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時論公論 「原発ゴミの処理を急げ」2012年10月22日 (月)
水野 倫之 解説委員
政府は、2030年代の原発ゼロにむけて、使用済み核燃料など原発ゴミの最終処分についても具体的な検討を始めることを、先週末のエネルギー環境会議で決めた。
放射能レベルが極めて高い原発ゴミの処分はメドがたっていない。
原発ゼロを目指すとしながら、再処理も継続するという矛盾も、原発ゴミがたまり続けていることが背景。
今夜の時論公論は原発ゴミ処分の課題について水野倫之解説委員。
日本はこれまで、使用済み燃料をすべて再処理し、プルトニウムを利用する核燃料サイクルを基本。
しかし事故を受けて先月、2030年代の原発ゼロを打ち出した。
原発をやめるのであれば、再処理の意味なくなるが、継続するという矛盾した方針も。
これは、青森県が反発し、再処理をやめれば使用済み燃料を各原発に返還する構えを見せたから。
全国にはすでに1万4,400トンの使用済み燃料。貯蔵可能な量の70%、このまま運転すれば、あと2年程度でプールがいっぱいになるところも。この上使用済み燃料が返還されることになれば多くの原発で運転再開できなくなる可能性があるわけ。
しかし再稼働のために再処理を継続するのは核不拡散上、大きな問題となりかねない。プルトニウムは核兵器の原料ともなるため、消費しなければ。すでに29tたまっているが、普通の原発で使うと制御棒の効きがやや悪くなるため安全性への不安が根強くあってなかなか進んでおらず、消費できる見通しは立たず。再処理継続すれば、プルトニウムがさらに増え、海外から疑念を持たれることにも。
使用済み燃料をプールで大量に保管することの危険性も明らかに。
一方で、当時津波が押し寄せながらも問題なく冷却できた使用済み燃料も。乾式キャスクの中で保管されていた。
乾式キャスクは厚さ50センチの鋼鉄で放射線を遮へい。銅製の羽根が容器の周囲に沿って埋め込まれていて、大量の熱を外部へ逃がすことができるのが特徴。
今後は、さらに増えると予想される使用済み燃料の保管のためだけでなく、すでにある使用済み燃料をより安全に保管するためにも、原発敷地内でプールから乾式キャスクによる貯蔵に変えていくべき。
ただ原発の地元からすれば事実上の最終処分地になるのではないかという不安。
最終処分にメドをつけることが緊急の課題。
政府は原発ゴミのうち、高レベル放射性廃棄物について、安全に処分できるとして、法律で地層中に処分することを決めた。
放射能の影響は数万年以上に及ぶため、ガラスで固めた上で専用の容器に入れ、まわりをさらに粘土などで囲って地下300mより深くにトンネルを掘って処分することに。
政府は2030年代には最終処分を始める計画をたて、全国の自治体から処分場の公募を始めているが、メド立たず。
今こそ、これまでの処分計画を抜本的に見直すことが必要。
まず、使用済み燃料のまま地層に直接処分するのが技術的に可能かどうか確認を急ぐ必要。
海外ではフィンランドとスウェーデンで使用済み燃料をそのまま地下に埋める処分場所が決まって準備が進んでおり、こうした国の技術情報も。
日本学術会議も先月、数万年以上安定した地層を確認することは現在の科学では限界があるとして、原発ゴミの最終処分の計画を白紙に戻す覚悟で見直すべきだと提言。
事故前の知見で安全と言われても、誰も信用しない。
今回の地震や事故で得られた最新の知見をもとに、これまでの研究内容で問題がないのかどうか、あらたに発足した原子力規制委員会で確認し、本当に安全に地層処分できるのか改めて提示する必要。
そしてそれが可能ということであれば、法律を使用済み燃料の直接処分も想定したものに改正して処分計画を改める。そのようにして再出発しなければ、最終処分は一向に進まない。
(水野倫之 解説委員)