット弾攻撃を防ぐため、14日から大規模空爆を実施。軍事・警察施設や幹部の直接攻撃だけでなく、関連施設や幹部宅も対象にしている。標的の重要度などにより付近の住民に警告を発したり、本格的な爆撃の前に破壊力の小さい「警告弾」を発射することもある。それでも民間人や無関係な民家、施設が巻き添えになるケースは数え切れない。イスラエル側は「ハマスが民間施設を隠れみのに攻撃している」と非難している。【ガザ市(パレスチナ自治区)樋口直樹】